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警察不信  作者: 山本正純
Episode 5 銀の弾丸
100/106

Side.100 舞台裏で In a greenroom

解決編のスタートです。


 午後11時。ステージの舞台裏に一人の男が現れた。その男は舞台裏に置いてあるダンボールを見る。

「これでいい」

 ダンボールの中には無数の爆弾が入っていた。そんな男に大野達郎警部は後ろから声を掛けた。

「やっぱりあなたが犯人だったんですね。山本尊さんを毒殺した殺人犯は」


 犯人は怯えるように身震いする。大野は推理を続ける。

「大工健一郎さんが到着したことを知ったあなたはポケットから青酸カリを取り出し、山本尊さんが持っていた赤ワインに毒物を混入しました。致死量の毒物しか用意していなかったため、あなたの手には青酸カリを入れておいた袋しか残らなかった。それをどこかに捨てれば事件の真相を闇に葬ることができたとあなたは考え、証拠を消そうと考えた」


 犯人は大野の話を聞き笑う。

「馬鹿だ。身体検査をしたが、毒物は誰からも見つからなかったじゃないか。身体検査をした刑事に聞け。馬鹿な警察は毒物が入った粉薬の袋なんて見つからなかったって言うだろう」


 犯人の話を聞き大野は笑う。

「誰が毒物を仕込んだのは粉薬の袋って言いましたか。山本尊さんの毒殺に成功したあなたは、靴に袋を隠しました。警察は靴までは調べないとふんでね。案の定身体検査を担当した刑事は靴までは調べなかった。そしてステージの舞台裏から爆弾が見つかったことを知ったあなたは、退屈な天使たちが用意した爆弾を使って証拠を消そうと考えた。違いますか。ホテル支配人の大塚さん」


 大塚は大野の推理を聞き拍手する。

「素晴らしい推理だ。爆弾が見つかったことが罠だったとは思わなかったよ。潔く罪を認めよう。殺害方法は君の推理通りだ。その前になぜ私が犯人だと思ったのかを聞こうかな」

「あなたが犯人だと思ったきっかけは最初に明日香という名前を聞いた時のあなたの顔です。他の4人は普通に顔を曇らせただけだったが、あなただけ悲嘆を感じました。そんな時に合田警部の話を聞いて確信しました。13年前の7月31日栃木県にある倉田家の豪邸を連続強盗殺人犯の鬼頭が襲撃しました。その時あなたがその豪邸にいたと聞いた時に確信しました。倉田明日香さんの母親は彼女が失踪して8年が経過した時、彼女の名前を忘れないようにと、新しい命に彼女と同じ名前を付けたそうです。倉田家の当主と知り合いだったあなたは当時2歳になる明日香さんを見て思いましたよね」


 大塚は頷く。

「ああ。あの時のホームパーティーに俺は参加した。彼女を手違いで人体モルモットにしてしまったという罪悪感を消し去るために。そんな時に鬼頭が豪邸を襲撃した。鬼頭は研究のために雇っていた殺人鬼。そんな彼に殺されるなら本望だと思った時に、彼は突然動きを止めた。そして誰も殺さずに帰って行ったよ。その時あの殺人鬼にも人の心があると俺は思った。それから俺はあの事件を隠蔽したことを許せなくなった。確かに俺はあの研究に参加した。そして俺の兄を騙して大量の研究資金を用意したさ。環境省に乗り込んで研究の重要性についてプレゼンをやった。兄を騙して自殺に追い込んだ俺が許せなかった。研究の存在を世間に公表して、自殺するしかないと思った。政府や警察を非難することで有名な山本尊にこのことを話したら、あいつはへらへらと笑いやがった。あいつは馬場研究所で研究員として働いていたんだ。研究の存在を世間に公表すると、ここまで築き上げてきたキャリアに傷がつく。そう言ってあいつは公表をしないと言った。許せなかったんだ。散々政府や警察の不祥事を非難したあいつが、自分の不祥事を非難しなかったことが。だから殺してやったのさ」


 延々と話す大塚の動機を聞き大野は非難した。

「手違いで倉田明日香さんを人体モルモットにした。そういうならあなたは杉谷雄介さんも手違いで監禁したと言うのですか。ふざけないでください。あなたが山本尊さんを許せないのは分かりますが、殺す必要はなかったでしょう。なぜあなたは戦わず殺人という道を選んだのですか。罪悪感しかなかったなら、殺人なんて方法選ばなかったではありませんか」


 大塚は暗い顔をすると、両手を大野に差し伸べた。

「分かった。逮捕してくれ」

 すべての罪を認めた大塚は覚悟をしている。これからどのような批判があろうと、すべてを受け入れることができるように。


 殺人事件が解決した頃偽者の司会者山田はポケットからスマホを取り出し、メールを打つ。

『そろそろ仕上げに入りましょう』


さあ。いよいよクライマックス。

タイムリミットは一時間。退屈な天使たちのテロ活動に警視庁はどのように立ち向かうのか。

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