第893話 諦めない心(4)
「・・・・・・でも」
「・・・・・・だからって」
陽華と明夜はダークレイの言葉が聞こえていないかのように、ポツリとそう呟いた。
「ここで・・・・・諦める事だけは、絶対にしない! 今までの頑張りが届かなかったんだったら、今からの頑張りを届かせる・・・・!」
「それが足掻かない理由にはならないわ・・・・・! 私たちのこの思いだけは、誰にも折られない!」
陽華と明夜は光を全く失っていない目で、いやむしろ光が増したような目を浮かべ、そう思いを吐き出した。
「っ・・・・? そんな事を宣ったところで、現実は何も変わらないのよ・・・・・・・! 思いだけじゃ、何も変わりはしないッ!」
その目を見たダークレイは再びどうしようもない苛立ちに襲われた。ダークレイは、陽華と明夜の方に向かって駆け出した。
「「それでも・・・・・変えてみせるッ!」」
陽華と明夜は同時にそう叫ぶと、拳と杖を握りしめてダークレイを迎撃した。
「炎よもっと燃えて! 私の思いを焚べて、暗闇を照らす篝火のように! 燃えろッ!」
陽華が自身の底から湧き上がって来る闘志を言葉に込める。すると、陽華の両手の炎がボゥと燃え盛った。陽華はその強くなった炎を纏った拳をダークレイに突き出した。
「闇技発動、ダークブレット! だから、変わらないって言ってるのよ!」
ダークレイは2人に対する苛立ちを闇の力に変え、闇を纏った右拳で陽華の燃え盛る右拳を迎え撃った。
「っ・・・・・」
炎と闇を纏った拳が激突しあう。ダークレイは多少炎の熱さを感じたが、拳は闇を纏っているので燃えはしない。ダークレイはそのまま自分の拳を力任せに押し込んだ。
「あぐっ!?」
「このままあんたの腹を穿ってやるわ!」
ダークレイの拳に競り負けた陽華の拳が弾き飛ばされ、陽華は体勢を崩した。ダークレイはそのまま、闇纏う拳で陽華の腹部を貫こうとした。
「水と氷の蔓よ、敵を縛れ!」
「ちっ、邪魔を・・・・・!」
だが明夜が魔法を行使し、ダークレイの拳を縛り止めた。既のところでダークレイの拳が止まる。その隙に体勢を整えた陽華が、ダークレイの顔面に頭突きをかました。
「〜ッ! このソレイユの犬どもがッ!」
「諦めないッ! 絶対に諦めたりするもんかッ!」
陽華の頭突きをまともにもらってしまい、黒い鼻血を出したダークレイは右腕の拘束を力尽くで解くと、陽華にその拳で殴り掛かった。
「〜っ!? き、効かない・・・・! こんな、こんな拳、私には・・・・・効かないんだからッ!」
ダークレイの拳を左頬に受けた陽華は意識が飛びそうな痛みを感じたが、気丈にそう言った。ダークレイの右腕は伸びきっていなかったので、威力が少しだけ軽減されていた。
「明夜!」
「分かってるわよ相棒! はぁぁぁぁぁぁッ!」
陽華の声を受けて、明夜が陽華の後ろから飛び出す。明夜は杖を思い切り引いて、鈍器のようにダークレイの顔面へと殴りつけた。
「ッ!?」
「こういう使い方も出来るのよ!」
不意をつかれたダークレイはその一撃を左頬に受け体勢を崩した。
「陽華!」
「明夜!」
その隙に2人はお互いの名を呼び合いながら、バックステップで後ろに下がった。




