表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
警察不信  作者: 山本正純
Episode 3  幻影の娘
70/106

Side.070 安楽椅子探偵 Easy chair detective

 その頃神奈川県警では萩原聡子殺人事件の捜査会議が終了した。捜査会議に潜入していた退屈な天使たちのメンバーは捜査会議の内容をメールでウリエルに伝える。

 

 講義の休憩時間に宮本栞はそのメールを確認した。

『被害者の萩原聡子を恨んでいる人物で身長160㎝前後の男性はいなかった。犯人が犯行当時着ていた衣服はみなとみらい公園で発見された。凶器の拳銃は未だに発見できず』


 宮本はメールを読むと、手提げかばんからノートを取り出す。

「捨てないでよかった。萩原聡子の人間関係メモ」


 彼女が開いたページには書き込むスペースがないほどぎゅうぎゅうに人間関係が書いてあった。

 

 なぜ宮本栞は萩原聡子の人間関係について事前に調べていたのか。その答えは7月2日に遡る。その日萩原聡子は通り魔に襲われた。その通り魔事件の容疑者として浮上したのは彼女が常連として来ていたイタリアンレストランディーノ店長板利明。常連の店の店長の容疑を晴らすために彼女は単独で捜査を開始していた。その時彼女は板利が同じ組織の構成員であったことを知らない。この事実を知ったのは一週間後だった。


 彼女はまず他にも彼女を恨んでいる人物がいるのではないかと思い、萩原の人間関係について捜査をしていた。調べてみると動機がありそうな人物はかなりいた。だが萩原が襲われた第一の事件から三日後の7月5日第二の通り魔事件が起きたためこのメモは無駄になった。

 

 そして今日このメモが無駄ではなかったことが証明される。だから宮本はうれしかった。

人が殺されてうれしいという感情を抱く方がどうかしていると思うが。


 宮本はノートに書いてある見覚えのある名前にマーカーを引いた。

「やっぱりこの事件の犯人はあの人。証拠はないけれど、あの人は目撃者の証言と合致しています」

 

 宮本栞には早くも殺人事件の犯人とその動機が分かっていた。後は証拠待ちの状態だ。捜査資料に証拠が掲載されているならば、夕暮れ前に事件を解決することができる。彼女はイタリアンレストランに呼ぶことになっている神奈川県警に潜入捜査中のメンバーとのお食事会を楽しみにしている。宮本栞は一応サマエルに電話する。


「サマエル。少し情報戦をしてもらってもいいですか。対戦相手は化け狐。相手にとって不足ないでしょう」

 


 その頃都内某所のある部屋では黒いフード付きのパーカーを着ている男はノートパソコンを操作していた。

 ノートパソコンにはこの前盗んだばかりの退屈な天使たちの犯行声明の文書データが表示されている。

 10年分の犯行声明を読みながら男は微笑む。

「後はこのデータをインターネット上にばら撒くだけ。これで全世界にいる愉快犯が退屈な天使たちの模倣犯になる。警察は大量に送られた犯行声明を読み撹乱するだろう。どうなろうが警察は崩壊するぜ」

 男は笑いながらサイトをアップする。こうして過去の退屈な天使たちの犯行声明はインターネット上に流出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ