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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
964/2051

第964話 カケラ争奪戦 アメリカ2(3)

(っ・・・・・・・!? 無差別攻撃か・・・・!)

 影人はソニアの意図を理解した。無作為の全方位への攻撃。無茶苦茶ではあるが、確かにこの方法は透明化への1つの対抗策だ。

(どこが弾けるか分からないから、速さは意味を成さない。予測が出来ないからな。ちっ、仕方ねえ)

 今はまだ運良く影人に攻撃が当たっていないが、透明化をしたまま攻撃を受けても、虚空を叩く音と影人の体を叩く音の違いから影人の位置が特定されてしまう。もちろん、当たらずにソニアに近づければそれが1番いいが、それは不確定だ。ならば、結局は透明化を解除するしかない。影人はソニアの背後に移動し透明化を解除すると同時に、右手に闇色の拳銃を創造した。

(悪いな金髪。片腕のどっちかはもらうぜ)

 影人はその拳銃をソニアの左腕に向け、早撃ち気味に何の躊躇もなく発砲した。

 現在の影人は表向きはレイゼロールの仲間。光導姫と敵対しなければならない。ゆえにポーズは必要なのだ。スプリガンはちゃんと光導姫と戦い傷を負わす人物であると。

 だが、影人が本当に属しているのは光導姫や守護者と同じいわゆる光サイド。光導姫や守護者を殺す事は出来ない。ゆえに、負傷を負わせる事が影人の限界だ。

 しかし、ソニアにはあわよくばレイゼロールのカケラを回収してもらいたい。そのためには移動手段である足を傷つけるわけにはいかない。胴体は重要な臓器が集中しているため狙うわけにはいかない。ならば、場所は腕に限られる。腕ならば撃たれてもすぐには死なないだろうし、動く事も可能だ。それに、負傷は最悪ソレイユが治癒してくれる。ゆえに、影人はソニアの左腕に発砲した。

 影人は気がついてはいなかった。決して殺しはしないという事と、ソレイユの治癒という安心材料があるからといって、昔からの顔馴染みを躊躇なく撃てるという事が、全く普通ではないと。それは、いつしか影人がゼノに抱いた「死なないからといって、よくもまあ仲間を躊躇なく壊せる」という思いと同質のものだ。あの時影人はゼノに異常性を感じていたが、影人も他人から見れば、きっと異常だと思われるはずだ。

 まあ、それに自分自身で気づいていないという事が、やはり帰城影人という少年は既に精神面が一部壊れているという一種の証明なのだが。

「っ!? 防御の(イージス)――」

 背後からの発砲音に気がついたソニアが、歌を自身の身を守るものに切り替えようとした。しかし、弾丸の速度には間に合わずに――

「〜ッ!?」

 ソニアの左腕は弾丸に貫かれた。ソニアは弾丸に腕を撃ち抜かれた激痛に顔を顰め、右手で左腕を掴んだ。腕からは赤い血が流れ出る。

「ッ、『歌姫』!? 野郎、ウチの国が誇る歌姫に・・・・・・・・!」

 スコープに負傷したソニアを捉えたショットは、ソニアに弾丸が飛んできた位置からスプリガンの場所を捕捉すると、ライフルをスプリガンに向けた。そして、スコープ内にスプリガンの姿を確認すると、ショットはその引き金を引いた。

 発砲音と共にマズルフラッシュが煌めく。放たれた弾丸は約1キロ先のスプリガンの頭部を狙い、真っ直ぐに飛んだ。

『影人、お前から見て左方向から真っ直ぐに弾が飛んで来る。頭を狙ってな』

(分かった。サンキュー)

 影人の中にイヴの忠告が響くと同時に、影人は自身の眼を闇で強化した。瞬間、世界がスローに映る。反応速度を爆発的に上げる事による、疑似的な体感時間の延長効果だ。

(避ける必要は・・・・・ねえな。少しやってみたかった事でもするか)

 影人は顔を左に向け自分に向かって来る弾丸を視認すると、左手に『硬化』の力を施した。そして、左手を伸ばし、左手でライフルの弾を掴んだ。

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