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警察不信  作者: 山本正純
Episode 3  幻影の娘
60/106

Side.060 ウリエルの推理 Uriel's reasoning

矛盾が見られたため、修正しました。

 正午から10分が経過した頃に木原たちはイタリアンレストランディーノに到着した。その店はイタリア料理がうまい店としてマスコミに報道されているにも関わらず客はたった一人。閑古鳥が鳴いているようだった。


 木原たちがテーブル席に座ると、店主である板利明が水を持ってきた。

「お客様。注文が決まりましたらこちらの呼び鈴でお呼びください」

 

 板利が二人から離れようとした時、木原は板利を呼び止めた。

「失礼ですが、この時間帯はいつも閑古鳥が鳴いているのですか。マスコミでおいしい店と紹介された店だから満員でもおかしくないと思いますが」


「横浜中央大学の近くにファミリーレストランがオープンしたからですよ。あっちの店の方が安いしうまい。いつもこの店に来ていた大学生はファミリーレストランへ逃げていきました。今もこの店で食事しているのはあの子くらいです」

 

 そう言いながら板利はカウンター席を見つめ二人から離れた。木原たちは写真の女とカウンター席に座っている女の顔を見比べる。その席に座っている女と写真の女は同じ顔だ。あの女は小早川せつなだろうと木原たちは考えひそひそ話を始める。

「彼女が小早川せつなだとしたら、身分を隠して接触した方がいいでしょう」

「それなら芸能事務所の人間に成りすまして接触するか。偽名は飯塚にする」


 相談が終わると二人はテーブル席から立ち上がる。そして二人は小早川せつなと思われる女の背後に立ち声をかける。


「すみません。小早川せつなさんでしょうか。私はヤマオカ芸能事務所の飯塚と申します」


 女は質問にくすくすと笑いながら答える。

「違いますよ。私の名前は横浜大学四年生の宮本栞。あなた本当は刑事さんでしょう。それもあまり敬語を使わないタイプでしょうか」

 

 偽名を使っていることがバレた神津は顔を青くする。

「何で分かった。俺が刑事だって」

「匂いです。そのスーツから煙の匂いがしました。それも煙草の匂いとは違った拳銃の火薬の匂いです。普通の芸能事務所の人間のスーツから拳銃の火薬の匂いがするはずがないでしょう。だから拳銃を携帯することが許された警察官かなと思っただけです。因みに敬語をあまり使わないタイプの刑事さんであると思った理由は、声の強弱が不自然だったから。敬語という文化に馴染み深くない外国人と同じように聞こえた。だから敬語を使うことに慣れていないタイプの人かなと思っただけです」

 

 少ない手がかりで身分を推理した宮本を木原に感心した。

「すごい推理力ですね。申し遅れました。警視庁の木原と申します。そちらのあなたが刑事であると推理した男の名前は神津。どうですか。その推理力を使って神奈川県警に就職するつもりはありませんか」


「いいえ。私には教師になる夢がありますので」


 そして木原は宮本に質問する。

「では小早川せつなさんについてご存じありませんか。あなたと同じ横浜中央大学に通っていてこの店の常連のようですが」

「知っていますよ。彼女は交換留学で8月6日からアメリカに行っています。確か帰ってくるのは10月29日だったかな」


 問題の小早川はアメリカ留学していたことを知り木原たちは落胆した。彼らはテーブルに戻るとパスタを注文する。その後宮本栞はナポリタンを完食し、会計を済ませ店を出て行った。


いつかウリエル対ハニエルで推理対決をさせたいと思う今日この頃。

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