第900話 闇臨せし闇導姫(1)
「「ッ・・・・・!?」」
陽華と明夜が昏く輝く闇色の光に目を細める。先ほどと全く逆の展開だ。
(使うかダークレイ。その力を・・・・・・・・)
「え!? シェ、シェルディア様これって・・・・・・!?」
「これは・・・・・・・私も初めて見るわね」
「っ・・・・・・・・・・!?」
(おいソレイユ! この黒い光はまるで・・・・!)
『し、信じられません・・・・・・・・これは、これは・・・・・・・・!』
レイゼロール、キベリア、シェルディア、光司、影人、ソレイユらもその反応に驚きの色を含んでいた。唯一レイゼロールだけ、一見驚いていないように見えるが、内心ではダークレイがそれを使わざるを得ない状況になったという事に驚いていた。
黒い光が収まる。するとその黒い光の発生源であった闇人は――
「・・・・・・・・誇りなさい。私がこの姿を晒すのは、レイゼロールを除けばあなた達が初めてよ」
――案の定と言うべきか。その姿を先ほどまでとは少し変えていた。
まず黒と紫を基調としていたコスチュームには黒の透明感のあるレースのようなものが所々装飾されていた。フリルと相まって、少し可愛らしいと思う事も可能だが、どちらかというと神秘的といった方がしっくりくる雰囲気だ。両手の指貫グローブは何も変化はない。
下半身のスカートとそれを留める2本のベルトも劇的に変わってはいない。スカートは上半身の衣装のように黒い透明感のあるレースのようなものが装飾されているだけで、ベルトは2本とも紫色だったが、片方の横のベルトだけ黒色に変化していた。
ここまで見るとほとんど目立った変化はないように思える。だが、ダークレイには明らかに目立った変化が1つだけあった。
それはダークレイの左半身の後ろに浮かんでいる翼のようなものだった。この翼のようなものは、鳥のような生物的な翼ではない。何やら黒い棒のようなもので幾何学的に編み上げられた、非生物的な奇妙なものだ。機械のような片翼、というのが1番それらしいだろうか。
「っ、その姿は・・・・・・・・」
「いったい・・・・・」
ダークレイの片翼に目を奪われながらも、陽華と明夜は驚いたようにそんな言葉を漏らした。
「・・・・『闇臨』。光導姫の『光臨』を私の闇の性質で再現したものよ。一時的に私の闇の力を全て解放し、爆発的に自身の戦闘力を上げる・・・・・俗で簡潔な言い方をすれば、あなた達の『光臨』の闇版よ。まあ、私は闇人だからそれ以外の恩恵もあるけどね」
ダークレイは2人の驚きに答えを与えた。闇の力を全て解放した状態のため、ダークレイの闇人としての能力も遥かに上昇している。それが意味するのは例えば、自然治癒能力の向上や身体能力の向上といったものだ。この恩恵により、ダークレイが先ほど陽華から受けた全身に響き渡ったダメージや、光司から受けた切り傷もかなりの勢いで回復していた。
「まあその分、限界時間は光臨同様に10分。それを過ぎれば一定時間凄まじく弱体化するデメリットはあるけれど・・・・・その前にあんた達を殺せば済む話だわ」
ダークレイはそう呟くと、陽華と明夜に視線を向けた。言葉とは裏腹に、その視線は対等な敵を見つめるような、そんな視線であった。
「闇技発動、ダークアンチェイン・セカンド。――行くわよ、レッドシャイン、ブルーシャイン」
ダークレイが闇技を発動させた。すると、ダークレイの肉体に黒と紫の入り混じったオーラが纏われた。闇臨前にも使っていた身体能力強化の闇技だが、闇臨した事によってその上昇幅は更に引き上げられ、黒と紫のオーラも少し透き通ったような色になっていた。
ダークレイが陽華と明夜の光導姫を呼んだ直後、ダークレイは姿が消えたかと見紛うほどの超高速のスピードで2人のすぐ前に移動した。その余りの速度に、陽華と明夜はまるで反応できなかった。
そして、ダークレイはそのまま自分の左拳を明夜の顔面に放とうとした。




