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警察不信  作者: 山本正純
Episode 4  ミステリファンなら必ず分かる。だから安心してサスペンスに集中できるバスジャック事件
80/106

Side.080 14人の容疑者 14 suspects

 横浜オリエント観光バスジャック事件の発生を知った神奈川県警は、捜査本捜査本部を設置する。


 神奈川県警刑事部長の円谷はこの奇妙なバスジャック事件の目的が分からなかった。

 要求は小早川せつなを探すこと。さらにバスジャック犯は警察に自分の携帯電話の電話番号を公開した。そんなことをすればバスジャック犯の身元が分かってしまう。バスジャック犯の正体が分かれば動機も見えてくるので、事件は早期解決するだろう。


 警察にとってのメリットしかない行動をなぜバスジャック犯は行ったのか。円谷には理解できなかった。

 

 すると狩野警部が円谷刑事部長にある報告をした。

「バスジャック犯の要求である小早川せつなは現在行方不明です。海外留学から帰国しているはずですが、どこにいるのかが分かりません。彼女の安否を知っているのは横浜大学に通っている大学三年生。宮本栞しかいません。これから彼女と小早川せつなに連絡するよう交渉してもよろしいですか」

 

 仕事が早いと円谷は思った。

「何でそんなに早く小早川せつなに関する情報が集まっている」

 

「警察学校の同期の木原巡査部長から捜査を依頼されたので。小早川せつなさんが警視庁が追っている事件の容疑者ということで」

 円谷は狩野の話を聞きあることを思いつく。

「警視庁と合同捜査をしたいが、今頃警視庁は退屈な天使たち絡みの事件を追っているところだ。ということで木原巡査部長を神奈川県警に呼び出し、小早川せつなの情報を聞き出す」


 狩野は携帯電話を取り出し、木原巡査部長に電話した。その頃木原と神津はイタリアンレストランディーノの前にいた。この一週間彼らは毎日のようにこの店で張り込みをした。小早川せつながいつ来てもいいように。だが小早川せつな本人に会うことはできなかった。

 本日イタリアンレストランディーノは休みになっている。これでは張り込みはできないので、木原たちは東京に戻ろうとする。

 

 そこへ狩野警部から電話がかかってきた。

『狩野です。いまどこにいますか』

「イタリアンレストランディーノの前ですが」

『それは好都合です。横浜オリエント観光バスがジャックされました。要求は小早川せつなを呼ぶこと。あなたたちが調べていた小早川せつなの情報を神奈川県警に教えていただけませんか。そうすれば事件は早期解決できます』

「分かりました。これから神奈川県警に行きます」

『こちらはこれから横浜大学に行き、宮本栞に小早川せつなの所在を確認しに行きます。神奈川県警に到着したら、天谷刑事を訪ねてください。彼が聴取を取りますから』

 

 電話が切れると、木原たちは目的地を神奈川県警本部に変更する。



 その頃横浜オリエント観光バスの中で、関西弁の男は江角に小声で話しかけていた。

「自分。凄いな。遠くからバスジャック犯が持っている拳銃の名称を当て、無差別乱射という嘘を見抜くなんて。何者や」

「江角千穂。ただの探偵です」

「ほんならこれからは、江角はんって呼ぶわ」

 

 勝手に物事が進められて江角は目を点にする。

「ところであなたの名前は何ですか」

「東條清太郎や。ほんで、江角はん。このバスジャック事件の目的。何か分かるか」

「分かりません。小早川せつなさんが誰なのかが分かれば目的も分かると思うのですが。それにこの人質20人の中にバスジャック犯の仲間がいるかどうかも分かりません。東條さん。なんで推理を聞こうとしているのですか」

「ええやん。どうせ暇なんやから安楽椅子探偵で事件の真相を推理するのもおもろいとちゃうか」


 完全に東條のペースに巻き込まれていると江角は思った。江角はよく周りから天然と呼ばれることが多いが、東條の方が一枚上手のようだ。変人という表現が似合いそうな男に江角は気に入られたらしい。彼の相棒として選ばれた江角は仕方なく東條と共に事件の真相を推理することにした。

 

 すると東條はあることを思いだす。

「バスジャック犯の仲間がいるっちゅう推理やったな。具体的な容疑者は何人やねん」

「まず私の前の席に座っている4人の高校生は白。あの4人は修学旅行に来た高校生にしか見えないから。東條さんと私と4人の高校生を除外すると容疑者は14人」


 江角の推理を聞き東條は首を横に振る。

「ちゃうな。容疑者は10人やで。前から4番目の席に4人の老人が座っとるやろ。あの4人と一緒にこのバスに乗車したんやけど、そん時に老人クラブちゅう言葉が聞こえたんや。あの4人は老人クラブの活動の一環で日帰り観光でもしよう思ってこのバスに乗車したんやろな」


 江角は東條の推理を聞き頷く。

「高校生と老人。合計8人の共通点は手荷物を持って乗車していないこと。あの8人はポケットに財布や貴重品を入れているのでしょう。ポケットのふくらみ具合でナイフや拳銃を隠しているとすぐ分かるということですか。では、私と東條さんがバスジャック犯の仲間ではないという根拠は何でしょう」

「決まっとるやろ。バスジャック犯の仲間が態々状況を不利になる推理披露すると思うか。せやから江角はんは容疑者やないちゅうわけや」


 江角は目を点にする。まさかこんな根拠で江角千穂を容疑者から外したとは思わなかったからだ。バスジャック犯の仲間の可能性がある容疑者は10人。誰が仲間でもおかしくない状況で江角達は10人の容疑者の仕草を観察することにした。


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