第九話
ある日の授業後の休み時間、いつも通り私は自分の座席に座っていた。さっきの授業が体育でバスケットだったから、自分にヒールポーション使いたいぐらい疲れた。球技は下手なので上手くなりたいなぁ、チームで対戦するのは下手だと迷惑を掛けてしまうから苦手……、超苦手。自分のせいで負けてしまったのではないかと思ってしまい、落ち込んでしまう。
「倉里さん、体育館シューズ忘れてたよ!」
教室の入口から宮河さんの声が聞こえた。今までざわついていた教室内が一瞬、ゾワゾワと静まり返った。私の名前だからだろうか、私が喋ろうとしたからだろうか、何故かみんな静かになった。
「宮河さん、ありがとう!」
そう言って、私の体育館シューズを受け取った。何かと良く気がつくのが宮河さんの良い所だと思う。とても感謝しているので何かでお返ししないといけない。
再び雑談の声が教室内に響き始め、宮河さんが話し掛けてきた。
「ねえ、カスミはメイクとかしている? 私は今日してきたんだけど」
「ううん、していないよ」
高校ではしてはいけない規則だから当然だ。それを言うと、空気が読めない人に思われるだろうから言わない。人によっては平気でそういう事を言う人がいて、相手の事を考えずに喋るなんて信じられないと思う時がある。
「真面目だねー、こういうのはバレなきゃいいのよ」
「そうだね、興味はあるけど」
「この前、親から貰ったから使ってみたんだ。チークとかはすぐにバレちゃうからダメだけど、アイラインを薄く入れるだけで全然、印象が違うから」
宮河さんの目をじっくりと見てみたら、何となくアイラインが引いてあるのが分かった。
「すごーい、いいね。私も上手く引けるかなぁ」
不器用ではないが、あんまり自信がない。
「大丈夫、大丈夫。すぐに慣れるからできるよ。朝はやっぱり面倒だけどね」
メイクに興味があるクラスメイトは多いし、実際にメイクしてみると楽しいだろうなぁ。みんな練習していると思うから、私も慣れていった方が良いかなと思った。家ではオンラインゲームしてたから、メイクの話についていけない。
人と話すのは頭の中で色々と考えないといけないのでとても疲れる。宮河さんの様にもっとお喋りが上手で、楽しく話ができる人に生まれたら良かったなぁ。
定刻通りに次の授業のベルが鳴り響いた。
「それじゃあねー」
宮河さんは人と話せてスッキリとした様子で自分の席に戻っていった。
でも、やっぱりメイクは大学生になってからで良いかなと思う。男子と付き合うとかも大学生になってからで良いと思う。一緒に勉強を頑張ろうとか言われても、相手の事が気になって絶対、勉強しなくなると思うし、それで大学受験して合格できなかったら困るし。そもそも私と付き合いたいと思う男子はいないだろう。こんな無口で地味な私は嫌がられると思うから。西井君の姿を一瞬だけ横目で見て、机の中から教科書とノートを取り出した。
色々と考えすぎて疲れちゃった。




