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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
994/2051

第994話 カケラ争奪戦 イタリア2(3)

「へえ・・・・・器用だね。ありがとう、スプリガン。礼を言うよ」

「ふん・・・・そう思うなら、それだけの働きを見せてみろよ」

 ゼノがチラリと影人の方を見てそう言ってきた。影人はその言葉にそんな答えを返した。

「分かった。なら、頑張るよ」

 ゼノはぼんやりと笑いそう言うと、その視線をファレルナとエリアの方に向け直した。

「そういうわけだから、ちょっと気合を入れ直す。現代最強の光導姫、君のその目障りな光、俺が壊してあげるよ」

「ならば私はあなたを光を以て浄化しましょう。人の身に戻る時です、闇人」

 ゼノとファレルナが、最強の闇人と最強の光導姫が互いにそう言葉を交わし合う。見えない火花が散りあう。そして、ゼノはこう言葉を放った。

「悪いけど、まだ死ねないんだ。レールが目的を果たすまではね。だから・・・・・・・・お前が死ね」

 スゥとゼノの琥珀色の瞳、その瞳孔が開く。ゼノは再びファレルナやエリアの方に向かって歩を進めた。

「ふん、もう1度穴を開けてやろう」

「光よ、彼の闇人に浄化の安息を」

 当然の事ながら、エリアとファレルナはそんなゼノに対して再び攻撃を行ってきた。エリアは5発ほどゼノに向かって発砲し、ファレルナの光も先ほどのように強い輝きを放った。

「ちっ・・・・・・!」

 影人はゼノを援護しようと、何か言葉を紡ごうとしたが、その前にゼノが動いた。

「うざったい」

 ゼノの右腕が一瞬にして半ばまで黒く染まる。ゼノはその黒く染まった右手を自身の正面にかざした。

 すると不思議な事に、

 エリアが放った5発の弾丸は吸い込まれるようにゼノ右の掌に着弾した。そして、ゼノの黒い手に触れられた弾丸は一瞬にして粉微塵と化した。

「っ・・・・!?」

 その光景を見たエリアは驚いたように息を呑んだ。

(高密度の『破壊』の力か! だが、あの吸い寄せはいったい何なんだ・・・・・・・・?)

 驚いたのはゼノを援護しようとしていた影人もだ。ゼノの右手が黒く変化した事と銃弾が粉微塵にまで破壊された事から、ゼノがその右腕に高密度の『破壊』の力を纏った事は影人にも分かった。影人もシェルディア戦や、ダークレイを助ける時に使用した事がある。弱体化しているというのに、一瞬にして対象物を塵レベルまで破壊した事も驚くべき事だが、影人はそれよりもなぜ銃弾がゼノの右手に吸い寄せられたのかが気になった。『破壊』の力にそのような性質はないはずだ。

(イヴ、何でか分かるか?)

『知らねえよ。あの光のせいで気分が悪いんだ。あんまり話しかけんな。ただ、あのゼノとかいう闇人は何かよく分からねえんだよ。とんでもなく高レベルな『破壊』の力を扱う闇人ってのは、気配から分かるんだが、それだけじゃない。何か得体の知れないって感じが・・・・・・・・』

(は? なんだそれ? いったいどういう――)

 影人の質問にイヴは歯切れ悪くそう答えた。その答えを聞いた影人は更なる疑問を抱いたが、それ以上イヴと話す時間はなかった。

 次にゼノに襲いかかったのは、ファレルナの強烈な浄化の光だ。ファレルナの光と高密度の『破壊』の力を宿したゼノの右手が激しくせめぎ合う。ファレルナの光はゼノを攻撃する「攻撃の光」であり、ゼノから自身を守る「防御の光」であり、ゼノや影人の力を落とす「弱体化の光」だ。影人やゼノからしてみれば、ファレルナの放つ光は理不尽な光でしかない。

「いい加減に・・・・・壊れろよ」

 だが、ゼノが更に自分の右手に『破壊』の力を込め、何かを握り潰すかのように手を閉じていくと、何かが壊れるような、砕けるような音が響き、ファレルナの放っていた光は『破壊』された。

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