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警察不信  作者: 山本正純
Episode 3  幻影の娘
53/106

Side.053 バイオテロの目的 The purpose of bioterrorism

 10月23日。退屈な天使たちによるバイオテロ事件から二日が経過した。

 千間刑事部長と喜田参事官は系図部長室でニュース番組を見ている。

『山本尊さん。二日前池袋でバイオテロ事件が発生しましたが、警察は止めることができませんでしたよね。また不祥事が出来てしまいましたが今後警察が退屈な天使たちを逮捕することができるのでしょうか』

『いままでの警察の行動から考えると防戦一方の状態。そんな状態では彼らの行動を止めることはできないでしょう。だから警察には退屈な天使たちに対して攻撃してもらいたい。どんなゲームも守ってばかりでは勝てませんからね。これ以上の不祥事を避けたければ、構成員を逮捕してください』


 千間はテレビを切り、激怒する。

「あいつはいつも警察を侮辱するコメントしか言わない。だから嫌いだ。喜田。抗議文を作成した方がいいかもしれないな」

 

 喜田は目を点にして、目的である昨日までの捜査状況について報告する。

「二日前に起きた池袋バイオテロ事件。ウイルスブラッディティアをばら撒いた国立微生物研究所研究員の久保田花子は投身自殺をしました。彼女の自宅に直筆の遺書があったので自殺でまちがいありません。その遺書によれば、セクハラやいじめに嫌気がさしたから自殺したそうです」

 

 千間は喜田に質問する。

「ウイルスの感染者は何人だ」

「それが奇妙なことに感染者はたった一人です。あの時池袋にいた人間全員を対象に血液検査をしたのですが、血液中にウイルスが発見されたのは東都大学四年生佐藤真実だけでした。その状況が奇妙だということで、病院側は三日間あの日池袋にいた人間を観察するために隔離しているのですが、感染者は出ていません。もちろん佐藤真実以外は」


 そのことを知り千間は考え込む。

「明らかにおかしい。あのウイルスの感染力はインフルエンザの4倍だったよな。それなのに感染者は一人だけ。もしかしたら違うのかもしれないな。久保田花子がばら撒いたウイルスはブラッディティアではなく、それに似た感染力の弱いウイルスだった。それだとこの奇妙な状況が説明できる」

 

 喜田は千間の推理に納得しなかった。

「お言葉ですが、そんな感染力の低いウイルスをテロリストがばら撒くでしょうか。それにあの時池袋にいたのは約50人でした。バイオテロリストならもっと人が多い場所を狙うと思いますよ。たとえばかなりの人数が集まる東京ドームとか。あの日東京ドームではアイドルグループのライブがやっていて、三万人は集まっていた。一般的なバイオテロリストは人数が多い場所を選ぶでしょう。人数が少ない場所で感染力の低いウイルスを使ってバイオテロをしたメリットが分かりません」

 

 そんな喜田の言葉を聞き千間は怒る。

「あのバイオテロ事件が模倣犯による犯行だとでも言いたいのか。久保田花子による自作自演だと。その可能性はなくもないが、奴らは有言実行しなかったことがない。犯行声明を出せば必ず行動するだろう。いままでの経験から考えるとあのバイオテロ事件は間違いなく退屈な天使たちによる犯行だ」

 

この一言で議論は終わった。


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