尊敬ってどこで売ってますか。
カチカチと時計の音がやけに大きく聞こえる。
後は、文字を書く音、紙をめくる音のみに執務室は支配されていた。
「う~ん…」
「どうしたの?アイリちゃん。」
「メリッサちゃん、ここがわからなくて…」
「どこどこ?えーと…私もちょっとわからないなぁ…」
今こそチャンス!そう思い椅子から立ち上がって声を掛けた。
「どれどれ!俺が見てあげるよ!
これでも学園の座学の点数もそこそこだったんだよ!」
ユナカイトが笑顔で二人に近づく。
「いえ、大丈夫です。
ユナカイト様お座り下さい。」
「ユナカイト様、お仕事まだまだ残ってますよね?
もうちょっと考えてみますから。」
ところがアイリもメリッサも遠慮をする。
「そんな遠慮しないで。
二人とも甘えてくれていいんだよ!」
そう言って、アイリの教科書に手を伸ばし…たが、さっと胸に抱き締められてしまった。
アイリがじっ…と、ユナカイトの目を見て言った。
「ユナカイト様、ほんといいですから。
自分の椅子に座って仕事してください。」
「あの、ほんとに大丈夫ですよ。
二人で考えて、駄目ならルノーお兄ちゃんに聞きますし。
なのでお仕事を…」
そこまで言われて、ユナカイトは気付いた。
二人は遠慮をしているのではない。
どちらかといえば、なに言ってんだコイツ…!?的な眼差しで見られていることに。
「そろそろアルベイル様戻ってきますよ?」
「ルノーお兄ちゃんもお父さんの所からそろそろ新しい書類持ってきますよ?」
だから大人しく座って仕事してください。という副音声が聞こえる気がする。
な、なんにもいえねぇ!!的な気分になり返事もできない。
「ユナカイト様、やればできる方だってアルベイル様が前言ってましたよ!」
「お父さんも本気を出したユナカイト様はすごいって言ってました!」
黙りこむユナカイトに対して、今度は励ましの言葉を掛けるアイリとメリッサ。アメとムチの使い方が上手である。
「「だからお仕事頑張ってくださいね!」」
「うん、そだね、うん、頑張るよ。」
笑顔で二人に言われて、ユナカイトはすごすご執務机に戻った。
ユナカイトが座って、ペンを持ったタイミングで更に声が掛かる。
「ユナカイト様が好きそうなお菓子も用意したんですよ、もう少ししたらお茶しましょう。」
「もうちょっとしたらお茶の時間ですから、頑張ってください!」
ニコニコ笑顔の二人に言われる。
なんというかご褒美無いとなにもできない人と思われてないだろうか?とユナカイトは思った。
「うん、頑張るね。」
若干ひきつりつつも、なんとか笑顔で答えるユナカイトであった。
「只今戻りました、ユナカイト様。
他のところからも追加の書類がきてきまいましたが…大丈夫でしょうか?」
暫くして、ルノーが戻ってきた。
すまなそうに、ひと山分の書類を抱えている。
やりたくナーイ!と内心思うものの、今まで自分がやってこなかったツケが回ってきたのだ。甘んじて受け取るしかない。
「うん、頑張るよ…ハハハ…
あ、ルノーそこにあるのは終わってるやつだから。」
「こんなにたくさん終わったんですね!
さすがユナカイト様ですね!!では今取り組んでいる書類の束が終わったら休憩にしましょう。」
すかさず誉められた上に、ご褒美もちらつかされる。
完全に勉強したくない子をやる気にさせる方法である。幼少期よく父母にされた方法だ。
尊敬って、どうしたら取り戻せるのかな?
手を動かしながら、思わず遠い目をするユナカイトであったー…




