第905話 光と闇の想い(2)
「上!?」
「はあ!? 私が丹精込めて創った龍が気付かない内にやられた!?」
水氷の龍が無力化されたタイミングで、ダークレイの居場所に気がついた陽華と明夜。陽華はハッとしたような顔を浮かべたが、明夜はいつも通りというべきか、どこかズレたような反応をした。
「ッ・・・・・闇技解除。闇技発動、ダークアンチェイン・セカンド」
水氷の龍を無力化したダークレイは一瞬厳しいような顔を浮かべると、身体能力強化をバランスモードに戻した。
(やっぱり、セカンドのスピードモードはキツイわね。余りのスピードのせいで、単発的な使用しかできない。連続的に使えば、スピードに振り回されて体が壊れる)
ダークレイが自身のモードをすぐに戻した理由はそれだった。闇臨状態の身体能力強化のスピード特化形態は神速の速度を発揮する事が可能だが、単発的にしか使用できないという弱点がある。
一言で言ってしまえば強力過ぎるのだ。速度にダークレイの体がついてこない。闇人であり、闇臨したダークレイの肉体ですら、今の動きだけで全身の骨が軋んだ。
ちなみにではあるが、ダークレイの動きを見切っていた、レイゼロール、シェルディア、影人の3者はダークレイと同等のスピードで連続的に動く事が可能だ。レイゼロールと影人に関しては、一言で言えば神力がそれ程までに強力だからであり、シェルディアに関して言えば、規格外の力を持つ怪物だからだ。
「フッ・・・・・!」
ダークレイは再び今の自分が連続的に動ける最高速度になると、片翼を羽ばたかせ空中から地上にいる陽華へと強襲した。
「ッ!」
ダークレイは上空から蹴りを放って来た。陽華はその蹴りをサイドステップで回避した。地上に降りたダークレイはそのまま腰だめに構えた右拳を放った。陽華はそれも体を逸らして回避した。
「はぁッ!」
回避した陽華は、燃える左拳をダークレイに放った。ダークレイはその左拳を華麗に避け、陽華に闇纏う右拳を打つ。陽華はその拳をしゃがんで身を躱した。
「もらいッ!」
身を屈めた陽華は右足でダークレイの足元に足払いを掛けた。急な足元への攻撃。この戦いでダークレイに陽華がやられた事だ。
「甘いわ」
しかし、その程度の攻撃を受けるダークレイではない。ダークレイは両足で地を蹴り、足払いを回避した。
(地上から離れた! 空中で身動きは――!)
陽華はダークレイのその行動をチャンスと捉え、燃える拳で昇拳を放とうとした。だが、ダークレイはそんな陽華の行動に対して小さな笑みを浮かべた。
「バカね。私にこれがあるのを忘れたの?」
陽華がしゃがんだ姿勢から昇拳を放った瞬間に、ダークレイは片翼をはためかせた。その結果、陽華の昇拳はダークレイに当たらずに、決定的な隙を晒してしまった。
「っ!? しまっ――」
陽華がそう言おうとした時には既に遅かった。ダークレイは片翼の勢いを使って空中で身を捻り、陽華の胴体に蹴りを叩き込んだ。
「ぐっ・・・・!?」
まともにダークレイの蹴りを受けた陽華は苦痛に顔を歪め、その勢いで後ろに飛ばされた。
「闇技発動、ダークプリズムレイション」
ダークレイは片翼を無数の闇の光へと変えた。無数の闇の光は陽華の方へと向かっていく。
「陽華! くっ、氷の――!」
陽華のピンチを助けようと明夜が魔法を行使しようとする。だが、ダークレイはその明夜の行動を読んでいた。
「闇技発動、ダークアンチェイン・セカンド・スピードモード」
ダークレイは再びスピード特化の形態へと切り替えた。そしてそのスピードを以て、一瞬で明夜の懐へと近づいた。




