第898話 覚醒する光(4)
「この光炎を宿した拳でッ! 太陽のように輝く拳でッ! あなたの闇を打ち晴らして見せる!」
「ふざけるなッ! あんたたち如きの光で、私の闇が晴れるものか! 闇技発動、ダークアンチェイン・パワーモード! ダークブレット・デストロイ!」
立ち上がったダークレイは怒りの言葉を吐き出しながら、自身の身体能力をパワー特化型に変更した。更に、右手の闇を一段と強化する。ダークレイの右手は高密度の闇が纏われ、その威力が強化された。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
雄叫びを上げながら、自身の拳を強化した陽華とダークレイはお互いに向かって近づく。そして、近づいた両者はその拳を放ち合うのだった。
必殺の威力を持った拳と拳が激突し合う。拳と拳が衝突した場には凄まじい力場が発生し、エネルギーの余剰が衝撃波となって世界に奔る。赤いエネルギーの衝撃波と黒いエネルギーの衝撃波が対比するようなコントラストを描いた。
「っ、この・・・・・! さっさと死という闇に沈め!」
「沈まない! あなたこそ、光に包まれて!」
ダークレイと陽華がお互いの拳に全力の力を込めながら押し込み合う。力は拮抗している。ならば、互いの拳の均衡を破るのに必要なのは、拳に力を与える想いの力だ。
「誰が包まれるものかッ! 私はもう2度と光には包まれない! エイルが死んで、真実を知ったあの時から私は・・・・・! 闇色の世界の底にいるッ!」
「くっ・・・・・・・・」
ダークレイが自身の絶望の記憶を燃やし、闇の力を増幅する。自分の死んだ、レイゼロールに殺された親友の名を呼びながら。その結果、ダークレイの拳が陽華の拳を少し押し込めた。陽華は苦しげな表情を浮かべる。
「あなたが何で闇人になったのか、私には分からない! でも、私は知ってる! 闇の力があなたがいま発しているような負の感情を力としていても、それでも私を、人を助けてくれる人を! あの人に、スプリガンに追いつくためにも! もっとあの人の事を知るためにも! 困っている人たちを助けるためにも! 私は、私たちはこんな所じゃ終われないッ!」
「ぐっ・・・・・」
それに対し、陽華は自身の希望の記憶を燃やし、光の力を増幅する。自分たちを何度も助けてくれた怪人の名を呼びながら。その結果、押し負けていた陽華の拳は徐々にダークレイの拳を押し戻していき、遂にはダークレイの拳を押し込んでいった。
「「負けて・・・・たまるかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」」
いかなる奇異なる運命か、ダークレイと陽華の言葉がシンクロした。そして、限界にまで高められた両者の拳は少しのバランスで狂い、逸れ合った。
その結果、両者の拳は互いの顔面に直撃した。




