第990話 カケラ争奪戦 イタリア1(3)
「そうか・・・・・・・その装束も神器レベルの代物というわけか。貴様にその力を与えた何者かは、よほどの力を持っていたようだな」
「ふん。思い出したくもねえ」
レイゼロールは納得したようにそう呟いた。その呟きに、影人は不機嫌さを演出しながら帽子の鍔を押さえた。
「スプリガン、ゼノ。我は今からこの地のどこにカケラが眠っているのか探知する。探知の間、我は戦闘には参加できない。ゆえに、その間の光導姫と守護者の相手は頼むぞ。・・・・・・・・それと、スプリガン。貴様は分かっているだろうが、今回もあの『フェルフィズの大鎌』を持つ者が現れる可能性が高い。我も警戒はするが、お前らもその事は注意しておけ」
「・・・・・・・ああ」
「ん、分かった」
レイゼロールの話に影人とゼノは頷いた。影人も、レイゼロールと同じように今回もあの黒フードの人物が現れると踏んでいた。
「よし、ならばここからは任せたぞ」
レイゼロールは最後にそう言うと、集中するようにそのアイスブルーの瞳を細めた。影人とゼノはレイゼロールの前方に立ちながら、周囲を警戒した。
「・・・・・・・・まばらにだが人がいるって事は、まだ光導姫が来てないって事だな」
「そうみたいだね。でも、多分あと1分もすれば来ると思うよ。あいつら反応が早いから」
影人たちが今いるのはローマの市街地の端のような場所だ。遠くにはほとんど影のようだが、コロッセオも見える。影人たちの近くには酔っ払いか、中年くらいの男が千鳥足で道を歩いていた。男は酔っているためか、影人たちには気がついていない。その男以外に人の姿は後2、3人ほど確認できる。その者たちは影人たちには気がついているようだったが、特段気にもせずに道を進んでいた。
それから30秒ほどした時だろうか。影人とゼノの正面から2人の人物がこちらへと向かって来た。
「ふむ、標的がいたな。では、仕事を始めるとするか」
1人は黒に近い茶髪の髪をした男性だった。歳の頃は18くらいか。ダークスーツを見に纏い、胸元には黄色のネクタイを飾っている。そして、頭には赤い線の入った黒の帽子を被っている。その格好のせいか、その男はスプリガンとどこかよく似ていた。その男の名はエリア・マリーノ。守護者ランキング7位、『銃撃屋』の名を持つ守護者だ。
そして、もう1人は――
「・・・・・・・・悲しいですね。こうなってしまって・・・・出来ることならば、あなたとはこのような形で再会したくはなかった。スプリガンさん・・・・・・」
ちょうど影人の隣にいるゼノと同じくらいの年代に見える少女だった。正確に言えばゼノは闇人なので、少女と同年代という事はあり得ないが、あくまで見た目の話だ。大体15歳かそれくらいの少女。その少女はプラチナ色の長髪に、赤みがかかった茶色の瞳が特徴で、本来は愛嬌に満ちたその顔は今は少女の言葉通り悲しみの色を帯びている。装束は穢れのない白色を基調とし、華美すぎない装飾が施されたドレス。胸元にはロザリオが飾られていた。




