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高校中退から始まる探索者生活  作者: 聖花 シヅク
借金苦の生活は嫌なので探索者になろうと思います
8/13

ヒーローはやってきました→クランに入ります

皆さんおはようございます

特筆して書くこともないため、このまま本文へ行かせていただきます


では、『第8話』お楽しみください


「おかえり」

「おう」

「何の用事だった?」

「クランに誘われた」

地平の蒼穹(イーグル・ホライズン)に?」

「ああ。その話を受けたよ。自身の実力を上げるのに、明確な目標がいるのは有難いからな」

「ん。いいと思う。あそこは比較的アットホームなクラン。メンバーも50人もいないらしい。男女比も2:3くらいで女性の方が多いくらいだと思う」

「まあ、男女比は別にいいけど、実力差が大きいのが少しな。追いつく気でいるけど、どれだけかかるか‥‥」

「私は、3年でこのレベルにまでなった。学校に通いながらだったから時間がかかったけど、珱霞は学校どうするの?」

「ああ、入ってないよ。とは言っても、4日前に辞めたんだけどな。親が借金残して夜逃げしたから、取り敢えずアパートの代金と学校の月謝だけは払おうと思っている。あとは、家を探さないとな…まあ、この話は皇さんには関係ないな」

「年齢は?」

「16」

「2つしか変わらなかったんだ‥‥これ、私の連絡先。何かあったら連絡してくれていい」


 皇が紙に何かを書いたかと思うと、珱霞に手渡ししてきた。

 書いてあったのは、電話番号とLinkの番号だった。珱霞はスマホを取り出し番号を打ち込んだ。そして、名前と写真を見て噴き出した。


「どうしたの?」

「しゃ、写真と名前。意外と、可愛らしいの使っているんだ」


 伽耶をカタカナで書き、その両端をハートで囲っていた。写真には可愛らしいアニメキャラクターが使われていた。なお、何のキャラクターかは分からなかった。


「何か変?」

「いや、普段無表情なんで、ちょっとこれは‥‥」

「む」

「いや、すみません」

「まあ、いつも言われていることだから、別にいい。慣れている」


 学校でも何度か言われたことなのだろう。珱霞の場合は、名前はそのままに写真はネットから引っ張て来た猫の写真を使っている。珱霞はどちらかと言うと猫派だ。まあ今は、この話は置いておく。


「僕は、そろそろ帰りますね。では」


 珱霞が頭を下げて帰ろうとすると、後ろから背中のあたりを掴まれた。


「何ですか?」

「私をここに置いて帰るつもり?」

「帰りはタクシーでいいじゃないですか。絶対に僕の自転車で一緒に変えるより、何十倍も安全ですよ」

「ああ。タクシーがあったか。分かった。じゃあ、またね」


 皇はそう言い残すと、どこかに電話をかけながら珱霞の前から去っていった。


「名前訊くの忘れたから教えるにゃ」

「!?毎度毎度、突然後ろに現れるのやめてください。心臓に悪いです」

「どうでもいいにゃ。名前、早く教えるにゃ」

「はあ、夜冥珱霞です。夜に冥界の冥で夜冥。桜の木を王にして、霞と書いて珱霞です」

「夜冥珱霞。夜の暗闇に首飾り、それが霞むのかにゃ?変な名前だにゃ」

(あんたのしゃべり方ほどじゃないよな。それに、親が親だからな)

「それは、どうでもいいだろ。他には用事あるのか?」

「これ、クランの事務所の場所だにゃ。明後日、忘れずに来るんだにゃ」

「わかった。連絡ありがとな」


 探索者同士は基本的には敬語は使わない。相手になめられたらいけないからだ。とは言え、クランの内部では敬語が使われることもあるらしいが、珱霞は時と場合に応じて使い分けるつもりでいた。


「にゃ。じゃあ、またにゃ」


 最後まで独特な喋り方をやめないまま、彼女は帰っていった。


「じゃあ、僕はこれで」

「ん。また、機会があったら」

「ええ。では」


 珱霞は、皇に別れを告げ家へと帰っていった。




翌日


「次!」


 珱霞は迷宮を移動し、牛久迷宮へと来ていた。

 実際の所、珱霞の住んでいる場所は牛久市の近くでつくば市の南の方だったので、今までよりも圧倒的に時間に余裕をもって出かける事が出来ている。

 その代わり、牛久市の周辺には協会が無いので、物を売るときには行方市(なめがたし)にある協会にまで行かなければならない。

 その時に1時間ほどかかるので、これからは1日から2日おきにしか行けなくなるだろう。


 クラン“地平の蒼穹(イーグル・ホライズン)”の事務所がある場所は神栖市で、その中でも最も南にある埋め立て地にあるらしい。それと言うのも、迷宮が出来てしばらく経った後に、クランで神栖市の中でも南も南。なおかつ港のあたりを買い取ったらしい。

 出来る限り生態系に影響を与えないように気を付けて、魔法で埋め立てをした場所に事務所を建設したらしい。

 実際の所どうなのかは分からないが、調べたら聖女様が良いところのお嬢様だという事が分かった。クランへの出資者は花城グループで、現在の社長が聖女様のお爺様らしい。

 彼女のお母さんが花城グループの社長で、有権者と政略結婚のような形で結婚したらしいのだが、普通に結婚した家よりも夫婦仲は円満の様だ。


 そこら辺の話は置いておくとして、花城グループの社長がお爺様だという事は、それ相応に聖女様もお嬢様として生まれたはずだ。それに加えあの美貌。なぜ探索者となる道を選んだのか、全く持って理解できない。金持ちには金持ちなりの苦労があるのだろうが、金の無い大貧民代表格の珱霞には全く理解できなかった。


 今日は5階層で帰るとしよう。そう考えたのが今朝起きたばかりの頃だ。

 珱霞が今いるのは、牛久迷宮の2層。時間は10時前なのでまだまだあるが、明日のこともあるので今日は16時には上がるつもりでいる。

 あと少しで3層へは辿り着くので、かかるとしても15時には終わる計算でいる。


「よし、行くか」


 少しの休憩を終えた珱霞は、片手に短剣を持ち動き出した。

 珱霞の昨日買ったばかりの片手剣は、昨日の戦闘で所々にひびが入りいつ折れてもおかしくないような状態になっていた。

 2万近くした片手剣が、たったの一晩で使えなくなってしまった事は悲しく思うが、昨日の戦闘の後いくらかお金が振り込まれたようだ。まだ確認していないので、どれだけ入ったのかは分からないが、皇が言っていたのでそれだけは確かである。


 牛久迷宮はEランクの迷宮であるが、その中でも上位に属していて、Dランクになっていてもおかしくはなかったらしい。ならなかった理由は、ボスの種類が理由だそうだが、何がボスであるかは調べていないので良く分かっていない。

 今のところ出てきた魔物は、“ホーンラビット”と“ホブゴブリン”、そして“ウルフ”だけだ。

 すべて魔物のランクは同じだが、ウルフがこの中では特に強くなっている。理由は素早さの様だが、珱霞の前では素早さは無意味に変わっていた。珱霞の目は特別性だ。勿論、作られたものだと言っているのではない。

 周囲を見通せる俯瞰の力。距離感を見極める、位置を知るための深視力。そして、常軌を逸した動体視力。珱霞はこの三つを使いこなしている。誰にでも出来るような事では無いからこそ、珱霞の特殊な能力となっている。


 勿論、ウルフを倒すのに必要なものが視力なのではない。

 ステータスで圧倒的に劣る珱霞は、普通であれば一方的にやられるだけなのだ。しかし、その目があるからこそ、珱霞はウルフの攻撃についていくことができ、尚且つ勝てているのだ。




 それから4時間ほどが経ち、珱霞は迷宮を5階層まで辿り着くことができた。

 ここまでで大きな怪我もなく、あったとしてもかすり傷程度だ。


「さて、あと残すはボスだけだな」


 珱霞はそんなことを呟きつつ、ボス部屋の扉に手をかけた。

 そして、力を入れて押していく。一昔前の扉を開けているかのように錆びた鉄どうしがこすれあうような不快音を鳴らしつつ、扉はゆっくりと開いていった。


「ボスは‥‥ゴブリンナイトか」


【ゴブリンナイト:レベル18】

ゴブリンソーダ―の完全上位互換で、剣の技術が上がり力と防御力のステータスが高くなっている

ランクはEの中でも中位の実力を持つ

装備している剣はソーダ―の頃と変わっていないようだ


 最後の一文は正直どうでもよかったが、ソーダ―の使っていた剣はかなりさびていたように思える。

 下手な武器で攻撃されるよりも辛いが、攻撃をうけなければ、武器の種類など問題にはならない。


(ステータス差はそこまで大きくは無さそうかな。Eランクのレベル18なら、平均的なステータスの人間で8から13位の間だったよな)


 Eランクだと大体10から5レベル程弱くなると言われている。Fランクならば10以上だ。とは言え、大体の目安であって、実際の所どれほど差があるのか分かっていない。


(行くか)


 珱霞は、ゴブリンナイトへ向かって駆けだした。

 ゴブリンナイトの装備は、牛の皮か何かで出来ているような革の胸当てと、頭に申し訳程度に乗っかっている防災頭巾に銅を詰め込んだような何かだ。

 珱霞の今のレベルは12なので、適正レベルよりも少しばかし下だが、珱霞のステータスは平均よりも高いので問題ない。


「グギャ!」


 珱霞に対抗するようにゴブリンナイトも駆け出すが、スピードでは圧倒的に劣っている。レベルの分ソーダ―よりは上の様だが、スピードに関してはそこまで変わっていないようだ。

 珱霞は一度スピードを落とし体を起こす。そして次の瞬間、珱霞は前傾姿勢になり一気に駆けだした。


「グギャ⁉」


 ゴブリンからは珱霞の姿が消えたように見えたはずだ。スピードの暖急に加え珱霞の高目な身長での高さの変化はかなり大きなものだったはずだ。さらに言えば、ゴブリンの身長は120程度。50以上上を見上げていたゴブリンだが、珱霞は実際のゴブリンの視線と同じ程度の高さにまで頭を下げていた。

 その差は大きく、ゴブリンは珱霞を見失った。

 そして、気付くのは攻撃を受けてからだった。


■■■■■


 腕を断つように剣を振るった珱霞だったが、全速力で駆け出した状態のまま攻撃に切り替えるのに少し体勢を崩したのと、ステータス差の暴力で手首を少し切り裂くだけに終わった。

 それでもリストカットした時程度には切れていると思う。ゴブリンに出血死と言う死因があるのかは分からないが、それでも体力は削れているだろう。

 とは言え、これでもまだまだ、安心できるようなレベルではない。スピードだけで考えるのであれば自身の方が優れていることがこれで理解できた。


「次」


 珱霞は再び駆け出し、ゴブリンの背後へと回り込んだ。

 そのまま一気に振り向き首へ狙いを定め、剣を突き出した。が、ゴブリンが珱霞を探す様に首を振ったことで狙がズレ、薄皮を削るだけで終わった。

 一度目は重傷を避け、二度目は致命傷を避ける。運のいいゴブリンだ。正確にはゴブリンナイトだが、それはどうでもいい。実力で劣っている魔物である時点で運は悪いのだろうが、戦闘での運とは関係ないだろう。


「チッ。次」


 今度は正面から斬りかかり、ゴブリンへ攻撃をあてていく。

 手に持った剣で応戦してくるゴブリンだが、ナイトと名前にある割には弱すぎる。身長が小さいのもあるのだろうが、それ以前の問題だ。構えからして素人丸出しである。

 珱霞も素人だが、動画を見て基本は抑えてある。普通は動画を一度や二度見ただけで出来るようにはならないが、そこは珱霞クオリティー。気にしてはならない。


「これで終わりだ!」


 珱霞はゴブリンの首へと剣を振りおろし、ゴブリンを殺した。


■■■■■

Side.深芭


「珱霞さんは明日来てくださるでしょうか?」

「来ると思いますよ。彼が入ると言って時に、嘘の反応はありませんでしたから」


 嘘の反応と言うのも、彼のスキル“嘘を見抜く者(ダウト)”の効果だ。相手のウソを見抜く効果があり、表面上を繕ったとしても通用しない。この能力を持っているために警察の方にも引っ張りだこだったが、最終的に深芭の秘書として収まった。

 元々、久良の両親が深芭の爺さんの世話係などをやっていたので、そのまま年の近い彼女の世話係となった形だ。


「そうは言うけれど、彼がその時はどちらとも取れない気持ちで言っていたかもしれないでしょう」


 彼のスキルは、あくまでも嘘の有無を調べるだけだ。それが本気で本当だと思っていたのならば、それが事実と違っていたとしてもそれが事実(本当)になる。また、中途半端な気持ちで了承していた場合には、それが嘘かどうか分からないという欠点もある。

 彼のスキルはあくまで、嘘の有無を調べる能力でしかないのだ。


「そうでしょうけど、彼にはここに来ないメリットがありませんよ。彼はどちらかと言うとメリット、デメリットで動くタイプの人間です。彼のことを調べた結果、彼の両親にはかなりの額の借金があることが分かりました。また、彼の稼いだお金も持って、夜逃げをしたようです。そのため、彼は滞納していた学校の授業料と、アパートの料金を払うために探索者となっています」


 珱霞のことを調べることは、大企業の人間にとって難しい事では無かった。正確には久良は企業の人間ではないが、その企業のトップが、孫に変な虫が近づかないように調べれば、簡単に珱霞の情報など集まった。また、彼の両親の現在の居場所もわかっているが、それは今、関係がないので話していない。


「そのため、より効率的に稼げるようになるであろう、私達のギルドへの参加を断る理由がないのですよ。まあ、それが無かったとしても、彼はあなたのお爺様の企業に追われる可能性と言うデメリットを考え、こちらへ入られたと思いますけどね」

「私はそんなことたの「あなたがいくら言ったとしても、お爺様が止まるとは限りませんよ」むぅ~」


 深芭はプクー、と頬を膨らますが可愛らしいだけで一切怖さを感じない。

 昔から一緒である久良と二人きりだからしていることだが、かなり気を許していると言えよう。とは言え、2人の間にある距離感は、恋人の物と言うよりは親子、とまではいかなくとも、兄妹のようなものだ。


「またそんなに膨れて。全然怖くないですからね」


 そう言いながら彼女の頬を軽く指でつつく。そんなことをするのも、出来るのも今は彼と親類くらいの物だろう。距離感と言う問題も、周りの目と言う問題もあるのだ。


「では、明日の準備をしましょうか。歓迎会をするのでしょう?」

「ええ!新しいメンバーが加わったのよ!目一杯祝わないといけないわ!」


 彼女は子供のような明るい笑顔で、声高らかにそう言った。


最後までお読みいただき有難うございました


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