第961話 カケラ争奪戦 アメリカ1(4)
(さて、そろそろ光導姫と守護者が現れるタイミングか。ソレイユ、今回はいったい誰が――)
影人が内心でソレイユに語りかけようとした時だった。何の、何の前触れもなく、
影人の隣にいたレイゼロールの頭部が、弾丸によって撃ち抜かれた。
「ッ!?」
肉と骨を弾丸が貫く音が響き、レイゼロールの頭部から真っ赤な血が飛び散った。その光景を見た影人は驚いた表情を浮かべた。
「おい、レイゼロール・・・・・!」
影人は反射的にレイゼロールにそう言葉をかけた。これは演技ではない。ただ、いきなりレイゼロールが撃ち抜かれたというショッキングな光景を見た事による影人の素の反応だった。
「ッ・・・・! 狙撃か・・・・・・・よくもやってくれたものだ・・・・」
頭を撃ち抜かれたレイゼロールは痛みに顔を顰めながらもすぐさま頭の傷を修復した。そもそも、レイゼロールは不老不死。頭を撃ち抜かれても死にはしない。
「取り敢えず降りるぞレイゼロール。ここは射線上だ」
「ああ・・・・・」
影人とレイゼロールは建物の屋根から飛び降りた。狙撃手がどこにいるのかはまだ分からないが、同じ場所にいるわけには行かない。建物はそれほど高くはなく、10メートルあるかないかだ。身体能力が一般的な人間よりも遥かに高い2人は、難なく地上に着地した。
「・・・・今のは光導姫か守護者どちらかの狙撃だろうな」
「おそらくな。夜が深いからだと思ってたが、近くに人気がまるでない。ならば・・・・・・・・」
影人とレイゼロールは自分たちを覆うように小さなドーム状の障壁を展開させた。狙撃手対策のためだ。そして、今の自分たちの状況について言葉を交わしていると、
「ハロー、レイゼロール。そしてスプリガン。あなたと会うのは、日本の時以来だね♪」
そんな声と共に、1人の少女が現れた。軽やかな靴音を響かせながら。
「でも、残念だな。あなたはもう私たちの敵になってしまった。私はファレルナが信じたあなたを信じたかったけど・・・・・・レイゼロールと一緒にいるところを見ると、本当にあなたは敵になったんだなって悲しいよ」
「っ・・・・・」
「・・・・・良くない予想が当たったな」
その少女は続けてそんな言葉を述べる。自分たちの前に現れた、オレンジ色に近い金髪の髪が特徴的な少女の姿を見たレイゼロールは厄介そうな顔を浮かべ、影人はそう言葉を呟いた。
(はっ、まあそうだよな。アメリカでレイゼロールの相手ができる最上位クラスの光導姫なんて、俺はおまえくらいしか知らない。やっぱり、お前が来やがったか)
またね、という言葉が影人の脳内に蘇る。それは、現れた少女が2ヶ月ほど前に自分に言った別れの言葉。けっこう期間の短いまたねだったなと、影人は内心で思った。
(なあ、金髪・・・・・・・・・)
影人は自分の前に現れた光導姫、光導姫ランキング2位『歌姫』、ソニア・テレフレアを見つめながら、心の中で彼女のあだ名を呼ぶのだった。




