Side.059 容疑者たち Suspects
突然倹約家を止めた久保田太郎のことが気になった二人。丁度その頃三人の前に七三分けの金髪の男が三人の前に現れた。男は中林に話しかける。
「中林教授。この二人が警察の方でしょうか」
「そうです。警視庁捜査一課の木原君と神津君だ」
中林に紹介された二人は久保田に警察手帳を見せ改めて自己紹介した。
「警視庁の木原です」
「同じく神津だ」
久保田は木原たちに対してお辞儀する。
「刑事さん。ぼくは佐藤真実の幼馴染。久保田太郎です」
木原が久保田と握手してから本題を話す。
「我々警察は佐藤真実が偶然ブラッディティアに感染して、退屈な天使たちに拉致されたというシナリオに違和感を覚えました。この一連の事件の黒幕は佐藤真実の身近な人間の中にいると考えています。だから我々は佐藤真実の人間関係について捜査しています」
神津は久保田に質問する。
「佐藤真実の人間関係について教えろ」
「いいでしょう。とは言ってもぼくが把握しているのは三人だけですが。幼馴染と言っても学部が違いますし、高校も別の学校に通っていたので他にも友人はいると思います。まずは真実の彼氏牧田誠。彼と真実は高校で知り合った仲。結構ラブラブな恋愛をしているそうです。次に吉野智子。彼女は真実の家庭教師をしていたそうです。確か今は警備員をしていると聞いています。三人目は小早川せつな。同い年で神奈川の横浜中央大学に通っているそうです」
木原は三人の名前をメモすると、久保田は刑事に相談をする。
「身近な人間の中に黒幕がいると言いましたよね。それなら心当たりがあります。3か月前から彼女の周りにストーカーが現れました。無言電話や盗撮写真が毎日のように送られてきて迷惑しているそうです。たぶんそのストーカーが一連の事件の黒幕ですよ。ちゃんと動機があるでしょう。未知のウイルスに感染させて殺すことで彼女を独り占めにするという動機が」
久保田の推理は的を射ているようだった。木原は久保田の推理を考慮に入れる。一方神津は久保田の推理を聞かず、小早川せつなについて考えていた。小早川せつながこの一連の事件に関わっているとしたら、一度会う必要があると彼は考えた。神津は久保田に小早川せつなについて質問する。
「佐藤真実の高校の後輩小早川せつなについて教えてくれ。そいつはある事件の捜査線上に浮上した容疑者だ」
「8月6日にイタリアンレストランディーノで再開したって聞きました。その日真実は友人三人と美味しいと噂の板利明の店に行ったそうです。彼女はその店の常連だそうで学校のある日の昼は必ず訪れるそうです。確かその時の写真の写メが届いていたと思います」
久保田は携帯電話を取り出し写真を見せる。その写真を見ながら久保田は呟いた。
「この小早川せつなって子。なんかあの子に似ている気がして懐かしい感じがしました。小学校五年の時によくぼくの家に遊びに来た四年生くらいの女の子にね」
久保田が懐かしんでいると木原は久保田に指示をする。
「とりあえずこの写真を私の携帯に転送してもらってもよろしいですか」
小早川せつなの写真を入手した木原たちは車の中で相談をする。
「これからどうしますか」
「決まっているだろう。横浜に行って小早川せつなに接触する。今から行けば丁度昼休みに間に合うだろう」
こうして木原たちはイタリアンレストランディーノへ向かうことにした。




