第三十九話
東河さんはペットボトルの水を一口飲んで、引き続き話を始めた。
「今では“HSP”という言葉がインターネット上でもちらほらと出てきていますが、以前は医学書の中でしか出てこない言葉でした。HSPについてもっと詳しい情報が知りたいけど、その頃は情報が少なかったので、どうすれば良いのか非常に悩みました。ある日、大学を訪問した時に心理学の教授からアメリカの臨床心理学が日本よりも進展していると話を聞いて、海外から医学書を取り寄せて読みました。もちろん中身は全部英語なので英和辞典を片手に翻訳しながら読みました。その中にHSPの診断方法が載っていたので試してみた結果、自分はHSPだという確信をしました。医学書で得た知識を自分なりに解釈して、HSPはどうずれば治るのか、生きづらい気持ちをどうすれば改善できるか、自分で考えて幾つも実践してきました。そうしていると、自分と同じようにHSPで苦労している人に教えたい気持ちが沸き上がってきました。それができるのは僕しかいない、とちょっとした使命感のようなものが生まれる瞬間がありました。そして会社を辞めて、HSPのカウンセラーになることに決めました」
スクリーンの映像を切り替え、東河さんは引き続き話を続けた。
「で、まあ、カウンセリングを始めたのですが、HSPの認知度もあまり無いので、こうしてセミナーもしています。HSPを治す方法ですが、先ほども言いましたが、HSPは性格ではなく“気質”なので治る事はありません。治す事ができない以上、どのようにすれば良いのか。心の持ちようによって生きづらさが改善することができます。まずコミュニティを沢山持つようにした方が良いです。コミュニティとは人との繋がりで、普通は家族の人との繋がり、学校や会社での人との繋がりがあると思いますが、娯楽や趣味の中でのまた別の人との繋がりです。その他に近所の井戸端会議の繋がりでも良いですし、何かしら別のコミュニティを複数持つことで、今いるコミュニティで人間関係が悪くなった場合、違うコミュニティで落ち着く事ができます。自分の居場所を多く持つことが大切です。それが無いと自分の殻に閉じこもってしまって、最悪は鬱などの病気になってしまいます。次に充電時間を作る事です。週に一日は一人で家など自分の落ち着ける場所で過ごすことが大切です。本を読むなり音楽を聴くなり、心の充電時間を取る必要があります。人と一緒にいると疲れるので、一人でいることで他人の事を考えなくていい環境、外から受ける情報が入ってこないようにする環境を持つ事。これは自分の疲れ具合と相談して、シャットアウトする時間を調整すれば良いです」




