Side.033 警視庁への挑戦状 The challenge to the Metropolitan Police Department
10月16日午前8時。その日の警視庁はいつも以上に騒がしいと木原は思った。
捜査一課三係に行くと、合田警部と月影管理官が顔つきを変えて話していた。
「あれは犯行予告だろう」
「上層部はそのように考えているそうです」
何の話なのか。木原には理解できなかった。
「何の話ですか」
「退屈な天使たちの犯行予告だ」
「詳しい話は今からの捜査会議で話します」
月影はテレビを付ける。そして次々にチャンネルを変えていく。
『衆議院議員として活躍している・・』
『芸能の話題です。人気アイドルの・・』
『凡人散歩。今日は生放送2時間スペシャル。神奈川県横浜市を訪れます』
『昨夜未明大阪府で通り魔事件が発生・・』
『本日は福岡県議会議員の美人秘書として有名な田中なずなさんにインタビューしたいと思います』
『10月21日池袋に海外のブランド店ジェネシス・アイがオープンします。この店はリーズナブルな価格でブランド品が買えることで有名で、海外の中高生に人気の店です』
一通りチャンネルを変えると月影はテレビを切る。
「どうやらマスコミには伝えられていないらしい」
それから五分後捜査会議は始まった。
「本日の午前7時退屈な天使たちから犯行予告が届いた」
喜田参事官は犯行予告の音声データを再生する。
『怪物たちが蠢くまでに最後の戦いを始めよう。我々の犯行をあなたたち警察が止めることができたらあなたたちの勝ち。このゲームで負けたらまた一つ警察組織の不祥事が増えるかもね。まずは予告殺人でもしようかな。10月17日午前10時東京都在住の警察官Nを銃殺する。因みにこの犯行声明は今日の午前9時にマスコミに向けて一斉に送るから。でもマスコミ向けの犯行声明は違うから混乱しないでね。じゃあ残りの一日楽しませてよ』
あの時と同じ声だと木原たちは思った。この声は赤い落書き殺人事件の犯行声明と同じように無邪気な声だ。声は変えてあるため性別の判断は難しいが。
木原は手を挙げる。
「千間刑事部長。マスコミ向けの犯行声明とは何でしょう」
「さあ。分からない。おそらくマスコミを使って一般人に犯行声明を公開するということだろう」
それ以外の質問がなかったため千間は深呼吸してから集まった警察官に指示を出す。
「予告殺人のターゲットは東京都在住の警察官N。該当する警察官を自宅謹慎にした。もちろん彼らの自宅では必ず二人の警察官が見張りをする。これだけすれば退屈な天使たちの犯行を止めることができる。君たちには条件に該当する警察官30名の警護と不審人物がいないのかを探すパトロールをしてもらいたい。銃殺という言葉から奴らは拳銃を使うはずだ。拳銃を常に携帯しろ」




