第907話 光と闇の想い(4)
「だ、大丈夫、陽華? 私は右肩の辺りの骨を砕かれて話すのもやっとって感じだけど・・・・・」
「わ、私も左腕使えなくなったからかなりヤバい感じ・・・・でも、まだ戦えるのは戦えるよ、明夜」
飛ばされた先には、左手で杖を持ちながら痛みに顔を歪ませた明夜がいた。明夜の問いかけに、陽華は立ち上がりながらそう答えを返した。
「レッドシャイン、ブルーシャイン。あんた達はよくやったわ。土壇場での『光臨』の取得、そこからの健闘・・・・・・・闇臨をした私にもここまで食らい付いた。私にまだこんな気持ちが残っていたのには驚いたけど・・・・私はあんた達に敬意を抱くわ」
負傷した陽華と明夜に、離れた位置からダークレイがそう言葉を投げかけた。ダークレイ自身も自分がこんな言葉を2人に送るなんて思っていなかった。だが、気がつけばそんな言葉が半ば自然と出ていたのだ。
「だから、その意を表して2人同時に痛みを感じさせる間もなく死なせてあげる。闇臨した私の最大闇技で。闇技全解除」
ダークレイは続けて2人にそう言うと、自分の全身と拳に纏われていた闇を解除した。
「翼よ、我が両手に纏え」
ダークレイの片翼がその言葉を受け、1人でに動き出す。片翼はそれぞれパーツごとにダークレイの両手に合体していく。合体したその両手は、どこか凶々しかった。
「闇よ、翼となって我を支えろ」
次にダークレイの背から闇色のエネルギーが両翼のように展開された。そしてダークレイは両手を陽華と明夜の方へと突き出した。まるで、狙いを定めるかのように。
「我が闇よ、全てを焦がせ。全てを消し去れ。全てを堕とせ。この手に集え、我が全ての闇よ」
ダークレイがそう詠唱すると、ダークレイの両手に凄まじい闇が集まり始めた。大気が震えるほどの闇のエネルギーが。
「あ、あのエネルギーは・・・・・マ、マズイ・・・・・!」
ダークレイに集まっていく闇の力を見た光司が、震えたような声でそう呟いた。未だに光司の体は全く動かない。光司はただ、この戦いを見守る事しか出来ていなかった。
(今までけっこう危ないところはあったが・・・・この攻撃が通れば本当にヤバいな。これが通りそうになった時が、朝宮と月下を助けるタイミングだな)
同じくずっと戦いを見ていた影人もそんな事を思った。今までも助けに入るべきタイミングはあった。だが、影人はそうしなかった。もちろん目的のためという事もある。しかし、それ以上にこの戦いの中で急激に成長している2人に、魂と命を削りあっている戦いに出来るだけ介入したくない。影人はそんな事を思っていた。
(さあ、どうする朝宮、月下。どちらも負傷したこのタイミングでこの攻撃。お前たちは一体どうする? 見せてみろよ。お前たちの決断を、力を、この俺に)
金の瞳をジッと陽華と明夜に向けながら、2人を見守り続けて来た怪人は、内心でそう呟いた。
「み、明夜。左手は生きてるよね?」
「え、ええ。そういう陽華こそ、右手は使えるのよね?」
「うん。・・・・考えてる事は、同じみたいだね」
「全く以て、そうみたいね・・・・」
ダークレイに集まっていく闇の力の凄まじさを感じながら、陽華と明夜はお互いにそう言葉を交わし合った。2人とも負傷した傷が痛むが、それでも何とか強気な顔を浮かべながら。
「なら、かましてやりましょ陽華。私たちのありったけの想いを・・・・・・・・!」
「そうだね・・・・! やろう明夜! これが、私たちの最後の攻撃・・・・・・・・!」
2人は無理矢理に笑顔を浮かべると、それぞれ片手を前に、ダークレイの方に突き出した。陽華は右手を、明夜は左手を。




