第968話 カケラ争奪戦 アメリカ3(3)
『そうです影人。それこそがソニアの真の力。いくつかの制限は無論ありますが、言葉をマイクに吹き込むだけで、その事象を引き起こす。その破格の力ゆえに、ソニアはランキング2位なのです』
ソレイユも影人の言葉を肯定した。確かに光臨後の能力とはいえ、それ程までの能力ならば、『提督』よりも上という事は納得だと影人は思った。
「・・・・・はっ、だが俺に死ねとか戦闘能力を無効にするとか言わなかった事を考えると、お前の能力には制限があるようだな。それが叶うのならば、お前は最初にそういった類の、自分の勝ちが確定するような事を言っているはずだ」
ソレイユの言葉を参考にしながら影人はソニアにそう言葉を掛けた。そう、一見無敵の能力に見えるソニアの能力には何かしらの制限かルールがある。影人のおよそ万能な力にも出来ない事はある。それはソニアも同じはずだと、影人は考えていた。
「すごいね、スプリガン。この一瞬でそこまで見抜いちゃうんだ。君に詳しくは言わないけど、確かに私の能力にはいくつかの制限やルールがある。・・・・・・でも、それを抜きにしても私の能力はかなり強いよ」
「ふん。それが自惚れじゃないのは分かるが・・・・舐めるなよ『歌姫』。お前はまだ俺の、俺の力の深淵を知らない。どっちの能力が強いか試してみようじゃねえか」
強気な笑みを浮かべながらそんな事を言って来たソニアに、影人も不敵に笑いながらそう言葉を返した。確かにソニアの能力には驚かされたが、スプリガンの力ならばソニアの能力に対応する事は可能だ。その証拠に、先ほどソニアの能力による金縛りを影人は自身の能力で破る事が出来た。
(それに今のこの適当な問答で少し時間が稼げた。金髪、光臨したお前にとって1分1秒は値千金のはずなのに、ありがとな。俺と問答してくれて。おかげで、多少有利になった)
影人は内心でニヤリと笑う。光臨は強力な力だが、10分という制限時間がある。制限時間になると変身が強制解除され、光導姫は無力な存在となる。ゆえに、光臨した光導姫に対する対処法として1番有効なのは時間を稼ぐ事だ。
(どちらにしろ、俺の仕事はレイゼロールがカケラの気配を探るまでの時間稼ぎ。なら、ゆっくりと戦わせてもらうぜ金髪)
影人は自分の周囲の空間から、異形の怪物や闇の騎士といった、闇のモノたちを呼び出した。ざっと70体ほど。闇のモノたちはソニアの姿を確認すると、全員ソニアに向かって突撃を開始した。
「っ、こんな事も出来るんだ・・・・でも、『誰も私に触れる事は出来ない』♪」
ソニアがマイクにそう声を入れる。するとソニアを囲むように、ドーム状の光の障壁が展開された。闇のモノたちはその障壁を破ろうと爪や剣で攻撃するが、障壁はビクともしなかった。
「『私を襲う怪物たちは、全て光に包まれ消え去る』♪」
能力により、ソニアの言葉が現実の事象に変化する。影人が召喚した約70体の闇のモノたちは、突如白い光に包まれ始めこの世界から消え去った。それは、あまりに一瞬の出来事だった。
(この程度の奴らなら問答無用で消すか。なら次は・・・・・・・)
影人は再び透明化を使用した。今の影人の目的は時間稼ぎ。積極的に攻撃する必要はない。透明化は先ほど破られたが、影人はある事を試したかった。
「あらまた消えちゃったか。案外恥ずかしがり屋さんなんだね。でもそれは意味ないよ。『スプリガンはその姿を私の前に現す』♪」
消えた影人に対してソニアはそう言葉を放った。するとその次の瞬間に、影人の透明化は解除されてしまった。
(っ、やっぱり透明化は黒騎士と同様に解除されるか。簡単に言うと、敵のバフを消せるって事か)
透明化が解除された影人はソニアの能力について取り敢えず1つそう理解した。




