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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
979/2051

第979話 ラルバの思惑、歌姫再来訪(1)

「いやー、しっかし相変わらずゲロ強いっすよあの2人。せっかく新しい力頂いちゃったってのに、両方ともすぐこの力破るし・・・・・・・・マジで強すぎますよ、レイゼロールとスプリガン」

 先ほどの戦いや今までの戦いの事を思い出しながら、壮司はため息を吐く。そして、壮司は自分が装備している左腕の黒いガントレットと、右手の大鎌に視線を移した。

「言うて、この鎌に加えてこのガントレット持ってる俺も中々反則気味なんすけどね。それ以上にあいつらが反則みたいな強さしてますから。いやー、殺すの無理ゲーみたいな感じしますよ、正直」

「それは俺も分かってるよ。レイゼロールはもちろんの事、スプリガンも信じられない強さだ。『フェルフィズの大鎌』を最大限に警戒しつつも、適切に自身の力を使って君を逆に追い詰めるんだからな」

 壮司が漏らした愚痴にラルバも理解を示す。そしてラルバは壮司が装着している物へと視線を移した。

「フードを被る事でその者の正体を隠蔽する『隠者いんじゃころも』。対象の内部に重さを与える『睥睨へいげい御手みて』。そして・・・・・・全てを殺す『フェルフィズの大鎌』。それらの神器に加えて守護者としての身体能力。それでも未だにあの2人には届かない」

 ラルバは壮司に()()()()()()神器の名を呟く。そして難しげな顔を浮かべた。

「・・・・・でもらにゃきゃならんのでしょ? レイゼロールを。それがあなたさんの願いだ、ラルバ様」

 そんなラルバに対して、壮司は変わらずヘラリとした顔でそう語りかける。壮司の言葉にラルバはゆっくりと、重く頷いた。

「・・・・・・・・ああ、そうだ。俺はレイゼロールを殺したい。それが俺の望みだ」

「光の女神ソレイユを何千年も続くこの争いから解放するため、ですか。笑うつもりは毛頭ありませんが、健気っすよね。惚れた女のためってやつですか?」

 ラルバがレイゼロールを殺したがっている理由を知っている壮司がそう言葉を述べる。どこか茶化すような壮司の言葉に、ラルバはギロリとした目を壮司に向けた。

「そんなものじゃない。これはただの俺のエゴだ。ソレイユが望んでいるのは、今も変わらずレイゼロールを絶望の闇の中から救う事。・・・・・・だから、レイゼロールを殺したいと思っているのは、どこまで行っても俺のエゴだ」

 そう。これは、目の前の人間を使ってレイゼロールを殺すという計画は、全てラルバのエゴから始まったものだ。ソレイユに、好きな女にこれ以上苦しんでほしくない。例え、ソレイユに恨まれる事になったとしても構わない。それでソレイユが長年の呪縛のような思いから解放されるのなら。だから、これはラルバのエゴなのだ。

「そいつは悪うござんした。だけどまあ、安心してくださいよ。レイゼロールは必ず殺してみせます。どれだけ無理ゲーでも、絶対にチャンスはあると俺は思ってる人間すから。俺の願いは既に3件達成されてますしね。なら、やらねえと」

 壮司は少し真剣な顔になった。そんな壮司に、今度はラルバがこう言葉を述べる。

「どうしようもない悪人を殺したい・・・・・か。俺は闇奴・闇人化した者に限るという条件をつけ、それを叶える力を、『フェルフィズの大鎌』を君に与えた。そして、君はそれを叶えた」

「ええ。ラルバ様には感謝してますよ。おかげでまあ・・・・・・・・色々とスッキリしましたよ。これでいつでも悔いなく地獄に行ける」

 先ほどのラルバとは違い、壮司はあくまでいつも通りの軽薄なヘラヘラとした顔で頷いた。そう。壮司は既に3人殺している。それが壮司の願いだった。その願いを叶えた代わりに、壮司はラルバの願い、レイゼロールを殺したいという願いを叶える。これがラルバと壮司が交わした暗い契約だ。

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