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「あ、あんたどこから来たのよ!」
驚きすぎて敬称も何も無く、思わずあんたと呼んでしまった。
「え~?酷いな~、ずっといたよ?」
「ど、何処に!?」
いた?ずっといた?え?全然気付かなかったんだけど!こわっ!
「なんか上に気になる魔道具があったから遊んでた~」
……ん?トレーニングルームの事かな?私もまだ使ってないのに……っち!
「連れて来たい恋人とかいないの?」
「いや~、ほら俺モテるじゃん?1人に決めたら泣く子が出ちゃうからさ~」
妄想乙。さあ、ほっといて続きをしよう!料理を並べるテーブルを出して、デザート系は中のダイニングテーブルに出そうかな。
飲み物は中庭の前に休憩で使ってたテーブルを置いて、そこに出そうかな。
子供達のジュースやお茶はデザートと同じところに出して、子供がお酒を間違えて飲んだりしないようにしなきゃ。
カトラリーはファミレスで注文出来たからそれを使おう。たくさん買っても今後使い道がないしね。
子供達は紙のお皿でいいよね?コップも紙コップにしよう。子供用にストローもあったがいいかな?
折り紙と折り紙の本も出して置いとこう。花火は手持ちと置き花火と、無駄に土地が広いから小さな打ち上げも出来そうだね。みんな喜ぶといいな~。
夕方になり、大工さん達が乗り合い馬車2台でやって来た。棟梁合わせて12人の大工さんにそれぞれの家族や恋人で総勢32人の大人数だった。
子供が8人、小さい子から高学年くらいの子供達だ。棟梁やベテラン大工さんの子供達はとっくに成人して家を出てるらしい。
若い2人は彼女連れで、中堅の1人は新婚さんだった。2人兄弟、2人姉弟、3人兄妹妹、一人っ子男子の4組の子供達だった。ちなみに一人っ子のところは下の子妊娠中で、2人兄弟の弟はまだ赤ちゃんだった。
上の子もまだ3歳なので、お母さんはウッドデッキに腰かけて上の子を見つつ赤ちゃんを抱っこしていた。
バウンサーを出して赤ちゃんを寝せてみると、ゆらゆら揺られてそのうち眠ったようだ。
あとで是非とも抱っこさせて欲しいところだ。赤ちゃん可愛すぎる。まだ少し早いので子供達と遊ぶことにした。
3歳の子を膝に乗せ、簡単な折り紙を教えてあげるとみんな喜んで真似して折りだした。
女の子達はさすが器用と言うか要領がいいと言うか、自分達で本を見て上手に折っていた。
男の子達には紙飛行機を教えると、喜んでお父さんと遊んでいた。3歳児は甘えん坊で膝から降りずに可愛かった。自然と近くにいるお母さんと話していると、お母さんが不思議そうな顔で尋ねてきた。
「あ、あの……もしかして麻衣さんって、田中麻衣ちゃんじゃないよね……?」
「え!?そうだけど……こっちに知り合いいないはずだけどな?」
フルネームを知られていて驚いた!
「ああやっぱり!私の前世、鈴木祥子って言うの!中学の時少しだけ同級生だったんだけど覚えてないかな?」
ええ!?なんとこんなところに日本の知り合いが?でも、鈴木さんね~……う~ん……ピンと来ない。
「3ヶ月しかいなかったし、実質1ヶ月しか学校行けなかったから覚えてないよね……転校して1ヶ月で冬休みになって、その後入院してそのまま引っ越しちゃったんだよね」
「ああ、わかった!誕生日会したよね!?私、今は若返ったけど実際37歳でさ~、学生時代が遠い昔過ぎて名前がパッと出てこなかったよ……ごめ~ん」
名前は忘れてたけどはっきり思い出した!病気の子が転校してきて、確かに薬で浮腫んでたけど元気そうだったのに気付いたらいなかったんだよね!
「覚えててくれたんだ!そうなんだよね、転校したばかりで誕生日会に呼べるような友達もいなかったし、今までだって入院してたりで誕生日会なんてしたこと無かったの。
だからいきなりケーキ持って家に来てくれて……本当にビックリしたし、嬉しかったんだ。
前の学校では病気の事でいじめられてたからさ……ほら、顔とかパンパンだったでしょう?
だからまたいついじめられるかと怖かったんだけど、まさかのケーキ持って4人も来てくれて……お母さんも泣いて喜んでた。
冬休み中に体調壊して入院してさ、大きな別の市にある病院に転院になって家も引っ越して転校になったけど、結局そのまま退院すること無く春先にね……
入院中よくお母さんとあの誕生日会の話をしたんだよ~。楽しかったね、嬉しかったねって。
心配かけたくなくて入院の事も黙ってて貰ったの。家にも来てくれたんでしょう?お祖母ちゃんが言ってた。あそこお祖母ちゃんの家だったんだ。
引っ越したって言ったら驚いて、後日手紙をくれたよね。誕生日会楽しかったね。転校先でもいいお友達が出来るといいねって……また遊びたかったなって……本当嬉しくて励みになったんだよ。
返事書けなくてごめんね?私ね、あの時のケーキが忘れきれなくて、結婚する前はお城の厨房でデザート担当してたんだよ!また食べたいな~……」
うん、覚えてる!田舎だから転校してきた子が気になって気になって、誰かが誕生日を聞いたらすぐだったからケーキ持って押し掛けてサプライズパーティーしようってなったんだよね。
普通に考えれば迷惑だよね~……中1だったんだけど、ケーキ屋さんに入ったらホールケーキが高くてビックリよ!
予算オーバーで途方に暮れてたら横に手頃な値段のロールケーキがあって、まじで救われたんだよね~。
ロールケーキと各自家から持参したスナック菓子やチョコを持ってアポ無し訪問で無理矢理パーティー……ああ、昔の私何やってんの!
結果喜んでくれてたからいいけど……優しいお母さんでよかったよ。
「違うお店のだけど、ロールケーキ食べる?何故か私、日本のお店からお取り寄せ出来るんだよね~。
ほら、これだけ種類あるよ!あ、ロールケーキはお土産でお持ち帰りして、他の食べる?」
「ええ、凄い!……うん、でもやっぱりロールケーキが食べたいな」




