第四十三話
私は大きく深呼吸をして、頭の中を整理した。上手く喋れるかな……。
「私……、悩みがあります。最近、仲の良い友達と動画サイトで投稿した動画の評価が良くて、そこまでは良かったのですが、いつからか酷いコメントが増えて、その友達に申し訳なくて、コメントの犯人を考えていると疑心暗鬼になって、クラスメイトの中に犯人がいるかもしれないと思うと、後ろ指をさしていると考えてしまうと怖くなってしまって、仲の良い友達にも嫌われてしまったと思うと、“嫌な想像”が頭の中でずっとループしていて、明日学校に行くと思うと夜に寝れなくなって、学校を休んでしまって、クラスメイトからどう思われているか気になって、学校に行くのが怖くなって、どうしたらいいか分からない状態が続いていて、これを治すにはどうすればいいでしょうか?」
悩みについての情報を立て続けに口に出してしまったが、伝わっているかな、伝わっていないかもしれない……。あまり長く話すと相手に悪いから、話を端折ってしまったのが原因かも。やっぱり私は人に物事を伝えるのが下手だ、自信が全く無い……。
東河さんは私が喋っている間、テーブルの一点を見つめて、何度も頷いていた。
「君、名前は何だったっけ?」
「果澄です」
「じゃあ、果澄さんのコミュニティはいくつぐらいある? 今日セミナーで話したコミュニティの話」
「私は、家族の繋がりと……」
他の繋がりを頭の中で数えてみた。友達の繋がりは無くなった、学校のクラスメイトの繋がりも無くなった、ゲーム内での繋がりは元から無い、広尾山へ登山の時のメンバーも年に一回会うか会わないかで、メンバーも変わるから繋がりでは無いかな、他に繋がりは……、探してみたが他の繋がりが見つからなかった。
「他には無いです……」
思わず小さな声になってしまった。
「人との繋がりは作っていた方が良い、できれば相談ができる人がいると良い、ってセミナーでは話をしたけど、HSPだとそれがなかなか難しいよね。あと、同じ事になるけど自分の落ち着く環境も多く持つ方が良い、自宅だけでなく、図書館とか公園とかでも良いし、気分が変えれる所があると良い。もし自宅に籠りっきりだと鬱病になってしまうから。すでに鬱病にはなっていないよね?」
人との繋がりも無く、自宅に籠った状態だったので、一人で悩んで苦しんでを繰り返していて、このまま続いていると鬱病になっていたかもしれない……。
「多分、まだなっていないと思います……」
「それは良かった。人とのコミュニティが作りにくかったら、そうだなぁ……、今の自分の常識を超えてしまうような事をするのも効果的な場合がある。例えば、グランドキャニオンのような壮大な風景を見れば、圧倒される。この“圧倒される”というのが重要で、自分の悩んでいた事がどんなに小さい事だと思って悩みが吹き飛んだりするんだ。グランドキャニオンなんて簡単には行けないから難しいと思うけど、僕の場合で言えば、宇宙の事をインターネットで調べると圧倒された事があって、悩みが吹き飛んだ経験があるのでお勧めするよ。身近な所で言うと太陽系とかも良いかも。後は、頭の中の想像を超える想像をする、とか。その想像を破綻させると効果的な場合もある。とりあえず挙げた方法を一度試してみると良いよ。人によってどの方法が効果的かはやってみないと分からないからね」
教えてもらった方法を早く試してみたい気持ちになった。
「はい、試してみます」
「どの方法も合わなかった場合は電話やメールで相談してくれたら良いよ。アドレスはホームページに書いてあったと思うけど、これを渡しておくよ」
東河さんがスーツの胸ポケットから出した名刺を受け取った。
「ありがとうございます」
「また来てくれても良いし、セミナー後でも」
「はい」
あんまり長く居るのも悪いと思うので、このタイミングで私はコーヒーを全部飲んで立ち上がった。コーヒーは私にはちょっと苦かった。
「ありがとうございました」
「じゃあね、自信を持って頑張ろう」
東河さんは自動ドアの所まで見送ってくれた。




