第962話 カケラ争奪戦 アメリカ2(1)
「・・・・・・・・・・残念か。それはお前の勝手な言い分に過ぎないな、光導姫」
内心でソニアとの再会について少し思いを巡らせていた影人だったが、そんな事は表には出さず、あくまでスプリガンとしてソニアにそう言葉を返した。
「あはは、まあ確かにこれは私の勝手な押し付けだけどさ・・・・・でも、それでも私は君に期待してたんだよ。君が私たちと一緒に戦ってくれるかもしれないって」
スプリガンにそう言われたソニアは苦笑いを浮かべる。ソニアの衣装は釜臥山で見た時と同じ、日本のアイドルと似た服装だ。制服を改造したような可愛らしい感じの衣装とでも言えばいいか。
「・・・・・だから、それが勝手な言い分だと言っている。お前のくだらない理想を俺に押し付けるな」
影人はソニアに向ける視線を少し厳しくした。苛ついている雰囲気を出すために。もちろん本気で苛ついてはいない。あくまでこれは演技だ。それらしい感じにするための。やはり、スプリガン時でもこいつはどこまで行っても前髪なのだなと感じさせられる。終わりである。
「レイゼロール、下がれ。出来ればしばらくどこかに身を隠せ。そして、そこで気配を探れ。この場は俺が引き受けた」
影人はレイゼロールに小さな声でそう言った。光導姫が現れてしまったからだ。まあ、影人は絶対に現れると知ってはいたが、一応表向きこの事態はまた予想外の事態でもある。ならば、先程レイゼロールにも言われた通り、影人の役目は光導姫たちを足止めして、レイゼロールがカケラの場所を特定する時間を稼ぐ事。中国の時と同じだ。身を隠せと言う言葉は、近くに狙撃手がいるからという単純な理由だ。
「・・・・ならば任せた。我は少し身を隠す。・・・・・・・・頼んだぞ」
レイゼロールは影人の言葉に頷くと、透明化で姿を消し、ドーム状の障壁を解除してどこかへと移動した。
(透明化か。確かに狙撃手相手にはかなり有効だな。俺も後で使うか)
影人は狙撃手相手への対抗策を考えながらも、ソニアを見つめこう宣言した。
「来いよ『歌姫』。俺がお前たちには計れない深淵だって事を教えてやる」
「じゃあ、私はあなたを計れるように理解するよ。この戦いを通して、ね♪」
不敵に笑みを浮かべるスプリガン。それに対してソニアは明るい笑みを浮かべた。
始まるはアメリカでのカケラ争奪戦。相対し今から戦いを繰り広げるは、影人とソニア。それは一種の運命か、はたまた皮肉か。
それはとにかくとして、
スプリガン対『歌姫』の戦いの幕は上がった。
「んー? レイゼロールの姿が消えちゃったか? おいおいマジかよ。これじゃあ、レイゼロールは撃てねえじゃん」
影人とソニアが相対している市街地の道路から約1キロほど離れた、とある建物の屋上。そこでライフルのスコープを覗いていた1人の男――守護者ランキング8位『狙撃手』のショット・アンバレルは、スコープから一瞬顔を上げるとそうボヤいた。




