Side.075 10以上ある余罪の一つ One of the other crimes which exist ten or more
それから数分後木原たちは久保田太郎の自宅マンションを訪れた。
呼び鈴を鳴らすと久保田は慌てて玄関のドアを開けた。久保田は木原たちが警察手帳を見せる前に、両手を刑事たちに差し出す。
「自首します」
何のことなのか。木原たちは分からなかった。
「何かやったのか」
神津が聞き返すと久保田はスターム・ルガーを見せる。
「この拳銃を流星会アジトから盗んで、萩原聡子を殺害しました。これで銃刀法違反と窃盗罪が成立するでしょう。今すぐ逮捕してください。今逮捕しないと退屈な天使たちに殺される」
木原たちは久保田太郎にこれまでの捜査で分かったことの事実確認をするためにマンションを訪れた。だが久保田はいきなり自首してきたため彼らは驚いている。
木原たちは仕方なく警視庁に久保田太郎を移送して、取り調べを行うことにした。
取調室で木原は久保田に質問する。
「あなたと退屈な天使たちの関係は何ですか」
「メンバーですよ。とは言ってもコードネームがない下っ端クラスですから、組織の情報はあまり知りません。ぼくの姉久保田花子も組織のメンバーです。彼女も同じ下っ端クラスです」
木原の右隣にいた神津は久保田の顔を見ながら質問する。
「なぜあのテロ組織に殺されるって言った」
「裏切ったからです。姉や友達を殺されたぼくは流星会アジトから拳銃を盗み出し、彼らを殺そうと思いました。でも奴ら。コードネーム持ちのメンバーはぼくよりも強かった。ぼくが拳銃のプロだとしても彼らにはかなわない」
木原は久保田に確認する。
「ではあなたが佐藤真実監禁事件の黒幕ということですか」
「どういうことですか。それは。ぼくは下っ端だからそんなことは知りません」
久保田の態度にイラついた神津は彼に怒鳴る。
「お前が黒幕なんだろう。お前は佐藤真実が牧田誠と付き合っていることが許せなかった。だからテロ組織を使い、個人的な動機を隠そうとした。今日佐藤真実の友人に会って話を聞いたら、お前が佐藤真実の写真を盗撮しているらしいという情報を得た。つまりお前は佐藤真実のストーカーだ」
久保田は首を横に振る。
「違います。ぼくはストーカーじゃない。ぼくはストーかー事件の捜査をしていただけです。探偵には頼めないと思ったから自主的に。もうストーカーの目星は付いているんだ」
その時取り調べ室のドアが開き、須田哲夫が逮捕状を持って現れた。
「久保田太郎さん。あなたを覚せい剤取締法違反で逮捕します」
木原たちは須田の逮捕状を見て抗議する。
「待ってください。彼はこの後神奈川県警に移送して、殺人事件の取り調べを受けることになっています」
「そうですか。でも彼の自宅から覚せい剤が発見されました。さらに流星会の構成員と麻薬の取引をしています。我々組織犯罪対策課はこの事実を10月22日時点で把握していました。つまり先に容疑者としてマークしていたのは我々。だから彼の取り調べは我々が行います。罪状は麻薬取締法違反に銃刀法違反。殺人罪はただの余罪に過ぎません。殺人罪は最低でも10個はある余罪の内の一つとして、裁判では裁かれるでしょう」




