第976話 カケラ争奪戦 アメリカ5(2)
「ちっ、逃したか・・・・・・・・」
いい機会だから、そろそろあの黒フードが何者なのか確かめたかったのだが。影人は舌打ちをしながらそう呟いた。
(まあいい。今回の仕事は果たせたからな。さて、なら俺もレイゼロールと金髪を追うか。闇の力が世界に奔っていないって事は、まだレイゼロールがカケラを吸収してないって事だが・・・・・・せいぜい頑張ってくれよ、金髪)
影人は上空へと浮遊した。そして、レイゼロールとソニアが向かっていった方向へと空を駆ける。
(ソレイユ、悪いが金髪とレイゼロールのいる位置を教えてくれ。お前なら金髪の位置が分かるだろ?)
影人は念話でソレイユにそう言った。ロンドンの時とは違い、現在レイゼロールの気配は隠蔽されている。ゆえに影人には現在レイゼロールが正確にどこにいるか分からなかった。
『分かりました。と言っても距離はそれほど離れていません。ソニアとレイゼロールは空中で戦いを繰り広げています。そこから北東1キロほど離れた場所です』
(分かった。サンキュー)
ソレイユから2人がいる場所を教えられた影人は、礼の言葉を述べるとその位置目掛けて夜空を進んでいった。
「『音の流星群よ、レイゼロールに向かって降って』!」
一方、影人が追っているソニアとレイゼロールはというと、ソレイユが言うように空中で戦っていた。ソニアはマイクにそう言葉を飛ばす。すると目には見えない、浄化の力を宿した音の流星たちが、一斉にレイゼロールを襲った。
「無駄だ」
だが、レイゼロールは自分を完全に覆うように闇色の障壁を展開した。ソニアの音の流星は全てその障壁に阻まれた。
「・・・・邪魔をするな光導姫。いま貴様に構っている暇はない」
音の流星群が止んだ事を確認したレイゼロールは、虚空から闇色の腕を複数呼び出し、それをソニアへと向かわせた。ソニアは自分に向かって来る腕に対抗すべく、新たにマイクに言葉を吹き込む。
「『闇の腕は全て消え去る』!」
ソニアがそう言うと、ソニアを襲わんとしていた闇の腕は全て溶けるように虚空に消え去った。
「言葉を述べるだけで現象を現すか・・・・・厄介だな」
「そう言う割には厄介そうな表情には見えないけど。レイゼロール、あなたはいったいこの場所で何を手に入れようとしているの?」
互いに空中で浮かびながら対峙するレイゼロールとソニア。ソニアの言葉を受けたレイゼロールは、こう言葉を呟いた。
「・・・・・なるほど。ソレイユから中途半端に吹き込まれたか。闇奴の反応がなく我が現れた事でそう予測したか・・・・・・・」
レイゼロールは続けてソニアの言葉に対する答えを返した。
「お前に答える義理はない。我の邪魔をするというならば・・・・・消すだけだ」
「ッ!」
レイゼロールから発せられる氷のような殺気を浴びたソニアがその顔を厳しいものにする。いつでも対処できるようにソニアが一際強くマイクを握りしめた時だった。空中であるにもかかわらず、何者かがこの場へと乱入してきた。
「・・・・・具合はどうだ、レイゼロール」
「スプリガン・・・・・・・・」
空中の戦場に乱入してきたのは、先ほどまでソニアが戦っていた怪人であった。




