第四十八話
「第四十五話」内の想像
私は“嫌な想像”に対して想像をした。私なりに考えて導き出した苦肉の策を想像した。
“嫌な想像”の中に新しい“想像の私”を創造した。
目の前に見えてきたのはリオの家だった。
リオはもういないのかな、もう会ってくれないのかな。不安な気持ちが込み上げてくる。スカートのポケットには拳銃がしまってある。ずっしりと重い。返り血などは浴びていない。
目を閉じて大きく息を吸って、ゆっくりと吐いた。
私は自分自身が作りだした“嫌な想像”を、私の想像で破壊して塗り替えてきた。後は貴方だけ。
そして、目を開けると玄関先にリオがいた。申し訳なさで直接リオの顔を見ることができなかった。
リオ……。
ポケットに入れた右手で拳銃を握りしめた。この拳銃はリオを撃ち殺すためではない。自分の頭を撃ち抜いてお詫びをするため。
微かにリオの表情が見れるようになってきた。リオにはどれだけ謝っても謝りきれない。絶交されても仕方がない。壊れてしまった絆はもう元には戻らない。
「カスミン、どうしたの?」
「リオ……、ごめんなさい。まとまってなくて上手く説明できないけど、私はHSPっていう面倒な人間で……、リオに散々迷惑を掛けてしまったし、もうこれ以上迷惑を掛けられないから……、ここでもうお別れ……、私は消えてサヨナ……」
「考えすぎだよ、カスミン。HSPなんて関係ないよ。カスミンはカスミンだから、ずっと親友だよ。また動画を一緒に撮りたいと考えているし、久しぶりに遊園地でも行こうよ!」
リオのその言葉に拳銃を握る力が抜けた。すると拳銃は消え去った。
瞳の奥から涙が溢れ出し、零れ落ちた。
私の中で、全てが、崩壊して、全てが、消滅した。
心が動いたとき涙が出るのは何故だろう……。悔しくて辛いときの涙とは違うサラサラとした涙。キラキラとした美しい涙が頬をつたって流れた。すると、目には見えない波動の地平面から微粒子の流れが、私の心の傍をたおやかに駆け抜けていった。
目を開くと、さっきまでの現実の自分の部屋にいた。しかし、先程とは違って、私を包む空気が明るく、そして暖かく感じた。気分は風船のように軽くなった。黒く渦巻いていた“嫌な想像”は頭の中から消えていた。私はようやく解放された。
現実世界でも必ずリオに謝りにいく。こんな私を親友と言ってもらえる優しい親友は大切にしていきたい。親友のことを優しく思う気持ちを大切にしていきたい。
リオ……、ありがとう。
感謝の気持ちが心の中で熱い感情となって込み上げてきた。
そして、大粒の涙を流した。
完




