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高校中退から始まる探索者生活  作者: 聖花 シヅク
借金苦の生活は嫌なので探索者になろうと思います
4/13

押しつけ屋を訴えました→迷宮を攻略しました

皆さん、おはようございます

ここ最近は雨続きの毎日に、雷もひどく嫌な天気が続いていることと思います

(関東だけかもしれませんが)

気温や天気の変化が大きいからなのか、気圧の変化が多く体調を崩しやすくなっているかも知れません

皆さんも体調には気を付けてください


※宣伝です

https://book1.adouzi.eu.org/n0748hc/

こちらの作品も読んでいただけると嬉しいです

悪役令嬢物で、デッドエンドを回避するために、悪役令嬢ルートから外れようと主人公が努力を重ねる物語です

その一方で、ヒロインに転生した人は、その真逆に向かって走っていく。そんな物語を書いています


次話の投稿は明後日となります

では、『第4話』お楽しみください


 6階層からは慎重に進み始めた珱霞であったが、道中に魔物があまり出てこないこともあり、進むスピードは歩きと小走り程度の差にしかなっていなかった。


「魔物も出てこないし、このまま進めばあと10分もせずに7層に行けるかな‥‥あ、魔物出てきたか。先手必勝〈水針〉」


 出てきたのはゴブリンで、上層との違いはレベル差だけだ。

 水針でゴブリンの動きを止めた珱霞は、50mほどあった距離を一気に詰め、頭をバットで殴った。

 3回ほど殴ったところでゴブリンは魔石に変わった。


「HPと防御力はかなり上がってるのか。まあ、大きな問題は無さそうだな」


 ゴブリンを倒せたことで、自分の今の実力を再確認した珱霞は少しペースを上げ、10分足らずで7階層へ降りる事が出来た。


「毒沼か?いや、毒はあるけど、沼って程でもないか。靴さえ履いていれば上を通っても問題は無さそうだな」


 7階層は上と同じで洞窟型であったが、途中には毒らしき液体がそこら中に広がっていた。

 最初は沼のようにも見えたが、よく見ると深さはなく水溜りのようなものだった。一応避けてはいるが。わざわざ避けて通るようなものでもなかったようだ。


「毒があるという事はポイズンスライムかな」


【ポイズンスライム:レベル14】

スライムの上位種

魔物ランクはFに属する

毒を使う魔物だが、毒には少しの痺れと数秒程度の毒状態にする効果がある


(まあ、毒を貰い過ぎると危ないから、索敵は怠らないようにしないとな)


 そうそう、何故ここまで真直ぐ進めていたのかと言うと、今までに潜っていた人がマップを作っていたからだ。上位の迷宮だとマップが有料の所も多いが、Eランク以下の迷宮だと無料で配布しているところも多い。

 Eランクまでは一般の人も潜るからな。出来るだけ多くの人に潜ってもらいたいのだろう。


「お、ポイズンスライム発見。〈水針〉トリプル‥‥2発もあればいけそうかな」


 ポイズンスライムもスライムと同様に核が存在する。そこがウィークポイントであり、唯一まともにダメージが通るところだ。他の場所は並大抵の攻撃力ではダメージが通らない。正確に言えば魔法はそこそこ通るが、ダメージは半減される。

 水針は貫通力にたけた魔法なので、スライムの表皮にも負けずに中にある核に届くことができる。


「しばらくは問題ないかな」


■■■■■

Side.白水河凛夏


「何であいつは来ないのよ⁉」

「お嬢様、いくら来いと言われても、彼はバイトを辞めた身なのでここに来る理由はありません。お嬢様の言葉は彼にとっては何も強制力を持たないことになります」


 癇癪を起している凛夏に対して執事長は律義に答える。

 今まで思い通りにならなかったことなど殆どない凛夏にとって、今回珱霞が凛夏の命令を無視したことは耐え難い事だったのだ。勿論、珱霞はそれを理解し、執事や侍女の人たちには迷惑になることは分かったうえで行かなかったし、執事や侍女たちもそれが分かっているので珱霞に対して文句を言う事もなかった。


「あいつをここに連れてきなさい!」

「それは無理でございます。それではただの誘拐になりますので。加えて、彼は探索者になりました。探索者の立場は法律によって守られております」

「そんなのお父様に頼めばどうとでもなるわよ。問題ないわ」

「そして最後に、この屋敷に居るもので、彼を捕まえられるものは誰もおりません。さらに、御当主様より彼には手を出さないことを申し使っておりますので、お嬢様のご命令であろうともそれは叶えることはできません」


 執事長にその後も無理難題を押し付け続ける凛夏であったが、その事ごとくも軽々と受け流されて最後には部屋から追い出した。


「何で…あいつは、こないのよ」


 涙ぐみながらそう言った凛夏だったが、それが叶う事は今後二度となかった。


■■■■■

Side.夜冥珱霞


「ようやく10層に辿り着いたな」


 特に大きな怪我もなく、珱霞は10階層へと辿り着いた。

 ここまでにかかった時間は大体8時間くらいで、今の時間は午後3時前だ。


「時間にはかなり余裕もあるな。少し休んだらボスに挑むとするか」


 Fランクのダンジョンは大抵が10階層で出来ている。正確には11階層なのだが、10階層で戦いは終わりなので10層構造だと言われている。

 10分ほど休憩した珱霞は、ボス部屋へと入っていった。




「ボスは何かな“鑑定”」


【ゴブリンソーダ―:レベル20】

ゴブリン種、ホブゴブリンと同じようなステータスを持つが、スキル【剣術】を持っている

ランクはFランクで、その中でも上位種となる

剣を持って戦う。剣術のレベルは習って1月程度の人と同じレベル


「まあ。そこまで強くないという事だよな。ステータスはホブゴブリンと変わらないが、スキルを持っている、と。バリバリの前衛だな。よし、戦い方は決まった。こっちからいきますか!」


 珱霞はトップスピードで駆け出した。珱霞の武器の一つは、この速度の緩急(かんきゅう)だろう。

 ゼロからマックスにまで一気に上げ、突如止まり急にカットインする。昨日の大量のゴブリンに勝てたのも、これがあったからに他ならない。


「グギャ!」

「甘いな」


 ゴブリンソーダ―(以後ゴブリン)の振りおろしを急ストップで避けると、ゴブリンに向かってナイフを投げる。

 ゴブリンナイフは粗悪品でほとんど使えないが、こういった使い捨ての使い方にはあっている。まあ、攻撃力は無いのが、ナイフ投げで敵を倒そうとは思わないので関係ない。


「ギャ!」


 ゴブリンはナイフを弾いたが、その間に珱霞は死角へと入り、後ろへと回る。


「っ!」


 バットを振るうが、風を切る音で気が付いたのかゴブリンはしゃがんで避けた。


「これまでのやつらとは違うか。まあ、そこまで強くもないか。そろそろ、本気でいきますか“小鬼虐殺者(ゴブリンデストロイ)”」

「グ…ギャ…グギャ―!」


 状態異常【恐慌】。錯乱状態になる効果がある。

 主に殺気を喰らったときになる状態異常だが、今回は称号の効果によって状態異常にした。


「まあ、錯乱状態の敵の攻撃が当たるわけないだろ。シッ!」


 珱霞はゴブリンの懐へ入り込み、ナイフを振るいゴブリンの首を刈り取った。


「ボスとは言ってもこの程度か。まあ、Fランク迷宮だしこの程度なのかな。この調子なら、1月もあればEランク迷宮の攻略も出来そうだな。さてと、宝箱の中身は何かな‥‥おし!スキルオーブだ!」


【スキルオーブ】

ランダムに適性を持っているスキルを付与する


 ランダムなので、弱いスキルになることもあるが、それでも高値で取引されているアイテムだ。

 その理由が、ほとんど出回らないことにある。珱霞もスキルオーブは自分で使う。


「スキルオーブ発動…さて、何が手に入ったのかな“ステータス”」


夜冥やくら 珱霞おうか

Lv.7

Exp.11/800


HP 210/350

MP 87/600


物攻 29

魔攻 26

物防 20

魔防 16

俊敏 23

運  17


・スキル

武具適性

¦—棍術:レベル1

¦—短剣術:レベル1

魔法適性

¦—水魔法:レベル1

収納:レベル1

鑑定


・称号

小鬼虐殺者(ゴブリンデストロイ)


【収納】

無機物を収納できるスキル

入れられる量はスキルレベル×10kg

物の出し入れは意識することで可能。

内容物の一覧を出すこともできる


「収納、か。かなり強いスキルだよな。結構上位のギルドも収納もちを遠征に連れて行くって言うくらいだしな」


 ギルドと言うのは探索者の集団だ。個人で立ち上げたものから、企業で立ち上げたものまで様々な種類がある。

 個人のギルドだと実力が高ければスポンサーがつくこともあるらしい。


「昨日ゴブリンとスライムを大量に倒したから持ち帰るのも大変だったから、こういったスキルがあると助かるよな」


 珱霞のレベルだと、まだそこまで大きな素材が出ることは無いので、収納スキルが強く輝くわけでもないが、在って困るものではない。

 魔法以外のスキルレベルは使い続けることで上昇するので、早い段階から持っているほどレベルが上がりやすいのだという。


「じゃあ、今日の成果も【収納】に入れておくか」


 バッグごと収納の中に入れ、珱霞はボス部屋の先にある転移決勝に触れると地上へと戻った。


■■■■■


「魔石の売却をしたいのですが」

「は~い。あ、今日もいらっしゃったのですね。では‥‥あれ?バッグも持っていないようですが」

「ああ、北浦迷宮の攻略が終わりまして、スキルオーブが手に入ったので。運よく収納が手に入りました」

「ほ、本当ですか!?あ…失礼しました。では、こちらに魔石を置いてもらえますか」

「分かりました。“リリース”」


 物を思い浮かべるだけでも出せるが、口に出すともっと簡単に思い浮かべることができる。


「では、お願いします」

「はい。お預かりしました。少々お待ちください」


 昨日同様小走りで協会の奥へと走っていった受付の人は、5分ほど経った後、またも息を切らした様子で戻ってきた。


「で、では、こちらが明細になります‥‥ご確認ください」

「は、はい。ありがとうございます」


・スライムの魔石…3個:\150

・ゴブリンの魔石…8個:\560

・ホブゴブリンの魔石…5個:\650

・ポイズンスライムの魔石…4個:\400

・ゴブリンソーダ―の魔石…1個:\200

・ゴブリンナイフ…6個:\180

・スライムゼリー…4個:\800

・捕獲協力代金:\10,000

小計:\13,340

税3%:\100.2

合計:\13,240


「えっと…この捕獲協力代金って何ですか?」

「はい。昨日押しつけ屋のことを夜冥さんが訴えましたので、それが協力となっています。その際に写真を見せてくださいましたよね。それが決め手となったんですよ。ここ最近、北浦迷宮に潜る初心者の押しつけ屋による死亡率がかなり高かったのですけど、夜冥さんのおかげで、証拠が見つかったので逮捕できたそうですよ!」

「そうでしたか。昨日の写真が役に立ったようで良かったです。ところで、名前お聞きしてもよろしいですか?いつも空いているので、この受付使うことも多くなりそうなので」

「あれ?教えて‥‥いませんでしたね。すいません。武神門(たけみかど)有栖(ありす)と申します。今後とも御贔屓に」

「僕は夜冥(やくら)珱霞(おうか)です。よろしくお願いします」


 珱霞はお金を受け取ると家へと帰っていった。


■■■■■

Side.協会


「すまない、受付嬢たちの休憩所はここであっているかな?」

「はい。ここですよ。何か御用ですか、支部長?」

「ああ、この明細、担当したの誰か教えてくれないか?」

「えっと…昨日の物と今日の物ですね。ああ、そう言う事ですか。逮捕協力について対応したの誰?」

「は、はい!私です…何か問題がありましたか?」

「いや、問題は無いのだけどね。誰がこれをやったのか気になってね」

「一昨日に新規で探索者になった夜冥さんですよ」

「新規!?」

「え、ええ。年齢は…16だったかな?」

「16歳か‥‥高校は?」

「入っていないみたいですよ。昼間から潜っているみたいですから」

「そうか‥‥じゃあ、今後もその子のこと気にかけておいてくれ。初心者の割には随分と実力があるようだからね。将来的には新しいSランクになるかもしれない」


 支部長は何か考え込む様子だったが、すぐに表情を戻した。


「Sランクですか!?流石にそれは言い過ぎなんじゃ…」

「まあ、可能性の話だ。Sランクの話はとりあえず忘れてくれて構わない」

「はぁ」

「それに、君のストーカーも捕まったのだろう」

「はい。彼の持ってきた写真を見て驚きましたよ。二つの意味で…」

「二つの意味?そう言えば警官の人たちもかなり驚いている様子だったが…」

「見てもらった方が早いですよ。これです」

「どれどれ…」


 支部長は写真を見ると固まってしまった。

 写真にあったのは、男二人の姿と…その後ろに迫る、無数のゴブリンたちだったからだ。


「これを新規の探索者が一人で対応したのか?」

「そう聞いています。私は彼の実力を知っているわけでは無いですけど、2日で北浦迷宮を攻略したのは最高記録ですよ」

「そうか…一昨日に新規で入ったばかりだったな。盲点だった。一日目のゴブリンの数が凄まじいと思ったが、これが原因だったのか…うん?そうするとあのスライムの魔石の数は一体‥‥」

「それは大量に湧いていたらしいですよ」

「湧いていた‥‥まあ、あの2人組が集めたのだろうな」

「そうでしょうね。性格はダメでしたがCランク相当の実力はあったはずですから」


 二人が話していると横から他の受付嬢が写真を覗き込んだ。そして、とても驚いた表情をした後、写真を手に取り他の受付嬢へとまわした。

 それを受け取った受付嬢が見た後次の人に回して…を繰り返し、全員が見終わった後で元の場所へ戻ってきた。


「これ、本当に一人でやったんですか?」

「ああ、私にも信じがたいよ。だが、北浦迷宮に早朝から潜るような新規はいないからな。恐らくは事実だろう」

「そうなると明日からはEランクに潜るんですかね?」

「そうなるだろうな。一週間もあれば攻略してくるだろう。もしかしたら、今週中には…まあ、可能性の話をいくら上げても仕方がないな。じゃあ、私の要はこれで終わりだ。邪魔をしたな」


 支部長は自室へ戻り、報告書をまとめ上層部へと送った。


前略

新たに高い実力を持った新規が現れました。夜冥という者です

300にものぼるゴブリンを相手に一人で怪我無く対応したとのことです

将来性は未知数ですが、ご報告させていただきます

草々

斑鳩紫門



最後までお読みいただき有難うございました


作品をもっと読みたい、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークならびに評価の方よろしくお願いします

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