Side.015 聖戦の始まり The beginning of holy war
10月13日午前9時55分。流星会幹部小野田は群馬県のペンションに隠れていた。
昨日の夜から多くのパトカーがパトロールをしている。今話題の連続強盗殺人犯鬼頭が関東地方に紛れ込んだからパトカーを増幅させたのだろうと小野田は思った。一方でもう一つの可能性も否定できない。
(まさか。俺が群馬にいることがばれたのか)
突然裏口のドアが開く音が聞こえた。組織犯罪対策課が突入してきたのではと思い彼は身震いする。しかし部屋に入ってきたのは鬼頭だった。それを見て小野田はほっとする。
「お前かよ。脅かすな。お前がこのピンチを救ってくれるヒーローだったのか」
「ヒーローだと」
そう言うと鬼頭は小野田を素手で殴り殺す。パンチは彼の頭を直撃して、小野田の体は木製の壁に激突する。
「俺はヒーローじゃねぇ。俺は死神だ。お前はここで死ぬんだよ。この馬鹿野郎が」
小野田の死亡を確認すると彼は裏口から逃亡した。その裏口にはなぜか青い車が停車してある。幸福だと鬼頭は思った。
「奪ってくれということだな」
鬼頭はその車を奪い去り東京に向かって逃亡を開始する。その様子を物陰で見ていた退屈な天使たちのメンバーはレミエルに電話する。
「鬼頭が動き出しました」
それを合図にレミエルはポルシェ・ボクスターで追跡を開始する。
警察に気が付かれないようにするために車間距離をある程度取り尾行をしていた。助手席に座っているラジエルは携帯電話でラグエルにメールする。
『尾行を始めました』
そのメールを須田哲夫はトイレの中で読んだ。
(始まりましたか)
須田は手を洗い組織犯罪対策課へと戻っていく。その廊下で千間刑事部長と喜田参事官とすれ違った。
「鬼頭が群馬に現れるという情報は事実だったか」
「はい。彼は現在東京方面に逃走中」
喜田の言葉を聞き千間は笑った。
「まさか連続強盗殺人犯の逮捕劇の舞台が東京になるとは。埼玉県警と協力だな」
「そうしますか」
こんな会話をしていた千間たちとすれ違った須田は思った。
(埼玉県警と共同戦線を張るのですか。おもしろくなってきました)
それから千間は連続強盗殺人事件の捜査本部に顔を出した。だが捜査本部には三人の警察官しかいない。残りのメンバーは現在東京都内をパトロールしている。この事件の被疑者は鬼頭宗成。彼を逮捕するため捜査本部は結成された。千間は無線で東京都の警察官に指示を出す。
「こちら広域連続強盗殺人事件捜査本部。被疑者である鬼頭宗成が東京都方面に逃走中。これからコールAを使用する。繰り返す。コールAを使用する。捜査会議に参加した警察官は持ち場に移動しろ」
千間は無線を切ると白い歯を出して笑った。
「これで奴らを一網打尽に出来るかもしれない」
その横で喜田参事官は埼玉県警と連絡をしていた。
「千間刑事部長がコールAの使用を許可しました。持ち場に移動してください」
電話を切り喜田参事官ことアズラエルは笑った。
(さあお手並み拝見とさせてもらおうか。ラグエルさん)




