第949話 闇に染まる妖精(2)
「・・・・・好きにすればいいわ」
ポツリとそう言ったのはダークレイだった。ダークレイは円卓の面々から顔を背けていた。
「ふむ・・・・・・・・お前はどう思うゼノ?」
『十闇』のそれぞれの者たちの意見を聞いたレイゼロールは、まだ意見を述べていない最後の1人、ゼノにそう聞いた。
「うーん・・・・・俺は彼と初めて会ったからよく分からないな。でも思うのは、そこの彼・・・・スプリガンを仲間にするって決めたのはレールなんでしょ。なら、そもそも賛成するとか反対するとか言うのがおかしいんじゃない?」
ゼノは一瞬その琥珀色の瞳を影人に向けると、正面を向き不思議そうに首を傾げた。
「「っ・・・・・!」」
「うっ・・・・・・」
「そう言われるとね・・・・・」
ゼノの言葉を受けた反対派、フェリートと殺花、キベリア、響斬はそれぞれ困ったような反応を示した。そもそも、『十闇』は形式上はレイゼロールの部下だ。言う事を聞かない者もいたり、シェルディアなどは例外だが基本はそうだ。
ゼノの発言は尤もなものだった。
「・・・・・・・・・身も蓋もない事を言うが、ゼノの言う通りだ。我は既にスプリガンを仲間に加える事に決めた。最低限信頼できるかどうかは、我が既に確かめた。スプリガンの目的に関しては後で貴様らに教える。いいな、スプリガン」
「好きにしろ。お前に話した以上、隠す理由はない」
「・・・・・・・・ならば話はこれで終わり。お前たちの中に不満を抱く者がいるのは重々承知だが、これからはそうなる。無理に不満を隠さなくともいい。だが、最低限の関係だけ築け。以上だ」
そう言って、レイゼロールはこの話を終わらせたのだった。
こうして、影人は正式にレイゼロールサイドに属する事になった。
「ジー・・・・」
「・・・・・・・・俺に何か用か?」
全ての話が終わり影人が席から立とうとすると、影人は自分をジッと見つめてくる視線に気がついた。その視線の主――ゼノに影人はそう言葉を掛けた。
「ん? ああ、用とかは特にないよ。ただ、君がどんな人なのかなーって見てただけ」
影人にそう聞かれたゼノは、何でもないように答えを返した。そして、変わらず影人を見続ける。
「・・・・・あんたは確かゼノだったか。お互い、今日が初対面だったな」
「うん、そうだね。話を聞いた限りじゃ、君かなり強いんでしょ? レールと何度も互角に戦ったり、シェルディアとも互角の勝負をしたって聞いたよ。凄いんだね」
黙っていてもまた無言でずっと見続けられるだけだと思った影人はゼノにそう語りかけた。影人の言葉を受けたゼノは、ぼんやりとした笑みを浮かべた。レイゼロールの事をその愛称で呼ぶ限り、この闇人はレイゼロールと付き合いが長いんだなと、影人は思った。




