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警察不信  作者: 山本正純
Episode 2  信賞必罰
39/106

Side.039 北条の過去 The past of Houzyou

 午前11時20分合田警部と月影管理官は警察病院の手術室前にいた。

「月影。まさか奴らのターゲットが北条だったとはな」

「はい。奴らの予告した東京都在住の警察官Nが示すのはNorth。北の方であるとは思いつきませんでした」

「警察の不祥事だ。予告殺人を止めることができなかったからな」

 月影はあることを思い出す。

「北条を狙撃したと思われるビルの屋上からメモが見つかったそうですね。次は大量に殺すという犯行声明が」

「ああ。次は絶対に奴らを止めないといけないということだ」

 


 合田たちが悔しがっていたころ北条は手術室で生死を彷徨っていた。

(ここで死んでも構わない。あの十字架を下すためには)

 

 

 1992年7月16日北条は退屈な天使たちのメンバーとして活動していた。彼がこの組織に属した理由は自分の能力を試したくなったから。北条には高いハッキング能力があった。その能力を知ったあの方は彼を組織にスカウトした。組織に属した彼に破れないコンピュータはないと天狗になった時もあった。組織のメンバーから頼りにされている。

 この日もこれまでと同じようにラグエルが潜入捜査中の株式会社ダイブ・アンペアーのメインコンピュータからラグエルがデータを盗んだという情報を削除していた。

「これで終わり」

 北条はエンターキーを押し、ハッキングを終了する。それから五分後月影から電話がかかってきた。

『北条。株式会社ダイブ・アンペアーで殺人事件だ。今すぐ来い』


 この時北条は嫌な予感がした。とんでもないことをしたのではないかという嫌な予感だ。その予感は的中する。

 被害者はこの会社の社長で階段から突き飛ばされたような痕跡があった。偶然にも防犯カメラが犯行の瞬間を見ていたはずだった。

 

 事件は解決するに思えたが、思わぬ出来事が発生したことを彼らは知らない。防犯カメラの映像を確認した月影は驚いた。防犯カメラの映像は砂嵐が走っていたため何が起きたのかが分からなかった。

 このことを知った北条は悟った。自分は殺人事件の証拠を消してしまったと。防犯カメラの映像が消えたのはラグエルが逃走する場面を削除したから。一度削除した映像は元通りになることはない。そんなプログラムを使用してハッキングしたのだから。

 

 こうして事件は迷宮入りし、北条は重い贖罪という十字架を背負わされた。

 それから何度も彼は組織を抜けようとした。しかし組織はそれを許さなかった。そして2012年7月7日遂に組織を抜けるチャンスを手に入れた。チャンスを与えたラグエルはメールを送った。

『ゼラキエル。あなたに組織を抜けるチャンスを与えましょう。僕の思惑に関わるだけであなたは組織を抜け自由になれます・・』

 


 このメールが届いてから彼は株式会社センタースペード人質籠城事件で後継者の実力を測った。それ以降彼は退屈な天使たちの活動に関わることはなかった。

 

 そして2012年10月15日北条の元にラグエルからの最後のメールが届いた。

『あなたを自由にする時が来ました』

 

その一言はこの狙撃を示していた。

(これで自由になれる。ありがとう。ラグエル)

 

 涙が零れた時北条はベッドの上で目を覚ました。ここは集中治療室らしく、右腕には点滴が繋がれている。体は痛く動かすことはできない。

(やっぱり急所は外したか)


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