第970話 カケラ争奪戦 アメリカ4(1)
(っ! 黒フード・・・・・・・やっぱり現れてやがったか・・・・)
自分の後方に現れた黒フードの人物とレイゼロールにチラリと視線を向けながら、影人は内心でそう呟いた。この様子だと、どうやら黒フードとレイゼロールは戦っていたようだ。
「レイゼロールと・・・・・誰だろうあの人・・・・? 知ってる『狙撃手』?」
「いや、俺も知らないな。だが見た感じは、レイゼロールと敵対してるみたいだな」
戦場に現れた黒フードの人物に、ソニアとショットはそう言葉を交わし合う。謎の人物の登場に、2人は顔を疑問の色に染めた。ちなみにではあるが、レイゼロールたちが現れた衝撃からか、白い人影たちの演奏は止んでいた。
「・・・・レイゼロール、ずっとそいつと戦ってたのか?」
影人は依然ソニアたちを警戒しながらも、レイゼロールにそう言葉をかけた。まだレイゼロールがカケラの気配を探れていないかを確認するためだ。
「・・・・・ちょうど光導姫が光臨したあたりからだ。お前が言っていた、この者の新たなる力というのを確かめたかったからな。ゆえに、気配はまだ探りきれていない」
レイゼロールは影人の方に視線を向けるとそう答えた。どうやら影人の意図は理解していたようだ。
「そうか・・・・・・・・大体あと何分くらいあれば探れそうだ?」
「正確にはまだ分からないが・・・・・大体5分といったところか。その者が現れる前に多少は探っていたからな」
「・・・・・・5分か。分かった、なら後はそいつも俺に任せろ。その時間は俺が稼ぐ。お前はどこかで適当に探ってろ」
影人は黒フードの人物に軽く右の親指を向けながらレイゼロールにそう言った。
「・・・・・いいのか? いくら貴様といえども・・・・・」
「問題はない。だから、さっさとしろ」
レイゼロールは光導姫や黒フードの方を見ながらそう言葉を漏らすが、影人はすぐにそう答えを返す。レイゼロールが言いたい事は分かっている。光臨した光導姫に、狙撃者(おそらくは守護者だろう)、更には黒フードの相手をするのは厳しくはないかという事だろう。影人はそれでも大丈夫だと言ったのだ。
「・・・・分かった。ならばそうさせてもらう」
レイゼロールは最後にそう言うと姿を消した。透明化ではない。おそらくは瞬間移動でどこか死角の近場へと飛んだのだろう。さて、ここからがまた厄介だ。
「・・・・・・・・」
レイゼロールという対象を見失った黒フードの人物はゆらりと立ち上がり、影人の方へと体を向けて来た。予想していたが、ターゲットを影人へと移したらしい。その右手に持つ大鎌を構えてくる。
「なんだかよく分からないけど・・・・・・・君との戦いはまだ終わってない。残り時間の事もあるから、ここからは更に全力で行くよ♪」
ソニアも影人にそう言葉を掛けてきた。今の出来事でまた貴重な時間は1分ほど稼げたが、まだソニアの光臨時間は3分ほどある。油断は出来ない。
「・・・・!」
影人の背後にいた黒フードの人物が左手を影人に向ける。すると左手に装着されていたガントレットに黒いオーラのようなものが纏われる。次の瞬間、影人の体を凄まじい重さが襲った。
「っ・・・・・!?」
中国の時と同じ、とても立っていられない重さに影人はつい片膝を地につける。影人が片膝をつけたのを見た黒フードは、影人の方へと走って向かって来た。
「おお? ・・・・よく分からんがチャンス!」
同時にその光景を見ていたショットも、影人に向かってライフルの引き金を引いた。




