表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
99/2051

第99話 奇妙な縁(3)

「ふぁ~~あ・・・・・・・・眠みぃ」

 翌日。影人は学校の自席であくびをかみ殺していた。

 影人が眠いのはいつものことだ。大部分の人間がそうだとは思うが、影人は朝に弱かった。

「あと2時間で昼休みか・・・・・・」

 妹の部屋で眠っていたシェルディアと朝食を取っている間に、シェルディアと話をしていると、今日は宿泊先を探すと言っていた。一応、シェルディアが泊まるのは1日だけだったのだが、影人の母親がシェルディアを大層気に入り、「もう1日泊まっていきなさい!」と言ったので、シェルディアは今日も家に泊まることになった。

 よって、シェルディアは明日から泊まれる宿泊先を探すようだ。シェルディアがどれくらい日本に滞在するのかは分からないが、母親のあの感じだと、もしシェルディアの宿泊先が見つからないとなれば、しばらくウチにいなさいと言いかねない。

「・・・・・・・・人生何があるかわかったもんじゃねえな」

 窓際から差し込む陽光に目を細めつつ、影人は次の授業の準備をした。








 影人にとって事件が起こったのは昼休みだった。

「・・・・・・・・弁当がない」

 鞄を開けて愕然とした。

 最悪である。しかも今日に至っては、単純に影人が弁当を入れ忘れただけであることを、今更ながら思い出した。

(嬢ちゃんと話してる間に、うっかり忘れたか・・・・・・・)

 学校に行く前というのは、一連の行動がほぼルーティン化している。今日はシェルディアといういつもとは違う要素があったため、忘れてしまったのだろう。

「しかも今日に限ってサイフもないし・・・・・・・」

 昨日、夕飯を食べて少しした後、小腹が空いた影人は再びロー〇ンにから〇げ君を買いにいった。もちろんチーズ味だ。その際、サイフを机の上に置きっぱなしにしてしまったのだ。

「・・・・・・・・・不幸は重なるもんだな」

 こうなれば隣のクラスの暁理から、飯をたかりにいくか、金を貸してもらうしかない。そう考えた影人は、席を立とうとした。

「おい、何か超絶可愛い外国人の子がいるらしいぜ」

「は? ウチの学校に留学生なんかいないだろ。どういうことだよ?」

「何かお弁当を届けに来たらしい。エイトっていう名前の男子を知らないか、ってさ」

「エイト? 一体どこのどいつだ。そのうらやまけしからん奴は」

 廊下際の男子達の話し声を聞いた影人はピタリと動きを止めた。

(おい・・・・・・・まさか)

 外国人、お弁当、エイト、という単語を聞いた影人は何かものすごく嫌な予感がした。

 とりあえず教室を出ようとした影人は、出た直後に何者かに肩を叩かれた。

「おーい、影人。なんかすっごい可愛い子が君のことを探してるみたいなんだけど、どういうこと?」

「さ、暁理・・・・・・・・」

 振り返ってそこにいたのは、にこやかな顔を浮かべた暁理だった。

「・・・・・・・・とりあえずこの手をどけてくれ。めちゃめちゃ痛い」

 もう手をどかしてもいいはずなのに、ギリギリと肩に力を加え続ける暁理に、影人は抗議の声を上げる。

「ああ、ごめん。影人は貧弱だったね。で、どういうことなの?」

 そこはかとなくなかなか心が傷つく発言をしながら、暁理は再度影人に質問を投げかける。いや、雰囲気的に質問というよりかは尋問の方が近い気がする。

「もやしで悪かったな・・・・・・・いや、俺にもよく分からん。きっと人違いだと思うぞ」

「僕が知る限り、エイトって名前はこの学校で君だけだよ。それに、なんかいつもより挙動が不審なのは気のせい?」

 ジトッとした目で暁理が影人を見る。見た目の暗い友人は言葉は普段と変わらなかったが、なぜか足が震えていた。

 そんな時、ザワザワと廊下が騒がしく鳴り始めた。廊下の端――階段の方からだ。

「まさか、シェルディアちゃんと学校で会うことになるとは思わなかったよ!」

「本当、また会えたらいいなとは思ってたけど、まさか昨日の今日で会うことになるとは思わなかったわ」

「ふふっ、そうね。私もよ」

 案の定と言っていいのか、その外国人というのはシェルディアであった。髪型は昨日の夜のようなストレートではなく、緩く結ったツインテールで服装もゴシック服であった。

 しかも、なぜかシェルディアの傍らには陽華と明夜がいた。

「色々と話したいこともあるけど、シェルディアちゃんはエイトって言う人にお弁当を届けに来たのよね?」

「ええ、場所を教えてもらって辿り着いたのはいいのだけれど、エイトがどこにいるかが分からなくて。2人が探すのを手伝ってくれると言ってくれたのは、助かったわ」

「えへへ、そう言ってくれると嬉しいよ。でも私と明夜もエイトって名前の男子は知らないし、あんまり力になれないかも。ごめんね」

「気にしないで、一緒に探してくれるだけでもありがたいわ」

 シェルディアは2人と話しながら、次々と教室を覗いていく。シェルディアの姿を見た周囲の生徒たちは、「やべぇ、めっちゃ可愛い」「綺麗・・・・・・」「おい、今すぐエイトとかいう男を探せ。消すぞ」「イエッサー!」などという感じのことを言っていた。後半なぜか不穏なセリフが聞こえた気がしたが、それは無視だ。

「うわー、お人形さんみたいに綺麗な子。で、影人とどういった関係――」

 暁理が言葉を紡いでいる間に、遠く離れたシェルディアと目が合った。

「ッ!」

 正確には影人の前髪越しにだが、確実に合った。

「あ、エ――」

(最悪だ・・・・・・・・!)

「悪い、暁理。あいつから弁当受け取っといてくれ!」

「え、影人!?」

 次の瞬間、影人は全速力で廊下を駆けていた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ