砲戦距離 45000
いよいよ本番です。
・・・・。
我がアメリカンボーイズはどうやら全機、殺られてしまったらしい。
司令部から度重なる呼び出しにも答える機は皆無だった。
もう少し経験を積ませて出すべきだったと後悔している。
まぁ私も今回の作戦が終わったら、恐らく退役を余儀なくされるだろう。
これだけの戦死者を出したのだ。
責任は取るべきだな。
まあ、それは良い。
まずは目の前の戦闘に備えぬと・・。
キンメルは硬直してた思考を止め、作戦室に電話を入れた。
「こちらキンメルだ。
戦闘機は壊滅したぞ。作戦はどうするのだ?」
「こちら作戦室、レーダーの情報に拠ると、敵艦隊五十キロまで接近中。
回避は不可能と思われる。
よって、敵艦と交戦。
撃破し帰国するのが最良と思います。」
「フム・・。
私もそう考えてた所だ。では砲戦距離に達したら、敵を殲滅出きる様にデータを
揃えてくれたまえ。
各砲はすべて鉄鋼弾に変更。
艦上乗組員は砲戦に備え、艦内に退避。
急げ・・。」
戦艦アリゾナ、ネバダ、テネシー、ミシシッピー、アイダホ、ニューメキシコ、コロラド、メリーランド。
これだけの戦艦を揃えたのだ。
戦技シュミレーションでも数の法則の前には負ける要素が見当たらない。
日本は既に5隻も戦艦を喪失してるのだ。
残されたのは巡洋戦艦が数隻。
コチラはビッグガンを持つ戦艦が三隻も居るのだ。
負けないぞ。
散ったアメリカンボーイズ、お前等の仇は絶対に私が取る。
「長官、間もなく砲撃可能距離となります。」
「そうか・・。では予定通り、当初は三式弾で敵の上層部分を焼いてしまえ。
情けをかける必要は無い。
射撃方位盤にデータはすべて入ってるな。」
「お任せください。
まさかこんな戦法が出きるとは・・。
海軍に入って本当に良かったと感激しています。」
「任せるぞ。」
「了解です。
全艦一斉射撃開始。
作戦プランAで始める。」
大和を先頭に武蔵、薩摩、札幌、高千穂、河内、桜島と六隻の長40センチ砲戦艦の
咆哮が、今上がろうとしてた。
砲戦距離、45000m。
「オイ、ボビー。
何か音がしなかったか?」
「ダン、まだだよ。敵艦は水平線の彼方だぞ。
撃つ訳が・・・・・。」
ボビー二等兵は最後まで話す事は無く、戦艦アリゾナの甲板で火達磨となってしまってた。
ダンも同時に・・。
「司令、大変です。
敵が射撃を開始しました。」
「ナニ??まだ45000mも離れてるんだぞ。
我々のガンでも35000が限界だ。」
「しかしもう発射・・・・。何だ?アレは・・。」
旗艦メリーランド艦上のブリッジから見てると、戦艦アリゾナの上空に
何かが飛んで来て、花火みたいに弾けたのだ。
そして・・・。
「燃えている・・。アリゾナが炎上してる。」
「長官、コチラにも敵弾が飛来しています。
避けないと・・。」
「全艦、即座に最大速力を出し敵弾を避けろ。
アレは。。。。」
キンメルは最後まで言う事は出来ず、メリーランドのブリッジで松明の如く燃えてしまってた。
アメリカ戦艦の艦上はこの世の地獄となってた。
まだ致命傷は受けていないのに、甲板要員は全滅。
艦橋も露天部分は壊滅。
戦闘指揮所は艦の奥深くにあるので助かったが・・。
戦艦はモチロン、巡洋艦、駆逐艦、そして艦載機を喪失してた空母までが炎上を始めたのだ。
肉の焼ける吐き気のする匂いが戦場を漂う。
反撃はおろか、操舵も出来ない艦艇が続出し、アメリカ艦隊は大混乱となってた。
「凄い・・。
まだ撃沈に至る打撃は与えていないのに、敵は壊滅状態になってるぞ。」
「長官、全ての照準は完璧となりました。
まさか外れ弾が多い当初の射撃をすべて三式弾で発射するとは・・。」
「無駄弾が有効に生きるいい見本だな。
今後の海戦のモデルとなるだろう。
そろそろ沈めてやるか・・。」
「生き地獄を何時までも味わらせるのは海軍軍人としても不本意ですからね。」
「ウム。全艦轍硬弾にて敵艦を処理せよ。」
ズガーン、ズガーンと響く発射音と着弾し鉄が引き裂かれる破壊音。
そして地獄の底に引き込まれるみたいな船の沈没音が戦場を覆った。
それからはもう完璧なワンサイドゲームとなった。
全ての艦が炎上を続けてるため、巡洋艦も駆逐艦も恐れる事無く敵に接近。
次々と敵を撃沈して往く。
各戦艦も全て落ち着いて射撃を開始。
最初は初弾を受けて炎上したアリゾナが二つに折れ轟沈、
その後は続々と撃沈され続けて行った。
その様子を高空からB17に乗って、視察を続けてたアメリカ陸軍のパイロットは、
後に・・・。
「まるで赤子を大人が痛めつける様な様子でした。
とても戦闘とは思えません。
まさか戦艦の破壊力があそこまで凄いとは・・。
海軍兵士はすべてあの火山の様な艦で焼け死んだのでしょう。
我々はその後、敵戦闘機に追われ逃げるだけで精一杯でした。」
泣きながらグアム基地に帰った彼等をマッカーサーは攻める事が出来なかった。
後にアメリカが戦場に救助に行くと、焼けただれた遺体のみが彷徨う地獄の海となってた。
キンメルは開戦初期に戦死してたらしい。
「小沢長官、勝ちましたね。」
「勝ったと言うか・・。何とも言い難い気分だな。」
「戦場とはこんなモノでしょう。」
「ウム。とにかく我々は勝った。
敵は空母から、また戦艦の有効性を信じるだろう。
コレだけの完璧な勝利は世界でも始めてだろう。」
「アメリカで無かったら、今回で戦争は終わりですよ。
ただアメリカも本気で反撃して来ると思います。」
「我々も装備と訓練を充実させるべきだ。
今回の戦闘員は全て内地の学校に配備し、戦訓を伝えさせるべきだ。
それと・・。」
「戦闘機搭乗員のリストは出来上がっております。
彼等は内地に帰還次第、御前で陛下に表彰される事でしょう。」
「ウム。
彼等は我が国の誇りだ。
キチンと働きに応じた手柄を与えぬとな。」
小沢は彼等と語り合うと、戦場から撤収命令を出し、内地にと帰って行く。
多くの躯を海底に残し・・。
日本側損害、皆無。
アメリカ側、
参加艦艇壊滅。
戦死者二万有余名を越す大損害となる。
ルーズベルトは敗北を知り、卒倒を起こしかけ入院。
空母の増艦計画は破棄され、戦艦を倍増生産する事になる。
三式弾を海戦初期に使えば、ナパーム効果で敵の兵士を壊滅出きると
思い、今回の海戦を作りました。
無駄弾となる射撃が無駄にならないのです。
これぞエコ射撃ですよ。




