第908話 光と闇の想い(5)
「輝け、私のこの想い。全てを明るく照らす太陽のように――」
「輝け、私のこの想い。全てを優しく照らす月のように――」
陽華と明夜がそれぞれ言葉を唱え始める。すると、陽華と明夜の全身にオーラが纏われた。陽華は透明感のある赤、いわゆるクリスタルレッドの。明夜は透明感のある青、いわゆるクリスタルブルーの。
「この右手に宿れ、我が光よ。我を支えろ、光の片翼よ――」
陽華の両手のガントレットが光となって陽華の右手に宿る。そして陽華の左半身、その背に光り輝く片翼が顕現した。
「この左手に宿れ、我が光よ。我を支えろ、光の片翼よ――」
明夜が地面に突き刺していた杖が光となって明夜の左手に宿る。そして明夜の右半身、その背に光り輝く片翼が顕現した。そして、2人は光が宿った手をお互いに重ね合わせた。
そして、奇しくもダークレイと2人のその準備は同時に完全に整った。
「最大闇技発動、ダークデスペレイション・ストリーム!」
「「届け! 私たちの浄化の光! いっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
ダークレイがそう叫びを上げると、ダークレイの両手から凄まじい闇の光が奔流となって放たれた。対して、陽華と明夜がそう叫ぶと、2人の重なった手から凄まじい光の奔流が放たれた。
白と黒、2つの光の奔流はやがて激突した。その瞬間、大気が軋み大地が震えるほどの衝撃が世界を襲った。凄まじい衝撃波が発生し、風が荒れ狂う。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」
ダークレイ、陽華と明夜は絶叫に近い声を上げながら、必死に力を込め続けた。そのせいか、黒い光と白い光は拮抗していた。
「こんなものじゃ、こんなものじゃないでしょう! 私の絶望、私の闇! こんな光に負けるような、そんな想いじゃ絶対にないはずでしょ!? もっと、もっと燃えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ダークレイが自身の絶望と闇を燃やす。これまで以上になく、本当に全てを込めて。その結果、ダークレイに闇の力が漲り、その闇の力は奔流を強めた。
「「っ!?」」
拮抗の天秤が傾く。黒の光が優勢に。白い光は徐々に黒の光に押され始めた。
「負けない・・・・・絶対に、絶対にッ! 私の、私たちの想いは!」
「私たちの想いは2人ぶん! 1人の想いには負けはしないのよッ!」
だが、負けじと陽華と明夜も自分たちの想いを燃やした。不屈の闘志と輝くような意志を。
「「負けるもんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
その意志が光の力となって、白の奔流を強めた。押し込まれていた白い奔流が、黒い光を押し戻していき、再び拮抗の状態に戻る。先ほどよりも強くなった奔流同士がぶつかる事によって、衝撃波の強さも、巻き起こる風も更に凄まじくなった。
少しの間再び続いた拮抗状態。だが、
「ぐっ・・・・!」
「くっ・・・・!」
ここに来て元々の力の差が出たのか、ダークレイの闇の奔流がジリジリとまた白い光の奔流を押し込み始めた。




