抱きしめたい!
学校は昼までで終了した。
始業前に簡単な自己紹介がなされた後は普通に授業が始まった。
王都の平民学校はそれぞれの事情により入学のタイミングもずれることも多いし、年もバラバラな事が多いのをアイリははじめて知った。
メリッサとアイリが入ったクラスは皆ひとつふたつ、一番離れていて5つ年が上の少年少女が通っている。
さっきの三バカはアイリとメリッサの二つ上らしい。
そいつら以外は皆基本的に丁寧で、さほど関わってこようとはしないようだ。
ちなみに三バカは戻ってこなかった…ので、かつてないほどその日は平和だったとか。
「もう少し学年が下がるとわいわいしてるけどこのクラスは仕事につく為とか、もっと上の学校に行くのを目標にしてたり、後はアイリちゃんみたいに子どもを雇っている雇用主が通わせてくれたりする人が多いの。」
「あいつらみたいな人ばっかりだったらどうしようかと思ったよ。」
「あの子達のお父さんは街の名士だから…それもあってみんな下手にかかわると危ないって思ってるのもあるとは思うけど…」
権力者が怖くて助けてもらえなかったのかとアイリは内心怒り心頭だった。
確かに権力者は怖い。逆らえないのは分かりすぎるほど分かるがやるせなかった。
その空気を感じたのか、慌ててメリッサはフォローを入れる。
「直接のフォローは難しくても、先生呼んできてくれたりとか、鉢合わせないようにフォローしてくれたり色々助けてくれるんだよ!」
「そっかぁ…」
不意にシュトーレン領での日々が蘇った。
皆怯えながらも、互いを庇い、助け合いながら必死に生きていた日々。
その日々から救い出してくれたユナカイト達。
世界が変わるほどの出来事だった。
ユナカイトのようには全てを変えることはできないけれど、少しでもメリッサを今度は私が守る番だとアイリは思った。
「それにしても、メリッサちゃんはすごいね!
他の子より早く進級したって先生が言ってたもんね。
がんばり屋さんだねっ!」
ちょっと暗くなった雰囲気を変えるため、つとめて明るくアイリが言うとメリッサは赤くなった。
「あのね、私ね、魔術に興味があってその専門学科のある所に行きたいなって思ってるの。
力が弱くても魔力があれば誰かの助けになれるでしょう。」
そう言って微笑むメリッサはとても可愛らしかった。
なんだか胸がいっぱいになったアイリはギュッとメリッサを抱き締めて、私の友達はとっても可愛い!と内心で叫んだのだった。




