第三十七話
私は自分がHSPだと思っている。だからこのセミナー“HSP、繊細で傷つきやすい人間の生き方”に参加したいと思った。それにHSPについてもっと知ることで、自分の心が整理できると思ったから。
十二時三十分頃にはビルに戻ってきて、セミナールームの前で受付が始まるまで待っていた。
さっきまで時間つぶしにビルの周辺を歩いていたが、時間が経つのが遅くて、待ちきれずにここまで来てしまった。それにウロウロしていると不審者に見られそうだと思ったから。
十二時四十五分にセミナールームのドアが開き、スーツ姿の女性が出てきた。
「あら、こんにちは、セミナー受講の方でしょうか?」
「はい」
高校生に思われないようにできるだけ大人っぽく振舞った。でも、見た目は高校生に思われているのだろうと相手の目から一瞬で読み取った。
「事前予約をされていましたらお名前を頂いて宜しいでしょうか?」
「えっ、事前予約はしていないです」
ここまで来てセミナーを受けられない? ホームページには確か当日参加もできると書いていたはず……。
「当日参加の方はこちらにご記入お願い致します。受講料三千円になります」
私は手渡された紙に名前を書いて、受講料を支払った。セミナールームの中で一番窓側で後列の席を選んだ。後ろに誰もいないのは落ち着く。ビルの二十五階、窓から見える景色は足がすくむ高さだった。広尾山の山頂よりずっと低いはずなのに、高所恐怖症ではない私でも落下した時の事を想像をすると恐怖を感じる。
私は周りの雰囲気に緊張していた。参加者が入る度に、どんな人が受講するのだろう、自分はこの部屋の中で変に思われていないか、などアンテナのように神経が尖って感度が鋭くなっているのが自分でも分かった。
十三時直前に駆け込みの参加者が多数入ってきた。ルーム内を見渡した感じでは参加者は二十人もいなかった。プロジェクターから“HSP、繊細で傷つきやすい人間の生き方”の文字が前方に設置してあるスクリーンに映し出されている。
暫くすると、東河博さんが部屋に入ってきて一礼をした。蛍光灯の光の加減からか、動画と同じように目がキラキラとしていた。
「本セミナーにご参加頂きまして誠にありがとうございます。本日、講師を務めさせていただきます私、東河博と申します。どうぞ宜しくお願い致します」
再び一礼をして、爽やかな笑顔を見せた。




