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昨夜は、結構いい時間になったので、みんなと一緒にハンスが出たのを確認して、しっかり門に鍵を閉めた。婚前交渉、絶対ダメ!
離れにバリア魔石を取り付けて、タチアナと私以外は入れないようにした。
「おはようございます。あの、このズボンは見た目動きにくそうなのに、伸縮性があって動きやすいんですね!しかも生地は丈夫そうですし、何よりこの靴!
何ですかこの履き心地のよさに、歩きやすさは!軽いし、走りやすいです!靴下も、こんな履き心地がいいのは初めてです!
髪紐も、伸びるから結びやすくてビックリしました!」
離れの前で待っていたタチアナは、昨日着替えにと渡したスキニーデニムがお気に召したようで、目をキラキラさせて熱く語りだした。スニーカーに靴下も気に入ったらしい。
髪ゴム……やっぱり売れそうだね!男性用に、シンプルな黒だけのもって思ったけど、転売になっちゃうから何か加工しなきゃなんだよね~。シンプルなデザインのも一応作りはしたけど……どうなのかな~?
「いや、走る必要はないからね?普通にお店で働くだけだからね?ふふふ、今日は私もお揃いだよ~!この上に可愛いエプロンと帽子をかぶった制服にしようかなと思って」
チュニック丈のカットソーで太ももの真ん中まで隠れるからか、渋々ライアンもスキニーデニムを許可してくれたのだ。
ちなみに、同じデザインで同じサイズのカットソーをタチアナも着ているのだが、タチアナはギリギリお尻が隠れる丈になっていた。
まあ、身長差が20cmありますからね……何だろう、この虚しさは……
タチアナは普段からズボン派なので、足のラインが出るのも、特に気にならないらしい。
逆に、みんなが着ているようなワンピースは、恥ずかしすぎて外に出れないそうだ……年に1度の王宮舞踏会も、ハンスに会えると言うことだけを考えて、羞恥に耐えていたのだとか……
「じゃあ行こうかな?タチアナさんは何で行きますか?私のトライクの後ろに乗ってもいいし、ライアンみたいに自転車もありますよ」
「あ、あの、じゃあハンス様も乗っていたので、自転車で……」
か、可愛い!ほっぺを真っ赤にして照れてるかっこいい系美少女……尊いわ~!美少女と言うべきか……美女と言うべきか……18歳らしいけど、どっちかな?
ミーナさんが色気むんむんの美女だから、なんか美女って言うとしっくり来ないんだよね~。まあいいけど。
「せっかくなので、ハンスとお揃いにしますね。くふふ
初めてだと、バランスを取るのが難しいので気を付けてください」
おお、全然余裕ですいすい乗ってる……
「あのな、麻衣……俺達は無意識に魔法を使って生活しているんだ。この自転車だってそうだぞ。転ばないように、風魔法でバランスを取ったりしているんだ。
昨日バスケするために魔法制御の魔石をつけただろう?その後、うっかりそのまま自転車に乗って帰ろうとして気付いたんだ。
すぐに慣れたが、魔法を使わずにバランスを取るのは、中々難しいんだな」
「あ、そうだったんだ。なんかみんな腹が立つほどあっさり乗るから嫉妬してたんだよね~。ほら、私いくら練習しても乗れないし……何でだろうね?でも、このデニムなら行けそうな気がする!
絶対いつものアラジンパンツがダメだったんだよ!車輪に巻き込まないか、怖くて恐る恐る乗ってたから変に力が入ってたんだと思う!
ってことで、私のママチャリ出してみて~」
結果は……惨敗だった。何故だ?何故乗れないんだ?補助輪つける?ってさすがに恥ずかしいから無理!
仕方無いので、いつものトライクで行くことにした。
「タチアナ、おはよう。よく眠れた?その服装も似合ってるね」
朝から無駄に爽やかなハンスが、門の前で待ち構えていた。
「おはようございます、ハンス様……旅の疲れなのか、ハンス様にお会いできてほっとしたのか、ぐっすりでした……
昨日書いた手紙と一緒に、1人になってからアイスの事や、勇者様ご夫妻の事などを書いた手紙を追加で入れたんですけど、配送屋はどこかご存知ですか?」
「ああ、それなら俺が後で出してくるよ。タチアナは明日の仕事の事を、色々聞いて練習しなきゃだろう?
オーナー、今から行けば今日の発送に間に合うんで、行ってきてもいいですか?」
「いいよ~、ハンスはあまりすること無いしね~。帰ってきたら声かけて。映画館の受付の話し合いを少ししときたいから」
いつものメンバーで出発すると、タチアナはミーナさんと何故かサマンサさんを乗せたサミー号が気になるようで、色々聞いて来た。
「あれはなんですか?すごくいいですね!馬車を出すのは色々準備が大変なんですけど、あれだとすぐ乗れて便利そうです!
農民なんかにもいいですよね。うちの領は農家と樵が多いんですけど、移動が馬車だと馬のお世話に馬車の整備などが大変で、遠い畑に行くのも歩きなんですよね。
でも、子供がいると結構大変で……途中で魔獣に出くわしても、走って逃げるしか無いんですよね。
でもあれは凄くいいですよね!この自転車もいいし……いくらくらいするんですか?私にも買えますか?」
おおう、凄い熱量だ……確かに、馬を飼う時点で余計な仕事が増えちゃうから、それなら歩きでいいやってなっちゃうよね~。
魔獣に追いかけられて、まけるかな?まあ、走るよりは逃げれる確率が上がるか?
「う~ん、売るのはいいんですけど、転売できないから少し考えますね。
でも、売ったとして、どうやって領まで運ぶんですか?今の感じだと、1台2台の話じゃないですよね?」
「大丈夫です!私Aランクの冒険者なんで、アイテムボックスが結構広いんですよ。昨日お借りした離れくらいのサイズはありますので、結構持っていけると思います!ちなみに父はもっと広いです!」
あ、そうなんだ。結構広いんだね~……それって他にも使えそうだよね……例えば、ハンスと一緒に出張に行った先で映画を上映する為の一式を持っていくとか……
王都から離れたところの人達にも見せたいなって思ってたんだよね~。いけそうな気がする!




