Side.022 ウリエルのピンチ Uriel's pinch
もう一度狙撃を試みたレミエルのもとにラグエルから電話が届いた。
「もう一度狙撃していいか」
『だめです。あなたたちの狙撃で鬼頭があのビルの中に隠れているという疑惑が急浮上しました。それにあの二人の侵入者がクロサワビルから狙撃されそうになったことを警察に通報したら、確実に警察はあなたたちのいるビルに突入するでしょう。一番の決め手はあの侵入者は狙撃されそうになったから今後は警戒して行動するはず。そんな状態で狙撃することは難しいでしょう。銃弾の無駄です。とにかくあなたたちは狙撃の証拠を消して逃走してください』
「分かった」
レミエルたちはライフルを仕舞い脱出を開始する。クロサワビルの前には青い車が停まった。運転しているのは青いネクタイの男だ。レミエルたちはその車に乗り込む。
「まさかお前が運転手なのか。ウリエルの護衛はいいのか」
「はい。構いません。最初からそういう作戦だったでしょう」
青いネクタイの男はレミエルたちを乗せアジトへと向かう。
丁度その頃ピンクのネクタイの男は軽トラックに乗って渋谷クリーンビルの後ろにある駐車場に駐車した。彼は煙草を吸いながら待機する。
その頃ウリエルは7階の一室で冷や汗を掻いていた。十分前ラグエルから二人の警察官がビルの中に侵入したことをメールで知った。その時から冷や汗が止まらない。ウリエルの唯一の武器であるスタンガンは現在電池切れのため使用できない状態だからだ。武器が使えないウリエルは、ただの大学生宮本栞だ。
ただの大学生が二人の警察官を倒すことはできない。相手がどんな武器を持っているのか分からない状況ならなおさらだ。
彼女と同じ部屋にいるのは鬼頭のみ。即戦力になる連続強盗殺人犯鬼頭は眠り込んでいるため頼ることはできない。一緒に突入した赤いネクタイの男と黄色いネクタイの男は脱出の準備をしているためこの場にはいない。
青いネクタイ男とピンクのネクタイの男はビルの外に脱出して逃走の準備をしている。
ここは別室にいる鴉に侵入者を撃退してもらうしかない。
(鴉さんなら拳銃を持っているから勝てるかもしれない。彼らは体術も凄いからね)
そう考えたウリエルは携帯電話を取り出して赤いネクタイ男に連絡しようとする。だがその時にラグエルからメールが届いた。
『大丈夫。残っている鴉を呼んで鬼頭と共に脱出してください』
このメールを読んだウリエルは微笑んだ。
「やっぱりあの人はヒーローですね」
ウリエルは残っている鴉にメールを打つ。
『脱出作戦開始です』




