かわいいおともだち。
「メリッサ~、後ろのホック留めてくれない?」
ちょっと鼻にかかったような可愛い声で姉が呼んだ。
メリッサが本から顔を上げれば、けばけばしくならない程度に、しかしながら華やかなメイクを決めた姉がお気に入りのワンピースを着て立っていた。
袖や裾にさりげなく手製の刺繍やレースを縫い付けたワンピースは細身なのに出るとこは出ている姉の魅力を最大限に引き出している。
頷いて、背を向けて少ししゃがんだ姉のホックを留めてやり、ついでにほどけかかった髪のリボンを結び直してあげた。
「姉さん、できたわ。あと、リボンも直したから。」
姉とは似つかない低めの声にちょっとだけ悲しくなった。
ハスキーボイスで可愛いと言われはするが、学校や近所の子には男みたいとからかわれるので最近喋るのが少し嫌だった。
「ありがとう!メリッサ!
はぁ~楽しみ!父さんの許可もやっと出たし、この食事会でステキな彼をゲットするわぁ!!
メリッサもユナカイト様のとこの下働きの子と仲良くできるといいわねっ
同い年の女の子の友達は良いわよ~!」
にこにこと姉が言う。
メリッサ達は、警備隊をまとめあげる強面のレンドリックの子どもだった。
姉、メリッサ、弟二人の四人兄弟。
今年、近くのベーカリーで働き出した姉はユナカイトが主催する慰労会のうちのひとつに一人で参加できることになり浮かれていた。
慰労会は独身者で恋人のいない会と、既婚者や恋人のいるものの会の二つだった。
後者は家族同伴可なのでレンドリック一家は毎年そちらに参加していた。
本当は城勤めがしたかった姉だったが父親レンドリックの強い希望もあり、家から通え夕方には帰宅できる場所に就職した。
近所でも評判な可愛い姉に虫がついたり、権力をかさに手を出そうとする輩から守る為だと思われる。
しかしながら、姉目当ての男たちが連日ベーカリーに押し寄せる事態になり父レンドリックは焦った。
どこの馬の骨とも分からないヤツにさらわれる位ならと、ユナカイト企画の独身者の食事会…いわゆる合コンへの参加を許可したのだった。
問題ある者は弾けるし、『レンドリックの娘』という冠はなかなか強力なガードになると思っての事だった。
あわよくば、出会いの場を潰せたらなぁ…という複雑な父心である。
そんな父心を知らず、いや知ってもあえて無視して姉は臨戦態勢だ。
姉の女子力はすごい。ともするとぶりっことして弾かれかねない所もあるが、老若男女におおむね好かれる人なのだ。
さりげなく気遣い、かつ嫌な仕事も笑顔で引き受け、茶目っ気もあり…メリッサにとって自慢で大好きな姉。だからこそ比べられるとこの頃辛い。
昨日、父親からユナカイトの所に新しく来た下働きの子が同じ学校に通うことになったから仲良くしてほしいと頼まれた。
話を聞くと、可愛くて頑張りやさんで良い子だという。
同い年でもう働いていて、なおかつ魔境ユナカイトの屋敷を再生させた凄腕。
どんな子だろうとメリッサは昨日からドキドキして落ち着かなかった。
王都から遠く離れた領から来たという。
(姉さんの事をよく知らない子だったら…)
嬉しすぎてくるくる回り始めた姉に振り回されながらメリッサは思った。
(姉さんと比べたりせず、からかったりせず私と仲良くしてくれるかな…?)
食事会まで、あと少しー…




