Side.073 とある世界の愉快犯達 A certain world's criminals for pleasure
ウリエルの罠にはまった久保田太郎は観念する。
「そうだ。俺だよ。あんたらのコンピュータにハッキングした化け狐は」
ウリエルは久保田に動機を確認する。
「動機は組織があなたの相棒を殺したから復讐しようと思い犯罪に手を染めたでいいですか」
久保田はポケットからスターム・ルガーを取り出して答える。
「いいや。動機までは分からなかったか。それなら教えてやろう。お前らの組織に俺の相棒を殺された時に俺は思った。こんなテロ組織に協力するくらいなら、独立して新しいテロ組織を結成した方がマシだと。だから俺はハッキング能力を駆使しお前らの組織のコンピュータから過去10年分の犯行声明の文書ファイルを盗み出した。俺は退屈な天使たちの完全な模倣犯という隠れ蓑を使い、新たなるテロ組織を結成するのだ。ファイルΩを盗んだのは国家転覆計画の切り札が欲しかったから。萩原聡子を殺したのは、この下剋上計画を潰されそうになったからな。お前らのよくやる口封じという奴だ」
ウリエルは久保田の供述を聞き笑った。
「この場で供述したってことは私も口封じで殺されるってことでいいですか」
「ああ。お前は真相を知った。あのサイトがインターネット上にある限り全世界の愉快犯は退屈な天使たちという組織の隠れ蓑を使い犯罪に手を染めるだろう。これから模倣犯は増殖を続けていくから、計画を止めることはできない」
ウリエルは両手を上に挙げる。
「冥土の土産に教えてくれますか。昨日発表された犯行声明もあなたの仕業ですか」
「そうだ。お前らが生中継で佐藤真実が監禁されている場面を放送していることを知った俺は宣伝することにした。この計画には退屈な天使たちによる犯行であることを警察に錯覚させる必要があるからな。そして警察への要求47億円は振り込め詐欺だ。警察は振り込め詐欺であることを疑わずに、47億を振り込むだろう。それだけの資金があれば新たなるテロ組織を結成することも可能だ」
久保田は引き金に手をかける。ウリエルは冷静に彼を説得する。
「こんなところで発砲したら警察が飛んでくるのではありませんか。今この周辺には組織犯罪対策課の刑事たちがパトロールしているそうですから」
「心配ご無用。なぜならこの部屋は完全防音になっているからな。銃声なんて聞こえるわけがない」
久保田が大笑いしていると、突然ウリエルのスマホにメールが着信した。彼女はそのメールを読むと頬を緩ませた。
「どうやらこれで終わりのようですね」




