あかずきんちゃんあらわる。
「こんにちは、ユナカイト様の騎士団はどちらでしょうか。」
のどかな昼下がり。
あくびを噛み殺し、昼交代の時間を待っていた門番達の前に赤ずきんちゃんが登場した。
フリルつきの赤ずきんをかぶった幼い少女は不釣り合いなほど大きなかごを持ち、そこから殺人的なまでに美味しそうな香りが漂っていた。
よだれが垂れそうになるのを堪え、門番は尋ねた。
アポはとっているのかと。
赤ずきんちゃんが言うユナカイトは美形でかつ実力もあり、カリスマ性に溢れたお人だ。
彼を狙う令嬢やら貴婦人やら少女やら熟女が押し掛けては彼に会わせろ、彼に贈り物を渡したいと詰め寄ることもしばしばあったりする。
贈り物の食品系は注意が必要だ。
何らかの異物混入がよくあるのだ。以前、毒味~♪と称して見習いが食品に手を出したところ酷い下痢嘔吐にみまわれ三日三晩苦しみ抜いた事件があった。メシテロである。
ちなみに犯人のご令嬢は社交界で断罪され外国に嫁いでいった。あらゆる媚薬を入れたとの事であった。
それ以来、信頼できる筋以外からの差し入れは御断りしているのだ。
「お昼時なので差し入れに参りました。
書類仕事が夜中までかかりそうだとうかがったので…
ユナカイト様はお忙しいでしょうから、同じ団員の方にお渡ししたいので誰か呼んではもらえないでしょうか?」
こてんと首をかしげる姿は愛らしかったが、門番達の目は大きなかごの中身に釘付けだ。
ビーフシチューっぽい香りが食欲を刺激し、腹の虫がなる。なんとしても食べたいと、男達の心はひとつになった。
「お嬢ちゃん、悪いが食品の持ち込みはできないんだよ。」
「事前に約束を取り付けて無いと会えないんだよ。」
「…そうですが…では帰ります。
ユナカイト様によろしくお伝えください。」
赤ずきんちゃんは素直に頭を下げ、帰ろうとするが門番に回り込まれた。
「お嬢ちゃん、その荷物重そうじゃないか。
よければお兄さん達が中身をもらってあげよう。」
「いえ、近所の方にお裾分けしますので結構です。御手数お掛けしました。」
ちょっと後ずさった赤ずきんちゃんの周りを他の門番達も囲みます。
「いやいやいや、冷めてしまったら美味しさも半減だよ?!」
「一きれずつ食べてあげるよ!」
「なんなら全部もらってあげるよ!」
「ほら、お兄さん達にかしなさい!」
一人が赤ずきんの少女の持つかごに手をかけました。ぎょっとした少女はとられまいと抵抗しますが、幼女と大の大人の兵士職の男に敵うはずもありません。
あっという間に取り上げられ、かごの中身がさらされました。
そこには美味しそうなパイがありました。
ミートパイの中身ビーフシチュー版です。
ごくりと喉をならした門番の一人がパイに手を伸ばしたその時、地を這うような声が聞こえました。
「きさまら…なにをしている…」
赤ずきんの正体はまぁ彼女です。




