異常が発生しました→ヒーローは遅れてやってくるものです
皆さんおはようございます
昨日は1日中家にこもって、扇風機に当たりながら小説を書いたり読書をしながらゲームをやっていました
SAOABの集会も地味に大変でしたが、放っておいたら意外と直ぐに終わるものですね
以前は途中でスリープモードになってしまっていたのですが、今は改善されたようです
では、世間話もそこそこにして、次回の投稿は明日7時です
では、『第7話』お楽しみください
「今のは⁉」
「ボス、だと思う」
「行きますか?」
「当然!」
珱霞と皇は迷宮の入口へ向かって駆けだした。
1分とかからずに入口へと辿り着くと、そこにはけが人の山が積み重なっていた。
Bランクの人たちのおかげで何とか戦線を保っているようだが、威力が足りていない。どこからどう見ても実力不足だ。
「皇さん」
「ん。手伝う」
珱霞はその言葉を訊き、前線へと入っていく。
「手伝います」
「君は?」
「Dランク冒険者の夜冥です。ダメージソースとしては関われませんけど、受け流すくらいなら何とかできます。あと、もう一人Aランクの冒険者がいます。あと、支部長が他のAランク冒険者に救援を要請したといっていました」
「本当かい?でも、Dランクでは危ないぞ」
「大丈夫です。弱者の戦い方は分かっていますから」
「君がそれでいいならいいのだが、無理はするなよ」
「御心配ありがとうございます。では、戦闘に入ります」
珱霞は一気に加速して真っ赤な毛並みを持ち、2足歩行している狼の後ろに回り込む。
これが支部長の言っていた“血濡れの半狼”なのだろう。
「“鑑定”」
【ブラッディ・ワーウルフ:レベル124】
狼系の上位種
高い攻撃力と防御力を持ち、回復能力も高い
従来のウルフと違い二足歩行で行動する
ただし、怒り状態になった時に限り、四足歩行で攻撃してくる
※魔法攻撃を使用できない
(レベルは僕よりも100以上高い。ステータスは分からないけど、ホブゴブリンの6倍でない事だけは確かだ。魔法が使えない、か。情報は共有しないとな)
「敵は魔法を使えません!近距離主体です!」
「助かった!」
魔法の有無が分かるだけでも戦略は大きく変わってくるだろう。
ステータスだけで勝つことは出来ないのだ。特に後衛の人は、いつ来るのかも分からない魔法攻撃におびえながら攻撃することになるので、威力は多少なりとも減少することになる。
その点、魔法攻撃が無いのが分かれば、攻撃に積極性が出てくるので戦闘も多少は楽になる。
珱霞も戦闘に混ざり、“血濡れの半狼”の攻撃をいなしていく。
攻撃力もあるが、それ以上に攻撃の速度が速いことがとても厄介だ。攻撃の威力だけならばいなすだけで楽だが、速度があるとそれに対応するだけでも難しくなってくる。今の所、ひきつけて攻撃の衝撃を逃がすようにしているが、10分も持たないだろう。
「下がれ!少し変わろう!」
「ありがとうございます!」
楯使いの人が盾役を変わってくれる。レベルの低い珱霞がやるよりも安定感がある。まあ、レベル以前に攻撃役か防御役かの違いもあるだろうが、経験の差も大きいだろう。
「珱霞、大丈夫?」
「ええ。大丈夫です。衝撃は逃がせていたので、疲れはあまり溜まっていないです。ただ、決定打となる攻撃は当てられませんね。表皮が固すぎます。皇さんはどうですか?」
「私も攻撃が通る気がしない。あの魔物、火属性耐性が高い。風属性は硬くてあまりダメージが通らないから、私もダメージは期待できないと思う」
「となると、救援を待つしかありませんね。どの位かかるのでしょうか?」
「近くにいるかどうかにもよる。ここら辺だと、“勇者”、“聖女”、“騎士王”の所属するクランが来ると思う。けど、何処が今いるのか分からないから‥‥」
「つまり、どれだけかかるかは分からないという事ですか。あいつ、回復能力も高いみたいなので、長期戦はこちらが不利ですよ」
「分かってる。でも、耐えるしかない。ここが突破されたら、民間人にも被害が及ぶ」
あまり考えていなかったが、民間人はこの周辺にも住んでいるのだ。逃げている人も多いだろうが、老人や体が不自由な人は逃げるのにも時間がかかるだろう。
もう1時間以上過ぎているので、十分逃げられているとは思うが、交通渋滞が起こっている可能性もあるし、帰る家が無くなっていたら困るだろう。
「じゃあ、頑張るしかないですね」
「ん。頑張る」
珱霞は体力が戻ると、再び戦線に加わった。
体力が減ってきたら別の人と交換して‥‥それを繰り返して、2時間ほどが過ぎた。
■■■■■
Side???
「ねぇねぇ。あの子、動きおかしくない?あれだけ攻撃をいなしているし、他の人に比べてもいい動きしているのに‥‥動きが遅いよ」
「レベルが低いのでは?動きの良さとレベルは比例しませんからね」
「それでも、動きが良すぎるように感じるな。特に、あの動き出しだ。一瞬でトップスピードまで持ってきている。あれが出来るのは一握りの天才くらいだろう」
「剣を使っているようだが、どんどん動きが滑らかになってきているように見える。普通はパフォーマンスが落ちてきてもおかしくない頃合いだ」
「ニャー。あいつ、クランに誘うのかにゃ?」
「何を言っているのですか?クランに入れるのはBランク以上だけで」
「おみゃーこそ何を言っているにゃ?クランに入れるのは一定以上の才能が認められた時にゃ。勝手に下のやつらがBランク以上だけとか騒いでいるだけだにゃ」
「そうですね…一応誘ってみるとしましょうか。それでは、参りましょうか。私達は彼らを助けるためにここへ来たのですから」
そのパーティのリーダーと思わしき女性は、メンバーを引き連れて駆け出した。
■■■■■
Side珱霞
「皆さん、下がってください。ここからは私達が引き受けます」
ソプラノの声が響き渡り、一人一人と後ろへと下がっていく。
そして最後に珱霞も下がっていった。
「お願いします」
「ええ。お願いされました。“治癒”」
「ありがとうございます」
「いえいえ、到着が遅れて申し訳ございませんでした。幸い、大怪我をした人も出ていないようで良かったです。では」
「はい」
珱霞は治癒をかけてくれた相手と会話を交わした後、皇のもとにまで下がっていった。
「あの人たちは?」
「聖女のクラン。Aランククラン筆頭で、日本ではSランクに最も近いと言われている。特にあの7人。聖女が率いているトップパーティは別格。聖女は世界ランキング9位のSランク。回復役だけど、Aランクの攻撃役にも勝るレベルだと言われている」
「あのパーティが日本最強、か。じゃあ、見て学ばないとな。こんな機会は早々ないだろうし」
「ん。一応説明しておく。さっき珱霞が話していたのが、あの“真紅の薔薇”のリーダーで、聖女の深芭・リオナ・ブランフィード。“棍棒使い”の称号をもち“聖女”と呼ばれる、世界最強の“回復役”。ハーフらしい」
本来後衛にいる回復役がパーティ最強の攻撃役か。かなり特殊なパーティなんだろうな。
「次に、素手で戦っているのが猫宮夜々。“戦う猫”と呼ばれている。Aランクで、ランク帯では最強格の“格闘家”。次に、あそこで魔法を使っているのが、白波淳。“七色の魔術師”の称号を持つ、基本属性を全て使える珱霞をのぞいたら規格外の魔法使い」
「僕をのぞいたら、という所が少し気になるが、まあいい。続けてくれ」
「盾で攻撃をいなしているのが、白波櫂。白波淳とは双子で、“絶壁”と呼ばれる。騎士王を除いたら日本最強の騎士だと言われている。次に、剣を使っているのが空葉進登。“剣使い”と呼ばれている。日本でもトップクラスの剣士。今後ろに回り込んだのが久良羽斗。“侵略者”と呼ばれるシーカー」
シーカーなのにインベーダー?シーカーはどちらかと言うと、潜んでいる方じゃないのか?
「最後に、白波淳のさらに後ろにいるのが、茅場凛斗。“指揮者”と呼ばれていて、チームの要である指揮官にして“支援術師”。以上七名」
男4人に女性3人。男女比は同じ位か。
「ついでに言っておくと、男が3人で女が4人だよ」
(・・・?女が4人‥‥絶壁ってそう言う事か?)
白波淳の一部を見た後に、白波櫂の一部を見る。…!!物凄い殺気が飛んできた。
よく見ると凄い女性らしいよな。うん。線も細いし、髪も長い。それに、双子で性別が違う事は早々ないらしいからな。
「あの人たちのレベルはどの位なんですか?」
「さあ?でも、私で300は超えているから、500はいっているだろうね」
レベル500以上であのレベルか。
まだ、目に追えるレベルだな。実力差はあるけど、一生追いつけないレベルではないはずだ。
そして、戦いは10分もかからずに終幕を迎えた。
「これで終わりです!」
聖女のリオナさんが棍で血濡れの半狼を殴り、それが決定打となり血濡れの半狼は死んだ。
「10分もかからないなんて‥‥」
「ん。これがSランクの実力。そして、Aランククラン、筆頭パーティの実力」
珱霞は改めて聖女たちとの実力の違いを実感した。
レベル差だけではない。経験の差も、連携の差も、何もかも珱霞にはマネできるレベルではない。唯一マネできると思ったのは、個人個人の戦い方だが、それだけがマネできたとしても、レベルの高い相手に勝つことは出来ないだろう。
「皆さん、お疲れ様でした。この度は到着が遅れて申し訳ございませんでした」
聖女は、深く頭を下げ謝罪を口にした。
今回は誰も死んでいないし、被害らしき被害も出ていない。
皆口々に聖女をフォローしていった。珱霞はその輪には混ざらなかったが、後ろの方からその様子を眺めていた。
「にゃ~、お前。ちょっと来るにゃ」
「な…!?」
珱霞は背後を簡単にとられたことと、つい先ほどまで聖女の近くにいた、格闘家の戦う猫が、真後ろにいたことに驚いた。
「…何ですか」
「うちのがおみゃーに興味があるらしいにゃ。だから、来るにゃ」
猫宮のしゃべり方には戸惑いつつも、珱霞はそれに応じついていく。
何処に行くのかと考えていると、2時間ほど前に訪れたテントへと辿り着いた。
「ここに用、ですか?」
「にゃ。報告が必要だからにゃ」
「戦闘終了と救援に来たことの連絡ですよ。直接来る必要もなかったのですが、あなたと少しお話がしたかったので、スペースをお借りしようと思いまして」
「僕とお話、ですか?」
「ええ。あなたに少し興味が湧きました。レベルの割に動けて、スキルのレベルも高い。魔法も武器も使えて‥‥まあ、要するにですね。あなたが何者なのか気になったわけです」
珱霞はその言葉の真意を探ろうとするが、彼女の目を見てそれが不可能であることを悟った。彼女の目には、純粋な興味。それに対する好奇心のようなものしか映っていなかった。
「僕が何者か…Dランクの探索者ですよ。まだ3日目なのでレベルも高くないですし、ステータスも勿論低いです。あえて言うなら、高校中退の探索者ですよ」
「そうですか。それが何処まで事実なのか私には分かりませんが、あなたは危険な人物ではなさそうですね」
「まあ、危険ではないと思いますよ」
「ふふふ。では、あなたに提案です。私達のクラン“地平の蒼穹”に来ませんか」
「僕がですか?Aランククランに?」
「ええ。私達のクランへ入る条件は、将来性。ありたいに言えば才能です。レベルは気にしていません。例えば、夜々何かは孤児院でスカウトしてきました。と、まあ、このように、出自は一切気にしません。前科持ちは流石に少し考える必要がありますけどね」
「将来性ですか。僕にそこまで価値があるとは思えませんけどね」
「そうでしょうか?将来性は高いと思いますけどね。武器もうまく使えて、魔法も使える。体力も多く、まだ探索者になったばかり。先程あなたが戦っていた血濡れの半狼はBランクの上位程度の実力はありました。レベルの低いあなたでは戦えるはずもない相手だったはずです。それと戦って、大きな怪我一つしなかった。そうですね、分かりやすい将来性として、適性はいくつ持っていますか?」
「2つだけです。武具と魔法ですね」
「なっ!?貴様!ウソをつくのは止めろ!」
「凛斗、見苦しい真似はよせ。ここで嘘をつく必要性は全くない。それに、それが嘘だった場合には俺が先に動いている」
「くッ…だが、全ての適性を持っているはずなど」
「だが、それが事実だ」
羽斗を凛斗がたしなめ、聖女は何やら考えるような表情をする。
「‥‥さて、話を進めましょうか。あなたに将来性があるのはこれで分かりました。その上でもう一度提案します。私達のクランに入りませんか」
「……」
この話を蹴った時にデメリットと、この話を受けたときのメリットを考える。
メリットはランクの高いクランに入ることで、より強い仲間に師事できるかもしれない事。そして、ランクの高い迷宮に潜れること。
デメリットは‥‥あまりないか?ズルして入ったと思われるくらいか?
「…その話、受けさせていただこうと思います」
「ありがとうございます。では、改めまして。私達、地平の蒼穹はあなたを歓迎します」
最後までお読みいただき有難うございました
また、誤字脱字の報告をしていただき、有難うございました
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