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 8日後のプレオープンに向けて、どれだけ作れるか分からないけど、私達は作りまくった。

 ミーナさんはビーズを編むのは得意だったが、カンやピンやペンチを使うのは苦手で、そっち系のは諦めるかな~と思っていたプレオープンまであと5日となった日の朝、奇跡が起こった。

 レジンアクセにはまりまくった私は、Lサイズのフォトフレームを作ったので写真屋さんに見せに行った。

 それを見た、元雑貨屋のおじちゃんが食いついて、作り方が知りたいと言うことで魔女のお店に招いた。

 その時、気になったはずのレジンは作り方を見て微妙だったらしく、逆にその辺にほたってあったビーズアクセの本に食いつきまくったのだ。

 材料も揃っていたので試しに作って貰うと、さすが元プロ!めちゃくちゃ上手かった!


 そこからはとんとん拍子に話が進み、材料は渡すから、制作費は難易度によって小銅貨3~15枚でまとまった。

 もちろん、本に載ってる以上の凄い物を作ってきたらさらに上がる予定だが、とりあえず本に載ってる分だとこのくらいかな?って感じだそうだ。

 あまり販売価格を上げすぎて、売れなくても困るしね。デザインは本をパクって最初の頃は作っていたが、すぐに写真屋さんの他のスタッフが食いついて、あれこれ提案してくれるようになったらしい。

 センスのいいスタッフが揃っているから、どんどんおしゃれな作品が出来上がっている。

 ちなみに製作場所は写真屋さんでしている。オープンしたら出来ないけど、今はヘアメイク等の練習期間なので、おじちゃんは基本的に暇らしい……

 私の作ったレジンパーツも使って貰ったり、ミーナさんの編んだビーズのパーツ等も使って、コラボ商品も作っている。

 製作3日目ですごい進化だ!おじちゃん……何気に写真も上手いし手先も器用で、めっちゃいい人材なんじゃなかろうか……


 そんなこんなでプレオープンまであと2日となった今日、事件が起こった……と言うか、事件の予感?


「あ、どうもお久しぶりです……ハンスに客が来てまして……ハンスはいますでしょうか?」


 何だか疲れた様子のゼニー子爵が訪ねてきた。ハンスにお客様?何だか胸がざわざわする……


「あ、写真屋さんの方にいますので、呼んできますね」


 ハンスを呼んでくると、馬車から人が飛び出してきて、勢いよくハンスに抱きついた。


「ハンス様!お会いしたかったです!」


 声からして女性のようだが、服装は今まで見た女性達と違って冒険者風で、背も高くておそらく服の中は素晴らしい筋肉が付いていそうな感じがした。

 1番近いのは、建築作業を手伝いに来ている女性騎士かな。


「タチアナ!な、何故ここに!?結婚するのでは無かったのか?」


「その予定でしたが……どうしてもハンス様が忘れられず……」


「っな……!?男爵家は?こんなところまで来て……大丈夫なのか?」


「大丈夫です!勘当してくれと手紙を残してきました!それに、新しい婚約者は私より妹の方がよかったらしく、妹も一目惚れだったようで、婚約者を譲ってくれと言われました。

 3人で相手の家に事情を説明しに行くと、男爵家の当主になると言うことであれば、妹でも姉でもどちらでもいいと言うことでしたので、時期当主の座を妹に譲り、家を飛び出してきました!

 この1年私がうじうじ悩んでいたのを知っていたので、妹が背中を押してくれた感じです」


 あ、ヤバい!人が集まってきた!


「と、とりあえずこっちで話しましょう!皆さんは仕事に戻ってくださいね~!」


 とりあえずミーナさんのお店の休憩室でいいかな?狭いか……あ、まだ使ってない2階に行こうかな。家具は出してあるから、テーブルと椅子はあるんだよね。

 とりあえず座ってお茶を出そうかな……って何故この席順?ハンスとタチアナさんが隣同士に座り、向かいにゼニー子爵……私はどこに?

 とりあえずお誕生日席に椅子を移動して座ることにした。司会者的な感じでね……暑いから冷たい紅茶でも……


「えっと……とりあえずハンスの元婚約者さんと言うことでいいのかな?私はハンスの雇い主で、勇者ライアンの妻の麻衣です」


「ハンス様の雇い主様でしたか!挨拶が遅れて失礼しました!ご想像の通り、ハンス様の元婚約者のタチアナと言います。

 実家とは縁を切ってきましたので、家名は無くただのタチアナです」


 立ってお辞儀をする姿は、やはり貴族のご令嬢と言うよりは冒険者のようだった。ナチュラルにかっこいい。


「それで……タチアナはこれからどうするんだ?」


「冒険者になろうと思っています!ハンス様の1番大変な時に側にいれないどころか婚約を解消して……ずっと心に引っ掛かっていたのです。

 例え父が止めようと、ハンス様に会いに行けばよかったと後悔ばかりで……」


 ハンスの問いに、タチアナは俯いて答えた。


「いや、男爵家の当主となる婿を取らなくてはいけなかったんだ……タチアナは何も悪くないよ。それにしてもあのアリアナが結婚か……最後に会った時はまだこんなに小さかったのにな……」


「あの時はまだ貴族学院に入る前でしたからね。この春無事に卒業して戻ってきましたが、女らしく成長していて驚きました。

 結婚する予定だった男爵家の次男も、女らしくない私より可憐な妹に心奪われたようです……ですが、悲しいどころかホッとする自分がいて……

 自分が男爵家を継いで領民を守らなければと思っていましたが……いつの間にか妹も大きくなって……私が継ぐからお姉ちゃんは自由になっていいよって……ううう

 それでも妹が望まぬ結婚をするくらいならと思っていましたが、2人が恋仲になったので心置き無く出てくることが出来ました」


 なるほどね……長女だけあって、責任感が強い子なんだな~。きっと逞しいのも、領民と一緒に魔物と戦うために鍛えたんだろう……いい子だ。

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