第十四話
連休のある日、自分の部屋でのんびりしていた。
読書や音楽鑑賞をしつつ、同じクラスの西井君の事を考えたりする。
この前、くじ引きで同じ班になったときに隣の席で話すことがあった。あまり自分から話せなかったけど、ずっと心臓がドキドキと鳴っていた。
私は喋る前に必ず頭の中でシミュレーションをしてしまう。
私がどのように話せば西井君は楽しくなって良い返事を返してくれるのか、傷ついて嫌な気分にならないか、というのを何度も何度も繰り返す。一番上手くいきそうな内容を選んで話すから、自分から話す回数は減ってしまう。決して思いつきで話したりはしない、失敗するから。
これは西井君に限ったことではないけど。シミュレーションをしていると実際に沢山喋った気分になってしまって、もう話さなくてもいいかって自分だけ満足してしまう。
折角、同じ班になって話すチャンスがあったのに上手く言葉を返せず、あの時はこう話していた方が良かった、こう返事をしておけば良かった、と後悔して勝手に頭の中で考え始めている。
咄嗟の言葉のキャッチボールが下手なので、次は上手く返せるように何度も考えているけど、全然上手くいかない。
西井君のにおいが好き。廊下ですれ違った時ににおいがする。同じ班になった時もにおいがしていた。どんなにおいかというと柑橘系に近いにおい。トゲトゲしい香水とかのにおいではなく柔軟剤か分からないけど、その上品な優しいにおいが好き。
あと、西井君が触ったものや場所を私も触るのが好き。触ったものや場所を覚えていて、後で自分も触ると嬉しかったりする。これは“好きな人”に直接“好き”と伝えられず、心の中にしまい過ぎた人間の屈折した愛情表現なんだと思う。
私だけだろうな、こんな些細なことで喜んだりしているのは。西井君に私がこんな陰キャラだと知られたら、もう終わりだろうな。
今月下旬は学校でテスト期間があるから勉強もしないといけない。
西井君は良い点を取るんだろうなぁ。大学はどこを目指しているのだろう。一緒の大学に行きたいな。
今日はゆっくりとできて心が休まった。




