第四十四話
自分の家まで帰ってきた私はベッドに倒れこんだ。
外出の緊張から解放されたのでとても眠たい……。学校に行かないと思うと眠気は普通にあるのが救いだった。
行く時はあんなに時間が長く感じたのに、帰りの電車はあっという間だった。今日は電車移動と人混みとセミナー、人と喋る緊張の疲れで、すぐに眠りに落ちていった。
目が覚めた時には二十四時を過ぎていた。もうこんな時間だ。ちょっと休むつもりだったのに熟睡していた。でも、とても深い眠りでぐっすりと眠れた感じがする。
東河さんから教えてもらったアドバイスを試してみる事にした。帰りの電車の中で書いたメモを読み返した。“人との繋がりや相談できる人”は……、今から作るのは難しいから後回し。“落ち着く場所”は……、こんな夜中なので保留にして、えーっと“常識を超えるような事をしてみる”というのは何をしてみよう。話を聴いた時には色々と試してみようと思ったけど、常識を超えるような事ってそんなに無いよね。
取り合えず、動画でグランドキャニオンと検索して映像を見てみた。
確かに峡谷の壮大な景色が広がっているが、圧倒はされなかった。実際にその場で見ないとその壮大さが伝わってこないような感じがした。私は何を見れば圧倒されるのだろう……。
次は宇宙の事を調べてみた。現在の宇宙が誕生して約百三十七億年、大きさは観測可能な範囲で半径が約四百五十億光年。億年って、人間の一生が百年生きるとするとして、十回繰り返して千年、百回繰り返して一万年、千回繰り返して十万年、一万回繰り返して百万年、十万回繰り返して千万年、百万回繰り返して一億年。これでやっと一億年。それの百三十七倍……。普段、聞いた事の無い年数を身近な年数に置き替えて、頭の中で想像すると、途方もない時間に私の常識の想像を超えた。
光年って、時間の長さじゃなくて距離の長さなんだね。光の速さで一年間進んだ距離。一光年で約九・五兆キロメートル? えっ、ちょっと分からない。光の速さがだいたい一秒で三十万キロメートル進み、地球の周りを七周半ぐらいの速さだから、一分で掛ける六十でしょ、一時間でそれの掛ける六十でしょ、一日でそれの掛ける二十四で、一年で掛ける三百六十五……、その合計が九・五兆キロメートル。で、それの四百五十億倍……、距離の感覚が常識の想像を超えてしまって私は圧倒された。
太陽系って言ってたなぁ。とりあえず、太陽の項目をクリックした。太陽は表面温度が六千度。六千度って、お湯が沸騰するのが百度で火傷するぐらい結構熱いよね。六千度だとどうなるのだろう、私は宇宙船に乗って太陽に近づいている状況を想像をした。全部溶けちゃうのかな。溶けていく宇宙船と自分自身を想像して恐怖を感じ、そして圧倒された。日常で太陽が何度でなんて考えた事もなかった。
私はその後、水星から冥王星まで夢中になって読み進めた。
日曜日は午前一時前から、ずっとインターネットで調べては圧倒されてを繰り返していた。その余韻を頭の中が一杯のまま、二十時には就寝することができた。




