可愛い顔して小悪魔か。
お久しぶりです。
「おまたせ!
はい、これサンドイッチよ。」
にこにことメリッサの姉が大きなバスケットを手渡してきた。
アイリに気付くと、花が咲くように微笑んだ。
「はじめまして、アイリちゃんよね。
私はメリッサのお姉ちゃんのエルサよ。よろしくね。」
「は、はじめまして!
メリッサちゃんと仲良くさせてもらってます。
お父さんのレンドリックさんにもお世話になってます!」
笑顔に見とれたが、すぐ我にかえったアイリは勢いよく頭を下げた。
顔が赤くなる。
綺麗さでいえば、この前会ったアルベイルの婚約者のエリザベールが上だが、エルサはとにかく可愛らしいのだ。
「メリッサをよろしくね。
この子、優しいけど相手を思いやりすぎで気が弱いところがあるから。」
「お、お姉ちゃん!!!」
「大丈夫です!メリッサちゃんは私がぜったい守ります!!」
「ふふ、可愛いけど頼もしい騎士様ね。
さすがユナカイト様のところの子だわ~
お姉ちゃん安心した!
メリッサ、いい友達ができてよかったね!!」
慌てるメリッサと意気込むアイリを優しい目で見てエルサは微笑んだ。
そして、二人の手をぎゅっとにぎって言った。
「そんな仲良し二人に大切なミッションを与えるわ。」
「「ええっ?!」」
「簡単なお仕事よ。
このバスケットのなかにはお店の特製サンドと私の手作りのお菓子が入ってるわ。
父さんのところに持っていって、一緒に昼ごはん食べてもらえばいいわ。ルノーさんと一緒に。
父さんがいなければなお良いけどそうはいかないから、とりあえずルノーさんには絶対食べさせて。」
エルサはにこにことしているが目が笑ってない。
威圧を感じる。
「ルノーさんって誰…?」
「お父さんの部下の人。
とっても優しいお兄ちゃんだよ。ニコニコしてる人。」
以前、パイを強奪させそうになって怪我をした時にレンドリックに詰め所に運ばれた後手当てをしてくれた人かもしれない。
アイリがそう言うとエルサが目を輝かせた。
「きっとそうに違いないわ!
焦げ茶色の髪に、薄茶色の瞳で、特に特徴がない顔をして、いつも笑顔で、でも体は引き締まっていて、強くて、でも優しくて、押しに弱くて、素敵な人がルノーさんよっ!!!」
「お姉ちゃんが好きな人です。」
「えっ?!そうなの?!
すいません、ちょっと分からないです。私うろ覚えで…」
「いいえ!!
私には分かるわ!そんな優しさをもち、なおかつ父さんに怯えず穏やかにいられるのは部下ではルノーさんぐらいだし、父さんが頼みやすいのも、なにも言わなくてもくみ取って動けるのもルノーさんだけだから!!!」
キラキラ通り越してギラギラ輝く瞳でエルサが言う。
正直怖い。アイリとメリッサは少し後ずさるが、エルサは気にしてない。
「ふう…さて、頼んだわよ、二人とも。これは私からのおごり。
後、ルノーさんも居る前で父さんに『今日はお店を閉めるまで仕事をするから遅くなるけど心配しないで』って私が言ってたって必ず伝えてね。」
「なんで?」
気持ちを落ち着かせて言うエルサに、メリッサは素朴な疑問を投げ掛けた。
「父さんは夜番だから、今日は帰れない。
だ・け・ど…ルノーさんは普通に勤務だから私の終わり時間には間に合う予定。
ルノーさんの人のよさと父さんの心配性が合わされば私の迎えに来てくれるに違いないわ!」
握りこぶしを固めそう宣言するエルサを見て、アイリは強かさを感じずにはいられないのであった。
エルサは可愛い顔をして、小悪魔な策士の人なのであった。




