第906話 光と闇の想い(3)
「あっ・・・・・・・・」
「ッ、シッ・・・・!」
急激なスピードに再び顔を顰めつつも、ダークレイは明夜へ右拳で攻撃を行った。
「あぐっ!?」
明夜はダークレイの拳を右肩に受けた。ダークレイの破壊力ある拳は明夜の右肩の骨をやすやすと砕いた。そして拳の衝撃から地面を転がった。
「闇技解除。闇技発動、ダークアンチェイン・セカンド」
ダークレイは追撃は行わなかった。いや、行えなかったという方が正しいか。2度目のセカンドのスピードモードのガタがダークレイを襲い、ダークレイは追撃出来なかった。
「っ、明夜!」
一方、ダークレイに蹴り飛ばされ闇の光の攻撃を受けていた陽華は、闇の光の1つを左肩に受けダメージを負っていた。左腕は上がらない。たぶん、この戦いが終わるまではまともには使えないだろう。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
だが、陽華は気合いの雄叫びを発しながら、ダークレイの方へと駆けた。闘志を依然燃やし続けながら。右手の拳を握り締めて。
「闇技解除」
自分の方に向かって来る陽華に視線を向けながら、陽華を襲わせていた闇の光を翼へと戻した。そして、向かって来る陽華に対して、自分からも陽華へと近づいた。
「光炎よ! 我が手に宿れッ!」
右手のガントレットに装着されていた円型の装置のようなものが開く。陽華の右手に纏われていた炎が、渦巻くようにその中にあった無色の宝玉に吸収されていく。ガントレットは陽華が闇臨前のダークレイに一撃を浴びせた時と同じように、ガントレットの色がクリスタルレッドへ、宝玉が紅玉へと変化する。そして最後に円型の装置の周囲に、輝く光の輪が出現し、陽華の最大の威力を誇る拳は完成した。
「この拳で決める! 今度こそッ!」
ダークレイに陽華が必殺の拳を放った。陽華の放った拳は真っ直ぐにダークレイへと向かっていく。この拳が通れば、ダークレイは大ダメージを受けるか、浄化されるはずだ。
「闇技発動、ダークアンチェイン・セカンド・パワーモード。闇技発動、ダークブレット・セカンド。やれるものならやってみなさい」
ダークレイも自身の身体能力強化の形態をパワー特化の形態にしながら、闇を纏っている拳に力を込めた。そして、その右の拳で陽華の拳に激突させた。
「はぁッ!」
「ふっ・・・・・!」
拳と拳を突き合わせた威力が、衝撃となって世界に奔る。2度目の拳合わせ。1度目は結果的に陽華がダークレイにその一撃を浴びせた。果たして、2度目もそうなるのか。
「ぐっ・・・・・」
しかし、1度目とは違う点が2つだけあった。1つは陽華が左肩にダメージを受けているという事。力を全身に込めた結果、陽華はその傷が激しく痛むのを感じた。その結果、陽華の集中力や全身に込めた力が僅かだが阻害された。
「・・・・1回目の時より力が落ちてるわよ」
2つ目は、ダークレイが闇臨しているという事。ダークレイは闇臨した事により、パワー特化形態も強化されている。当然、1度目の時より拳を押し込む力は上がっている。
「っ!?」
その結果、陽華の拳はダークレイに押し切られ弾かれてしまった。
「・・・・・私をここまで追い込んだ褒美よ。せめて一緒に、同時に逝かせてあげるわ」
ダークレイは陽華に向かってそう言うと、陽華の胸ぐらを右手で掴んで、自分の後ろへと放り投げた。
「ぐっ・・・・・!」
ズサっと音を立てながら、陽華が地面に落ちた。無造作にけっこうな距離を投げられたので、落ちた衝撃はかなりのものだった。




