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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
944/2051

第944話 集う十の闇(1)

 闇の穴を潜り、影人とレイゼロールは中国に行く前に集合した公園に再び戻って来た。レイゼロールがこの場所を転移先に選んだのに別に深い意味はない。ただ、パッと浮かんだ先がここであったというだけだった。

「・・・・・・取り敢えずは今日はこれで終いか」

「・・・・ああ。まさか光導姫と守護者だけでなく、あの『フェルフィズの大鎌』を持つ者まで現れるとは思っていなかったが・・・・・・・・」

 影人とレイゼロールはそう言葉を交わし合った。幸運な事にと言うべきか、周囲に人の姿は見えない。まあ夜もかなり深い時間だ。当然と言えば当然かもしれないが。

「そいつだが・・・・・・新しく左手に黒いガントレットを装備してた。多分ロンドンの時には着けてなかったはずだ。あのガントレットの効果だと思うが、俺はあいつに左手を向けられた直後に、体に凄まじい重力を感じた。まともに動けない程のな。まあ『破壊』の力で何とかその重さは壊せたが」

 レイゼロールの言葉に出た「フェルフィズの大鎌」を持つ者。その人物についての新たな情報を、影人はレイゼロールに伝えた。

「貴様が膝をついていたのはそれが原因か・・・・・恐らくは、何かしらの力が付与された防具だろう。『フェルフィズの大鎌』だけでも厄介だというのに、更に厄介な力を手に入れてくれたものだな・・・・」

 その情報を聞いたレイゼロールは、深刻な表情でそう呟いた。新たな力を得た黒フードの人物。それは全てが謎に包まれた黒フードの人物の危険度が、更に上がったという事だ。

「・・・・・・・・それで、テストの結果はどうなんだ。俺はしっかりと足止めをしていたと思うが・・・・・・ついでに、お前の命も助けてやったわけだが」

 これ以上黒フードの話題を続けてもあまり意味はないと思った影人は、レイゼロールにそう言った。

 レイゼロールは言った。影人が本当に信用に足るかどうか見極める機会にすると。その結果を、一応影人は聞いておこうと考えた。

「・・・・・・取り敢えずは合格と言っておこう。お前は我の命を助けた。それは事実だ。足止めに関しても、お前は充分に果たした。ゆえにな。・・・・だが、忘れるな。我とお前の間には、未だに確執があるという事をな」

「・・・・・・・・分かってるぜ、そんな事はな。お前も忘れるなよ。お前も俺が憎む神という種族だ。俺がお前の命を助けたのは、俺の目的のためだ」

 レイゼロールがスゥと冷たい目を向けてくる。影人も同じように冷めた目をレイゼロールに向けながら、そう言葉を返した。

「・・・・・・・・理解しているのならばいい。明日の夜9時。もう1度この場所に来い。理由は明日に話す」

「・・・・・・分かった。明日の夜9時だな」

「ああ・・・・・では、さらばだ」

 影人にそう伝えたレイゼロールは別れの言葉を述べると、自身の影に沈んだ。そしてその影も、夜の闇に溶けるように消えていった。

「・・・・・俺も帰るか」

 1人になった影人は、どこか少し疲れたようにそう呟くと自分も公園を去った。











「・・・・・・・・・・・・」

 10月5日金曜日、午後8時55分。昨日レイゼロールが指定した約束の時刻まであと5分。スプリガンに変身した影人は、再び昨日訪れた公園に来ていた。

「・・・・どうやら、時間はしっかりと守れるようだな」

 それからきっかり5分後。公園の木の影からレイゼロールが現れた。レイゼロールは影人の方へと歩いて来た。

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